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創造力を最大限に引き出す「ブレーン・ストーミング」の活用法【学ぶ意欲と力を育てる 学習指導の極意⑨】

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学ぶ意欲と力を育てる 学習指導の極意
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埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者

稲垣孝章
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子供たちの学ぶ意欲と力を育てるためには、教師はどのような指導をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に学級経営の本流を踏まえて、学習指導の基礎基本を解説します。第9回は、グループ学習に効果的な学習法「ブレーン・ストーミング」について解説します。

執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
 城西国際大学兼任講師
 日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章 

ブレーン・ストーミングは、グループ学習を展開する際に効果的な学習方法です。ブレーン・ストーミングの「ブレーン」とは、頭脳ということで、「ストーミング」とは、嵐が起こるという意味と急襲するとか強襲して奪うという意味があります。提唱者オズボーン(A.F.Osborn.1957)は、独創的な問題に突撃し、強襲するために頭を使うという意味で、ブレーン・ストーミングという言葉を使っています。自由にアイデアを出し合うことで、新しいアイデアを引き出して共有したり、問題解決のための斬新なアイデアを生み出したりすることを目指しています。

ここでは、ブレーン・ストーミングを授業で活用するために、グループでの話合い学習の形態の1つとして、次の3つのキーワード「ブレーン・ストーミングの学習の進め方」「ブレーン・ストーミングの4つの約束事項」「ブレーン・ストーミングの実践上の配慮点」でチェックしてみましょう。

CHECK① ブレーン・ストーミングの学習の進め方

ブレーン・ストーミングでの話合いでは、個人では思いつかないような新しいアイデアや解決策が生まれる可能性が高くなります。自由な発想を促すことで、創造的なアイデアが生まれやすくなります。また、グループ内のコミュニケーションを活性化することで、協力して学習できるようになります。ブレーン・ストーミングでは、次のような基本的なステップを踏まえて指導の手立てを講じていきましょう。

基本的な学習のステップを踏まえます

(1)目的の明確化

グループ内での話合いのテーマやゴールをはっきりさせます。何を解決するのか、そのためにどのようなアイデアを出す必要があるのかを全員が理解できるようにします。テーマを明確にすることで話合いが焦点化されます。

(2)ルールの設定

ブレーン・ストーミングの基本的な4つのルールを確認します。
①批判禁止 ②自由な発想 ③質より量を重視 ④他のアイデアの発展
4つのルールについては、後述のCHECK②で詳しく解説します。

(3)進行役の選定

スムーズな進行を促すために、進行役を選定します。進行役は、話合いを本題に向かわせるようにするとともに、全員がアイデアを出しやすいように促します。また、時間も考えながら、話題が長引かないようにすることにも配慮します。

(4)アイデアの出し合い

グループ内でアイデアを出し合います。ここでは、各自がアイデアを付箋に書き出して、ホワイトボードや壁に貼り付けていくことで、視覚的に全員が把握しやすくなります。この段階で、ICTを積極的に活用することで、効果的な学びにすることも期待されます。

「学級文庫を楽しいものにするには?」のテーマで、班でアイデアを出し合う子供たち。

(5)アイデアの整理・分類

出された意見を見直して、似た考えを類別したり、関連付けたりしてアイデアを整理します。どのアイデアがユニークかなどの視点で評価します。

(6)アイデアを絞り込む

整理・分類されたアイデアの中から、目的に合うものや実効性の高いものを選び出します。この段階では、質を重視し、話し合いながらアイデアを絞り込んでいきます。

(7)次のステップの決定

選ばれたアイデアを基に、どのように実行するか具体的な計画を立てます。担当者や期限を明確にして、次のステップに進むための準備を行います

CHECK② ブレーン・ストーミングの4つのルール

ブレーン・ストーミングには、話合いの中核となる4つのルールがあります。これは、自由な発想を重視したアイデア発想法であることから、固定観念にとらわれたり、創造性が制限されたりしないためです。この4つの原則は、創造的なアイデアを生み出すための大切なルールであり、これを守ることで効果的なブレーン・ストーミングが実現できます。

4つのルールを徹底して学習を展開します

(1)「批判禁止」のルール

「批判禁止」とは、アイデアや発言の内容が正しくないとか、悪いといった批判を一切しないということです。批判されると、自由な発想が止まってしまい、批判されると思うと言いたいことも言えなくなってしまうという問題点を取り除こうとするものです。次のような禁句集などを事前に全員で確認しておくことが考えられます。                     

〔ブレーン・ストーミングの禁句集〕
・現実的でない 
・空想的だ 
・つまらない 
・目的に合っていない 
・それは前に出た考え
・このクラスでは無理 
・時間がかかる 
・みんなに笑われる など  

(2)「自由な発想」のルール

「自由な発想」とは、見方の変わった考えや思いつきを大切にして、一見つまらないように見えることから素晴らしいアイデアに発展する可能性があることを重視したものです。

(3)「質より量を重視」するルール

「質より量」を重視するとは、量は質を生むという考えに立ったもので、たくさんのアイデアがあれば、その中にはよいアイデアもあるだろうということです。1つのアイデアがいくつかのアイデアを生み、それがまた多数のアイデアになってつながり、奇抜な発想につながっていくことを期待するものです。

(4)「他のアイデアを発展」させるルール

「他のアイデアを発展」させるとは、友達の出したアイデアに、自分の考えを合わせて、新しいアイデアを出すことを奨励することです。ブレーン・ストーミングでは、他人のアイデアを生かそうとすることをねらっています。

CHECK③ ブレーン・ストーミングの実践上の配慮点

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