同質性のコンフォートゾーンから出でよ【連載|若手が育つ! センパイのための伴走力トレーニング #3】

大ベテランの先生でも、実は初心者マークがついてしまうかもしれないこと、それは、若手教員の育成かもしれません。初任者指導担当の経験を持ち、地域の垣根をこえて様々な教員から相談を受けている森万喜子先生は、「若手育成の基本は、その人が持っているよさを客観的な立場から認める、ユニークな点などに興味を持って聞くこと」と言います。どんな教員にも、理想や意欲はあります。それを引き出すためにできることは、上からの「指導」ではなくフラットな「伴走」。それは人手不足の教育現場で教員の離職を防ぐためにも、センパイ教員の大切なスキルです。
執筆/元北海道公立中学校校長・森 万喜子
目次
知っていますか? 学校業務の3分類
学校のみなさん、やっと夏休みが始まりました。四月から走り抜けた日々、やっとちょっと一息つける日々が来てうれしいことでしょう。
とはいえ、夏休みに入っても、プール当番や大会引率や林間学校など、そんなにすぐに休めるわけないよ、という声も聞こえてきます。また、数は少ないですが、夏休みに入ったタイミングで、教育委員会に退職願いを出しました、という若い先生のことも耳にはいってきます。
以前、文部科学省は学校の業務について、「学校以外がやること、学校がやることだけど教師じゃなくてもできること、教師がやることだけど軽減の工夫ができるもの」に整理した、「学校・教師が担う業務に係る3分類」の表を示してくれましたが(3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための
各主体による「対応策の例」)、現場の先生方の3割がそれを知らないという調査結果もありました。みなさんの学校ではいかがですか。3分類の表を基に、ディスカッションやワークショップを校内で行ったりして、アイデア出しなどをした学校も多いことでしょう。
でもね、この3分類、保護者・地域の人たちはもっと知らないのです。「教育についてはなんでも学校におまかせ」というムードにならないように、みんなで地域の子どもを育てるという思考、コミュニティ・スクールの仕組みはもっともっと育ってほしいところです。
今日は、学校の先生がなんとなく苦手に感じていた「地域とのつながり」について、お話しします。
こんなとき、若い先生になんとアドバイスしますか?
「今は教育の変わり目だよ」という言葉。実はいつの時代も言われているような気がしますが、学校が地域とともに教育活動をする、コミュニティ・スクールや地域とともにある学校って、40代以上の人たちにとっては、肌感覚として、なじみのないことだったりします。今年はコミュニティ・スクールが制度化されて21年目です。つまり、40代半ばの教職員の皆さんが新採用の若者時代にはその制度は存在しておらず、制度化されても未導入の自治体も学校もまだありますから、なかなか学校に実装化されていないといえるでしょう。
あるとき、若い先生があなたに尋ねます。
「今度の総合的な学習の時間、地域の人たちに6人程度講師として来ていただき、ご自身のお仕事について語ってもらうということなんですが、どなたに、どんな内容で依頼したらいいでしょうか」
さて、あなたはなんとアドバイスしますか。
または、「中学3年生の受験指導で、生徒の受験面接指導は地域の方が模擬面接の指導をしてくださるとのことなんですが、どんなふうに準備を進めていったらいいでしょうか」と聞かれたら、どうしますか。
例年行っていることであれば昨年の資料も参照しますから、このような質問はしないかもしれませんが、これらはかつて「学校の先生がやっていたけど、教師じゃなくてもできること」(3分類の④地域ボランティアとの連絡調整)にあたるので、学校外の人に委ねていける場面です。
これを、面倒くさいと考え「講師選定、日程調整、依頼、準備日程やテーマや当日運営の説明など、手間がかかるから、自分たち教員でやってしまおう。外部の人のお手を煩わせなくてもいいんじゃないか」と考えて、自前でやろうとする考えが浮かばなかったでしょうか。