現役教員約5200人が回答! 「約9割が隠れ残業」「平均11時間勤務」「約3人に2人が休憩取れず」勤務実態アンケート結果
「みんなの教育技術」でおこなった教員の勤務実態に関するアンケートには、教員、教育委員会などの関係者含め5412人からの回答が集まりました。そのうち、5181人が現役教員であることを明示しており、非常に貴重なデータとなっています。本調査の結果が、教員の働き方について多くの方に関心を持っていただく契機となれば幸いです。
※タイトル注
・現役教員約5200人:回答者のうち、公立学校教員と私立学校教員は合わせて5181人。
・「約9割が隠れ残業」:92.6%が1ヶ月のうちに持ち帰り残業か休日勤務、あるいはその両方をしていると回答。
・「平均11時間勤務」:出勤してから退勤するまでの平均時間を数値で調査した結果、回答者の平均は11.1時間となった。
・「約3人に2人が休憩取れず」:1日に取得できている休憩時間について、「ほとんどとれない」と回答した人は全体の65.6%だった。
【調査概要】
■調査対象:全国47都道府県の教育関係者
■調査期間:2025年5月20日~6月30日
■調査機関:自社調査。Webメディア「みんなの教育技術」でのアンケート調査
■有効回答数:5412人(男性:1605人、女性:3472人、その他・無回答:335人)
■回答者の年代:20代:995人、30代:1358人、40代:1631人、50代:1127人、60代以上:219人、無回答:82人
■回答者の校種:小学校:4628人、中学校:373人、特別支援学校:141人、高等学校:73人、義務教育学校:62人、教育委員会:19人、中等教育学校:8人、その他:30人、無回答:78人
※本アンケートでは、回答者の負担軽減のため設問を任意回答としています。そのため、設問ごとの有効回答数は異なります。
目次
出勤してから退勤するまで 平均約11時間。4人に1人が12時間以上
勤務時間についての結果は上のグラフの通り、8割を超える教員が10時間以上の勤務、4人に1人が12時間を超えて勤務している状況でした。
さらに、数値で勤務時間を調査したところ、平均は11.1時間、中央値は11.5時間になりました。
法定の勤務時間を上回る勤務が常態化している可能性がうかがえます。
「寝る、入浴以外の時間をすべて仕事しているのに、授業準備等が間に合わないため毎日すべてがつらい。部活動の顧問になったがずっと見ることができる時間的余裕もない、など、すべてが中途半端になる。土日=休日という概念が存在しないくらい仕事が多い」
20代・男性
「仕事量が多すぎてストレスと疲労がたまり、育児が思うようにできない。仕事に対する意欲も湧いてこず、子育て中だとさらにつらさを感じる」
30代・女性
「多忙感を感じるとき、行事を精選したいと訴えても管理職からOKが出ないとき等、なりたい職業に就いたはずなのに『辞めたい』と思うくらい仕事がさばけない」
40代・女性
「年中、忙しく、多様な児童や保護者、世代間ギャップを感じる若手職員とのコミュニケーションなどストレスがたまる一方で、65歳まで延長された定年退職まで続けられる自信がない」
50代・男性
この勤務実態に対して、自由記述欄からは、以下のような傾向もうかがえます。
20代:理想と現実のギャップ
授業力をつけたいのに、授業準備に時間がさけずにそれができない。そんな自分を責めてしまう。意味がないと思う仕事への反発。
30代:家庭との両立
自分の子どもを迎えにいくために定時退勤した後、子どもを寝かしつけたあとで自宅で残業、時短勤務扱いだが実際には7時間働いている、周囲の理解が得られない。
40代:心身の疲弊が限界
職員間のコミュニケーションのストレスや、他の教員のフォローが自分に回ってくることなどによる心身の疲弊が限界。
50代:制度不信・無力感
長年変わらない体制に疲弊し、「体力的に65歳まで勤務を続けるのは困難」という定年延長に不安を感じる声も。
また、過重労働が原因で精神疾患になり、精神疾患による病休によって過重労働が加速するという負のループも見えます。
「長時間労働による過労が引き金となって、「心の病」を発症した。そして、周囲に迷惑をかけ、悲しい思いをさせてしまった」
40代・男性
「精神的な理由で同学年が休んでいるため、新任には任せるのが難しい仕事が集中している」
50代・女性
休憩時間は約3人に2人が「ほとんど取れない」
1日に取得できている休憩時間について、「ほとんどとれない」と回答した人は全体の65.6%(3,522人)にのぼりました。これに「15分未満」を加えると、この設問に答えた回答者の85%近くの人がまともな休憩を取れていない実態が分かります。
労働基準法が定める休憩時間=45分以上を確保できているのは、全体の1.5%のみです。
休憩がほとんどとれないと答えた回答者にその理由を聞きました。
「終業時刻直前に休憩時間が設定されている上に、勤務時間内にとうてい終わることができない仕事量を課せられているため、休憩時間を取ってしまうと帰りが遅くなってしまうからです。 子どもたちの下校(6時間目が終わった後)が15時30分です。 教員の休憩時間は15時45分から16時30分までです。 16時30分から夕会が始まり、終わるのが16時45分です。 つまり、子どもたちが下校した15時30分から15時45分までの15分間しか残されていないのです。夕会が毎日あるわけではないですが、それでも30分間しか仕事ができません。 これが、私を含めて全国の先生たちが十分な休憩時間を取れない原因になっているのです」
40代・男性
このように、子どもがいる時間は子どもから目が離せないので休憩ができない上に、隙間時間も様々な理由から休憩どころではないという実態、教員がコントロールできる時間の少なさ、休憩なしが常態化している、などといった理由があります。
以下にその例を紹介します。
「電話、来客、メール、調査回答、教員からの相談、課題のある児童への指導など、対応先の異なる業務が間髪入れずに入ってくるため」
50代・男性
「誰も休憩していないから、休憩しようという気にならない。今までずっと休憩なしでやってきたからそれが当たり前になっている」
40代・女性
「委員会の活動がある。目を離せない児童がいる。どうせ残業するのだから、休憩を取らずに業務を進めて少しでも早く帰りたい」
30代・女性
「児童への指導や保護者対応、電話連絡、関係機関との打ち合わせ、会議などでどう考えても休憩をすることができないから」
30代・男性
「子供が帰らない。トラブルや保護者への電話、事務作業をしていたら取れるわけがない。おまけに部活を担当していた時は地獄」
30代・女性
「子どもがいるときは休憩は取れないし放課後は事務作業でコーヒーを飲む暇すらありません」
30代・男性
「クラスから目が離せない。体調管理の必要な児童もいる」
50代・女性
「なるべく早く帰るために、休憩時間を取らずに仕事をしてしまう。他の人も休憩時間を取っていないので、習慣がない」
20代・女性
「休憩を取ればその分帰宅時刻が遅くなる。誰かが代わりにやってくれる仕事ではない。個人事業主の集合体みたいなもの」
40代・男性
休憩がとれないことにより、「トイレに行けない」という声が非常に多く見られ、膀胱炎を繰り返しているという教員もいました。精神的にも身体的にも教員の健康に影響を及ぼす深刻な事態です。
半数以上が週3日以上の「持ち帰り残業」
半数以上が週3日以上の持ち帰り残業をおこなっています。
「子どもの話を聞いたり、係活動や委員会やクラブ活動の対応、宿題チェックなどでトイレも行けない上、放課後は研修、学年会があれば残り30分になるが『19:00までに退校』『個人USBなど校務パソコンにささない』『個人クラウドや学校アカウントに私物パソコンから入らない』『学校からのUSB支給は費用がない』『学校貸出USBであっても教室には持ち込まない』など、授業の準備が昭和のレベルくらいの環境にまで落ち、ICT利活用どころか、逆行しているように感じています。市の教育委員会からは『そもそも仕事は自宅でしていないと思っていました。』ということを言っていたとのことで、現場の実態が見えていないようです」
40代・女性
また、学校では集中できないので持ち帰っておこなわざるを得ない、家庭の事情で早く帰らなくてはならないが、仕事が終わらないのでやらざるを得ない、という声も聞こえます。
「空き時間も生徒対応、昼休みは給食指導、休んでいる先生の自習対応などに追われて、授業準備ができる時間は朝か放課後のみであり、帰宅後に持ち帰らないと終わらないため」
40代・女性
「授業の持ちコマ数が多く、教材準備、教材研究に時間がかかるため。子どもの迎えもあるため、決められた時間には退勤しなければならない」
30代・女性
一部の記述からは、「働き方改革」の取り組みが現場の実態に即していないとの懸念もうかがえました。
「早く帰らないと、校長に睨まれる」
50代・男性
「働き方改革と言いつつ、結局は個人にそれは任されているのが現実です。自分の働き方を見直し、無駄を省くことばかりが求められます。仕事の量は増えるばかりですが、それはうまく対処できない個人が悪いということで、早く帰ることばかりが推奨されます。結果、持ち帰りの仕事が大量にあり、家族との時間はほぼとれません。教員になった以上、自分の幸せはあきらめるしかない、この状況ではそう思う若者が増えてもしょうがないと思っています」
50代・女性
約8割が休日にも勤務
回答者の約8割は休日にも業務を行っていました。
休日勤務の平均値は約3.68時間、中央値は3.0時間です。
「週27.5時間持ち時間がある上、研修やミーティングが多く、空いた時間は児童の指導、他の学級の補充に入る。教材研究は帰宅後や週末に自宅で行う」
40代・女性
「空き時間も生徒対応、昼休みは給食指導、休んでいる先生の自習対応などに追われて、授業準備ができない。生徒が下校してから自分の仕事を始めるが、保護者対応があればそれもできない。土日に出勤してクラブが終わったらそれらをしている」
60代以上・女性
持ち帰り残業も休日勤務も「ほとんどない」と答えたのは401人にとどまり、回答者の92.6%が一か月のうちに持ち帰り残業か休日勤務、あるいはその両方をしているということになります。
時間外勤務の最大の要因は「1日の業務量がそもそも8時間以内にできる設定ではないため」
ここまで見てきた回答からもわかるように、回答者の8割以上が選択した最大の要因は、「1日の業務量がそもそも8時間以内にできる設定ではないため」。
さらに、有効回答数5233人のうち、89.4%が複数の要因を選択しており、解決の難しさがうかがえます。
教育の本筋に集中できない状況が「つらい」
「勤務時間の長さ以外で、『つらい』と感じるのはどんな時ですか?」を問う設問に対し、最も多く挙げられた回答は「保護者から理不尽なクレームを受けている時」で、これは約4割を占めました。
このほか「目的のはっきりしない会議に参加している時」や「教材研究の時間が取れず十分な授業準備ができない時」など、教育の本筋に集中できない状況も多くの教員にとってストレス要因になっています。
「保護者から理不尽なクレームを受けている時が最たる辛さです。子供のためなら頑張れると思って残業しているが、保護者の理不尽なクレームを何分も対応していると、過ぎた時間の無駄さ加減に心底疲弊します」
30代・女性
「授業研究をする時間がなかなか取れず、満足いく授業が難しいとき」
30代・女性
「授業中の子どものつまらなそうな表情を見たとき。自分の持っている教科が嫌いだと言われたとき。同じ教科の先輩教員との価値観が合わないとき。同じ教科の先輩教員から授業内容を完全否定されるとき。挨拶を返してくれない先輩教員に挨拶をするとき。準備がうまくいかなかったとき。休まる時間がないとき」
20代・女性
「『これって教員がやるべきこと?』と疑問をもちながら、時間を奪われるとき。『生徒の成長』につながらない業務だなと感じるとき」
30代・性別無回答
「目的の曖昧な会議に出ている時」
40代・女性
「会議資料作成や事務作業の業務に追われているとき」
30代・男性
「校務分掌が忙しいせいで、教材研究の時間が取れない。保護者からの、難しいクレームを受ける時」
30代・男性
また、自分の家庭が犠牲になっていることについてつらさを感じている教員もいました。
「自分の子どもにかけてあげられる時間が少ない。登校の付き添いや宿題を見てあげたり、手の込んだ料理を作ってあげたりしたいけれど、できない」
40代・女性
「子育て中の自分に大変な学級担当や分掌担当が課され,若い先生の方が物理的負担が少ないので、自分より早く帰っていくことが精神的に辛い。自分は家庭に我が子を放置しているのに,なぜ自分の年代ばかりが……という思いになる」
40代・性別無回答
「体がしんどい。休日も仕事で、家族との時間もとれない」
40代・女性
「一歳の子どもがいるので育児時間の取得をして、放課後1時間だけ早く帰っています。我が子の迎えに行かなければという思いと、もっと学校で仕事を終わらせたいという思いがせめぎあい、日々つらいです」
30代・女性
教員の孤独感が見える記述も見られました。
「つらいと感じるのに、助けてと言えない時」
20代・女性
「職員同士の対人関係が厳しく、気軽に聞ける人がいなくて、自分の力で業務に取り組むため、時間が余計にかかる」
30代・女性
「本当に必要な情報共有をする時間ができず、結果、問題を一人で抱えやすくなってしまう。相談したくても、管理職も含め余裕がある教員が誰も存在しない」
年代不明・女性
「子どもの成長」「子どもの笑顔」が教員をつなぎとめている
一方「『これがあるから教員はやめられない!』と、思うような強い喜びを感じるのはどんな時ですか?」という問いでは、「子どもの成長」という言葉が溢れていました。授業の手ごたえや楽しさといった声と合わせると、回答者の約74%にのぼります。
子どもの成長、面白い授業、という教員本来の仕事が教員の望みであることが伝わってきます。
「子ども達が授業を通して分かる喜びを感じたり、行事を通して大きく成長したりする姿を見ることができた時」
40代・女性
「生徒が授業中の話し合い活動などで友達と活発に話し合ったり『なるほど!』『それすごい!』などと盛り上がっているのを見ると嬉しくなる」
20代・女性
「子どもの笑顔を見たり、「先生の授業はわかりやすい」と言われたりした時」
30代・女性
「『先生に担任してもらえてよかった』と感謝してもらったとき。教え子と再会して当時の思い出を語り合えたとき」
30代・男性
「卒業させた子どもたちが多方面で活躍する姿を見たとき。若い教職員が一生懸命学ぶ姿を見たとき」
50代・男性
夏休み、ボーナス、安定、給食などの条件面について嬉しいという声は、特に20代に多くみられました。
「夏休み、ボーナス、社会的安定」
20代・女性
「毎月の給料日とボーナスをもらった時、夏休みの平日に忙しそうにしている人を見るとき、夏休みの平日に昼から居酒屋で酒を飲んでいるとき、夏休みに旅行に行っているとき」
20代・男性
「子供と給食を食べている時間や、授業が盛り上がった時は最高です。長期休業にしっかり休めることも魅力だと思います」
20代・女性
外部人材による学校支援制度に満足しているのは導入されている回答者の約38%
現在、外部人材による学校支援が様々な自治体でおこなわれています。その満足度について選択式で尋ねたところ、導入されている回答者の中で、「とても満足」「ある程度満足」を合わせても約38%にとどまりました。
「不満」の理由は人数と質
不満の理由として最も多かったのは「人手が足りない」という指摘で、半数以上を占めました。次いで多かったのは、質のばらつきです。
「人数が足りない。午前勤務のため、午後はカオス!」
40代・女性
「圧倒的に人数が足りていない。お願いできる業務の幅が広くない」
30代・男性
「とても感謝していますが、圧倒的に人数が足りません」
40代・女性
「学習支援員の方が正規職員を退職された方などで立場的に雑務を頼みづらい。高齢でお願いできないことも多い。作業となると、仕事ではないと一線を引いてくる」
40代・女性
「頼んでも、やってもらった後に、『この仕事はできない』などと陰で言われることがあり、遠慮してしまう」
50代・女性
「内容によっては嫌な顔をされることがあり、お願いしづらい。早めの依頼をお願いされていて、努力しているが、急にお願いしたい内容も出てきたときに頼みづらく、自分でやってしまう」
50代・女性
「支援員の技能、質、人柄などに大きく差があり、入ることによって問題が起きる場合もあり、かえって仕事が増える」
60歳以上・女性
もしサポーターを自分の裁量で配置できるとしたら
アンケートでは最後に、「もし、自分の裁量でサポーターを配置できるとしたら、どんな人にどんなことをお願いしたいですか?」を問いました。以下にその結果をまとめます。
子どもの見まもり・授業支援
支援が必要な児童への個別対応、授業の補助など、「授業に集中できる環境を整える」ことを目的とした配置に関する要望が、約半数を占めました。
また、学級に1人、学年に1人などの配置を求める声が多く見られました。
「学校規模に関わらず、教師や保護者が付き添いが必要と考える児童(身辺自立が不十分、教室から出ていくなど)に対してサポーターをつけてほしい」
30代・女性
「1クラス20人以上の学級には、1クラス1支援員配置されるだけで、状況が変わると思います。また、体育専門の補助教員などいると助かります」
50代・女性
「学年+1のサポーターを配置することで常に緊急自体に対処する」
30代・男性
「特別支援、不登校の対応が大変過ぎるので、専門のサポーターを増やしてほしい」
40代・男性
「教員免許を持っている支援員に、指導のめあてを伝え、その授業準備をしてもらう。休憩時間の確保のために、休み時間に子どもの遊び相手になったり、見守ったりしてもらう」
50代・女性
「子どもに笑顔で接してくれる人にたくさん遊んでもらう」
40代・女性
事務専門スタッフ
子どもと接する以外の仕事について補助してほしいという声も多く見られました。
「丸つけをしてくれる人」
40代・女性
「クラス専用の授業準備や事務作業などを手伝ってくれる人がほしい。学級会計を全部引き受けてくれる人がほしい」
30代・女性
「会計や支払い、部活動の庶務、見学学習のバス手配と教育委員会への実施報告書作成など、事務全般をお願いしたい」
40代・女性
「市に出す書類作成やテストやプリントの作成などをお願いしたい」
50代・男性
「丸付けや定期検診結果の入力、学年資料の作成、出張時などの自習監督などを担ってくれると助かる」
30代・男性
「宿題チェックやテストの採点などを行ってくれる方にお願いをして、授業準備と授業、児童のノートチェックや評価などに自分がしっかり向き合う時間があると嬉しい」
20代・性別無回答
コンサルティング
「仕事内容を精選できるコンサルを配置して、徹底した労務管理・時間管理を行い、健康的かつ持続的に働ける環境を構築してほしい」
40代・男性
「管理職では言いづらいことを、どんどん代弁していただき、教員一人ひとりの意識を変えることで、学校全体の改革を進めてもらう」
30代・性別無回答
「民間で時短や働きやすさの改善をしてきた専門家に入ってもらい、学校や職員の行動や活動の一つ一つを検証してもらいたい」
40代・女性
保護者対応
「保護者からのクレームは、一旦お客様センターのようなところで聞いて、ある程度解決してほしい」
60代以上・女性
「お金に関する事をまとめてしてくれる人。放課後の保護者対応や不登校児童への対応を日常的にしてくれる人」
30代・性別無回答
「法律的な知識を持った方や特別支援の知識が豊富な方が代わりに保護者対応をしてほしい」
30代・女性
その他、ICT支援のサポーターの充実や、理科の実験や家庭科などの準備に時間がかかる教科についてのサポートなどの要望も多く見られました。
他にも様々な願いが寄せられており、以下にその一例を紹介します。
「給食/掃除は民間委託して、教員の休憩時間を確保すると共に、生徒指導的なしつけの時間ではなく、純粋に学習指導をしていきたい」
40代・女性
「外国のように、複数担任制にしてほしい」
40代・女性
「有給を使って休んだ時の代わりに学級をみてほしい」
30代・男性
「自分専用のアシスタントを配置して、授業準備や資料の下書きなどをお願いする。学校日誌や出席簿の管理など、教員でなくてもまとめることのできる仕事をしてもらう」
30代・女性
考察
本アンケートで明らかになったのは、出勤から退勤までの時間の平均が約11時間、約8割が15分未満しか休憩時間が取れないという目に見える勤務実態に加えて、9割以上の回答者が自宅での持ち帰り残業や休日勤務をおこなっているという事実です。
公立学校教員の給与などについて定めた教員給与特措法(給特法)では、教員の時間外勤務を2029年度までに月平均約30時間まで減らす目標が掲げられています。
しかし、このアンケートから分かるように、目に見える「働き方改革」のために、見えないところで働かざるを得ない教員がいること、その実態を表立っては言えない状況にあることを考えれば、それを正しく計測することが困難であることが想像できます。
時間外勤務の発生要因として「業務量が8時間勤務内で処理できる想定になっていない」との回答が多いことからも、まずは業務設定の見直しが必要と言えるでしょう。
教員の働く喜びは、「子どもの成長」という、まさに教職の本質である部分に集約されています。逆に言えば、教員のつらさは「子どもの成長」のために時間が使えないほど他のことで疲弊しているという点にあります。
このような志のある教員が継続的に活躍できるよう、現場環境の改善に向けた取組の検討が求められます。教員不足が叫ばれていますが、今現場にいる教員のQOLを上げる現場にならなければ、志望者は増えないでしょう。
支援員について、導入されている回答者からは「助かっている」という声も多くありました。一方、満足できない理由は「人数が足りない」という声が圧倒的多数でした。本務者を支える外部人材の母数が増えることで、教員個人の満足度や質のばらつきといったそのほかの問題もカバーできる可能性があります。
今後の学校教育のあり方を検討する上で、教職員の働き方に対する支援体制の整備が一層求められるとともに、学校側も教員一人ひとりのためにそれを柔軟に活用する意識が必要になりそうです。
私たちも、引き続き、教員のQOLを高めるための施策を様々な角度から考えてゆきたいと考えています。
構成・文/みんなの教育技術編集部