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教育委員会間で情報交換!授業時数特例校の調査視察に密着【前編】

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現在、中央教育審議会の教育課程企画特別部会(以下、特別部会)で、学習指導要領改訂の方向性について審議が進められています。その第4回審議では、柔軟な教育課程編成の促進に関する議論がなされ、複数の自治体・学校が、教育課程特例校・授業時数特例校制度を活用し、時数や教育内容を変更して取組んだ先進実践事例を紹介。大半の委員が、現場の裁量の拡大について肯定的な意見を述べました。

北海道安平町教育委員会も、子どもの探究活動を保障する学校づくりのために、授業時数特例校制度の申請を検討しています。そこで、同町教委の井内聖教育長、小笠原伴行指導主事と安平町立追分中学校の三品秀行校長は、調査視察のため、特別部会で市内全小中学校での実践を発表した久喜市教育委員会に足を運びました。この記事では、その調査視察の様子をレポートしていきたいと思います。

取材・執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

久喜市教育委員会でのヒアリングの様子。

STEAM化された学びを実現しつつ校務効率化を図る

特別部会でも発表をおこなった久喜市教育委員会の田中佑治指導主事(GIGAスクール推進室長)は、井内教育長、三品校長、小笠原指導主事を前に同市の取組について説明を始めます。市内の全小中学校(小学校21校、中学校10校)では、「久喜市版 未来の教室」として、4+1のコンセプト(1はオンライン教育、2は個別最適な学び、3はSTEAM化された学び、4は校務の効率化、+1は学びのコーディネーターたる教師育成)に沿って、独自の教育課程編成を図って取組んでいると話す田中指導主事。その中から、GIGAスクールに関わる取組を中心に説明をしていきます。

資料全体はこちらからご覧いただけます。

「『個別最適な学び』の実現のため、子供たちとオンラインでの対面の取組みを開始し、今も体調上登校できない子供や教室に足が向かない子供たちのため、ほぼ毎日、どこかの学校でオンライン学習を行っている」と田中指導主事。その他、他校、地域、企業や海外の中学生とのオンライン交流等も説明していきます。

「また、自立した学習者を育むため、リーディングDXスクールとして複線型の学びを進めています。そのため子供たちが解決したくなる、『ワクワクする問いとの出会い』を大切にし、解決過程で、内容だけでなく学び方を身につけたり、個別と協働を往還することで学びの自己調整力の育成も図っている」と田中指導主事。そのため、「先生の役割が教える人から学びをつなぎ支える人に変わる」と話し、学びのデザイン力やファシリテーション力の重要性について周知を図り研修も行っていると話します。

さらに久喜市では、ダッシュボードを統合し、子供の実態や課題を確認しやすくして指導に生かすと同時に、フルクラウド、ゼロトラスト環境による校務効率化も進めており、校務系も学習系も情報端末1台で全てアクセスが可能であることなどを説明していきました。

一番大切なことは、各校が少しでも自校の教育課程に対するオーナーシップを持てるようにすること

ここから、安平町からの質問に対し、両指導主事が説明を始めます。まずは、制度活用のための申請の流れについて、計画から学校や地域保護者への説明過程も含めて、具体的かつ詳細に説明。その中では、各学校が保護者・地域への説明に当たるため想定問答集も用意したことや、文部科学省への申請に当たっては、万が一、通らなかった場合も考慮し、二通りの時間割を作成していたことなども話されました。

また各学校は単元配列表(年間指導計画)を作成。真ん中に総合学習(探究)を配置し、探究のサイクルが他の教科とどう関わるのか整理をしていると説明。全教科に関わる小学校とは異なり、教科担任の中学校でも、学びの全体像を理解したり、情報共有したりしやすくなっていると話します。

さらに、中学校での探究に話が及ぶと、白石恵美子指導主事は「高校入試との関わりがあるので難しい」と言いつつも、「埼玉県が令和9年度から高校入試制度を変更し、公立学校全生徒を対象に持続可能な社会の作り手となり得るような資質・能力があるかといった視点で面接を行う予定」と説明。その面接で高評価を得られるような教育の質の向上に取組んでいると話します。

ここで、授業時数に関連するいくつかの質問が出されます。それに対して授業時数削減は最大1割だが、例えば中学校なら、「実際には5教科を少しずつ削って(総合学習増分の)10〜20時間を満たす学校が多い」と説明されます。

そこから教員数や配置等について質問を行った後、井内教育長は、単元配列表について質問。同表のフォーマットは教育委員会が作成し、各学校での作成については、白石指導主事が担当するSTEAM研究委員会の委員(全校配置の31名)が、研修した上で互いに情報交換もしながら作成していると説明されます。

さらに、探究に関する質問に対し、白石指導主事は、「中学校は教科から入るのが良いのではないか」と話し、「教科では習った知識・技能を発揮、活用する場面は限られるため、上手に総合学習を使っていきましょう」と先生方に話し、「総合学習で力が発揮できれば、先生の教科の価値も子供たちの中でぐっと上がる」と言います。

また田中指導主事は、「市内全校31校が一時に大きく進まないとしても、この取組を通して各校が少しでも自校の教育課程に対するオーナーシップを持てるようにすることがいちばん大事」と話しました。

お話をうかがったのは……

田中佑治指導主事
白石恵美子指導主事

今回は、北海道安平町の先生方が埼玉県久喜市教育委員会で調査視察を行った様子をレポートしました。次回、後半は久喜市立砂原小学校での実践を視察した様子をレポートしていきます。

後編はこちら↓
教育委員会間で情報交換!授業時数特例校の調査視察に密着【後編】

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