高学年のネット型の学習は何から始めたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #86】

以前、ネット型の教材として「続けるくん」と「ハンドテニス」を紹介しました。この2つの教材は、ネットの代わりにコーンとバーを使っていて、ボールをあまり高く上げなくてもプレーすることができるので、ネット型の導入教材として大変効果的です。
今回は、高学年を想定して、バレーボールのような高めのネットを用いる場合の教材と、その指導法を紹介します。
執筆/東京都公立小学校教諭・吉羽顕人
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川譲
目次
1.学習の中心はアタック!
ネット型に限らず、ボール運動では、得点する楽しさを味わわせたいと考えています。そこで、頭より高い位置にあるボールを片手ではじく「アタック」の動きを身に付けることを単元のねらいとします。
しかし、頭より高い位置のボールをはじき、思い通りに操作するのは簡単ではありません。いきなり対戦形式で学習を進めてしまうと、ミスでの失点が増え、得点の楽しさを味わわせることができなくなってしまいます。最初は対面する相手と協力するタイプのゲームを設定し、子どもが安心してアタックの技能を高められるようにしましょう。
2.アタックの動きを身に付ける教材
⑴ アタックパスⅠ

ペアで4〜5m程度離れて向かい合います。1人がアタックしたボールをもう1人がキャッチできたら成功とします。10回連続成功したら、そのペアは帽子を赤に変えます。
アタックをする子は、自分で投げ上げたボールを手ではじきます。このとき、投げ上げ方は両手でも片手でも構いません。右利きの子の場合、左手で投げ上げて右手ではじいた方が、オーバースローと同じ動き方になって強くはじきやすくなります。しかし、利き手ではない手でまっすぐ投げ上げるのは簡単ではありません。多くの子は両手のほうが安定して投げ上げられます。片手投げ上げを強要する必要はありません。
単元はじめは、相手が捕りやすいアタックパスができる子はまれです。そこで、パスがうまくいっている子に、以下の3点について問います。
Q1:ボールをどれくらいの高さに投げ上げているか。
Q2:手のどこでボールをはじいているか。
Q3:いつ力を入れているか。
そうすると、
A1:頭の高さを越えて、落ちてきたボールをアタックできるくらいの高さに投げ上げる。
A2:指ではなく手のひらでボールをはじいている。
A3:ボールをはじく瞬間に力を入れている。
という運動のポイントが確認できます。これらのポイントを理解して、意識し続けると、ボールの飛ぶ方向が少しずつ安定していきます。
また、キャッチする子は、アタックする子に体の正面を向けて、両手で抱え込むようにキャッチするとミスが少なくなります。
⑵ アタックパスⅡ

アタックパスⅠと同じ運動を、ネットをはさんで行います。ネットは、バドミントンネット(高さ約1.5m)を用います。背が低くても、多くの子が手を伸ばせば手のひらがネット上に出る高さです。コートもバドミントンコートをそのまま使えます。
アタックをする子は、バドミントンコートのショートサービスラインをまたいで、同じく反対側のショートサービスライン上で待っているペアの子に向かってボールをはじきます。アタックパスⅠとは異なり、ネットが張ってあるため、ボールをはじく方向が低すぎると成功しません。しかし、高すぎるとコート外に飛んでいってしまいます。ボールをはじく位置や力を調節して、コート内にいるペアがキャッチできるようにはじけると、対戦形式のゲームに進んだときにも相手コート内にアタックすることができるようになります。
アタックパスⅠと同様に、10回連続成功したら、そのペアは帽子を赤に変えます。うまくいっているペアに、どのような点に気を付けてアタックしているか問うことで、運動のポイントを全体で共有することができます。
⑶ アタックパスⅢ

アタックパスⅡを発展させて、仲間が投げ上げたボールをアタックするようにします。ネットをはさんでペアが2組向き合って、4人組で活動します。活動の詳細は次の通りです。
●片方のペアが、「仲間の投げ上げパス⇒もう1人がアタック」という動きで相手コートにボールをはじく。もう一方のペアのどちらかがそのボールをキャッチできたら成功とする。
●アタックの位置はショートサービスラインをまたぐあたりをめやすとする。
●相手からアタックパスを受けたペアは、相手と同様に「仲間の投げ上げパス⇒もう1人がアタック」という動きで返球する。
●投げ上げパスの子とアタックの子は、役割を毎回交代して平等に経験を積めるようにする。
●アタックパスが10回連続成功したら、4人とも帽子を赤に変える。
投げ上げパスは、低すぎると仲間がアタックする前にボールが落ちてしまいますが、高すぎてもアタックをするタイミングが難しくなります。これもうまくいっているグループを手本として運動観察することで、ちょうどよいパスの高さをみんなで共有することができます。
ミスがそのまま失点となるのは、ネット型の特徴の一つです。ミスを恐れてアタックするのを避ける子どもが出ないように、まずは協力型のゲームで楽しみながら、アタックの技能を高めていきましょう。クラス全員がアタックできる(=得点できる)ようになったら、次は対戦形式のゲームです。次回の記事で紹介しますので、どうぞお楽しみに!
【参考文献】
・平川譲(2010)『とってもビジュアル!筑波の体育授業・高学年編』明治図書出版
・平川譲(2018)『体育授業に大切な3つの力 主体的・対話的で深い学びを実現する教師像』東洋館出版社
イラスト/佐藤雅枝
※連載「ブラッシュアップ体育授業」について、メッセージを募集しております。記事に関するご感想やご質問、テーマとして取り上げてほしいことなどがありましたら、下の赤いボタンよりお寄せください(アンケートフォームに移ります)。

執筆
吉羽顕人
東京都公立小学校 教諭
1986年東京都目黒区生まれ。「みんなができる、みんなでできる」授業の実現を目指し、日々研鑽中。また、実践を広げるために、オンラインで研修会を行っている。『「資質・能力」を育成する体育科授業モデル』(共著)(学事出版)

監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。
