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なかなか自分の考えが書けない子や声を出して話すことが難しい子のための、小学二年生国語「かさこじぞう」学び合い実践

近年、特別な支援を必要とする子どもたちが増えています。そうした子どもによく見られる特性の1つに、授業など集団の場面において「なかなか自分の考えが書けない」「声を出して話すことが難しい」
といった困難を抱えていることが挙げられます。しかし、こうした子どもたちに個別に話を聞いてみると、ちゃんと自分の考えを話してくれたりします。
「教師とその子の一対一の関係」 もいいですが、やはり小学校という学びの場では、「子ども同士で学び合う関係」 もあるべきではないでしょうか。そこで、「色と形」の自己表現方法を活用しました。

★「色と形」の使い方については、
<【連載】「色と形」で子どものアタマとココロが見えてくる!! #01> を参照ください。

【連載】「色と形」で子どものアタマとココロが見えてくる!! #04

執筆/茨城大学大学院教育学研究科教授・打越正貴
   茨城大学全学教職センター講師・宮本浩紀

1.言葉の活用が “気になる子”

いま各学校には、言葉の活用の面で支援が必要な子がいます。

まわりの子に慣れるまでは、声を出すことができないAちゃん

単語や短い文なら書けるけれど、あまり長い文は書けないBくん

教師の質問とは異なる答えが返ってくることが多いCちゃん

このような子たちに対して、先生方はじっくり向き合います。

Aちゃんには、はじめから、発表を強くは求めない。
Bくんには、もう少し聞きたいところを質問し、その答えを教師が代わりに書いてあげる。
Cちゃんには、質問を変えて聞き直してみる。または、大切な言葉をもう一度繰り返す。

そうして授業は、教師と子どもの一対一の関係をもとに進みます。
でもできたら、子ども同士で学び合う関係も生まれてほしい。
その実現を目指して、「色と形」を用いました。

2.授業でこんなやりとりが生まれました

教材について

「色と形」を使ったのは、小学2年生の特別支援学級(知的障害児。当日は4名が出席)。教科は国語、教材は「かさこじぞう」。本授業の場面は次の通りです。

じいさまは、傘を売りに町に行きました。でも正月前なので、傘は一つも売れませんでした。
その帰り、じいさまは頭に雪の積もったじぞうさまを見つけました。かわいそうなので、すべての傘をその頭に被せてあげました。そのときじいさまが言った「地蔵さまもさぞ冷たかっただろうのう」の言葉を「色と形」で表します。

実際のやりとりについて

本授業は次のように進めました。

本時の場面を読む
   ↓ 
「地蔵さまもさぞ冷たかっただろうのう」と言ったじいさまの気持ちを「色と形」で表す
   ↓ 
一人ずつホワイトボードの前に立って発表する
   ↓ 
他の子が質問する & 発表児が質問に答える

発表する児童には、じいさまの役割演技を行ってもらうことにしました。
以下、左段に子どもたちのやりとりを、右段に授業者の対応を示します。

<A児の発表 前半>

図表1

「色と形」を活用した授業を行ってみて驚くのは、「人前での発言が苦手だった子たちが、発表も質問もできるようになったこと」です。
発表と質問と受け答えがスムーズに行えるのは、「 “気持ちを描いた絵” と “気持ちの説明” がセットになっているから」
授業者は、発表を聞きつつ、どのような支援をするかを考えます。このときは、絵と説明をセットにして発表することを促しました。

グループ内で発表する子供

<A児の発表 後半>

図表2

通常、じいさまの気持ちは言葉だけで発表されます。
でも、言葉の活用が苦手な子どもたちは、他の人の言葉を聞いて、その意味をイメージすることが難しい。
「色と形」の学習は、言葉の意味が目に見えるので、特別支援学級の子もスムーズに学習を進めることができます。

3.本授業で用いた手立て

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