ページの本文です

どの教科が優先?小学校における教科担任制~シリーズ「実践教育法規」~

連載
シリーズ「実践教育法規」

早稲田大学教職大学院客員教授

南 輝明

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第44回は「小学校における教科担任制」について。どのような経緯で教科担任制が進んできたのか、また、その目的についても解説します。

執筆/南 輝明(早稲田大学教職大学院客員教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#44

小学校における教科担任制の動向

2021年1月の中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」では、義務教育9年間を見通して中学校への円滑な接続、授業の質の向上と学びの高度化、学校教育活動の充実と教師の負担軽減を図るために、2022年度を目途に小学校高学年からの教科担任制を本格的に導入する必要があることが示されました。

このことを踏まえて、2021年7月の有識者による「義務教育9年間を見通した指導体制の在り方について(報告)」では、各地域・学校の実情に応じた取組が可能となるような定数措置により、グローバル化の進展やSTEAM教育の充実・強化に向けた特定教科における教科担任制の推進を図る必要があり、教科指導の専門性をもった教師によるきめ細かな指導と中学校の学びに繋がる系統的な指導の充実を図る観点から、外国語、理科、算数、体育を優先的に専科指導の教科対象とすることが適当であることが示されました。

そして、2024年5月の中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(審議のまとめ)」では、小学校中学年についても児童への学びの質の向上と教師の持ち授業時数の軽減の観点から教科担任制を推進し、専科指導のための教職員定数の改善を図る必要があることが示されました。

教員定数措置の経緯と専科担当教科

公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」第6条において、学級数に応じた「乗ずる数」に基づき、都道府県・指定都市における教員定数の総数を算定しており、小学校については1958年の法制定時から学級担任以外の教員も一定数配置できるようになりました。

この学級担任以外の教員定数を活用して教頭や教務主任、音楽・家庭等の特定教科の専科指導を担当する教員が配置されるようになり、2018年度より小学校の専科指導の更なる充実に向けて、各地方自治体は小学校英語専科指導、T.Tや少人数指導などのための新たな加配定数措置を順次行っています。

専科担当教科については、これまで「教育職員免許法」第16条の5において、音楽、美術、保健体育、家庭の中学校教諭免許状を所有する者がそれぞれ小学校の音楽、図画工作、体育、家庭の教科を担任する専科教員制度が経過措置的に認められてきました。2002年の改正により、国語、社会、算数、理科、生活、総合的な学習の時間についても専科担任が可能となり、高等学校教諭免許状の保持者についても新たに小学校専科となることが可能となりました。その後、「教育職員免許法施行規則」第66条の3において、外国語活動、特別の教科 道徳、総合的な学習の時間、特別活動、宗教についても小学校専科担任が可能となりました。

学校として必要となるマネジメント

小学校における教科担任制導入の目的は、次の通りです。

1.授業の質の向上
2.小・中学校間の円滑な接続
3.多面的な児童理解
4.教師の負担軽減です。

また、指導形態による教科担任制の分類として、「完全教科担任制」、「特定教科における教科担任制」、「学級担任間の授業交換」、「学級担任とのT.T」が示されています。地域や学校の実情に応じて、これらを効果的に選択したり組み合わせたりしていく必要があります。

さらに、学級担任が全ての教科を教えることで教科横断的なカリキュラム・マネジメントが効果的に行われてきた利点を損なわないように組織的・教科等横断的な教育課程の編成と実施を可能にしたり、全教師が専科教員の配置されている教科も含めて小学校で指導される全教科について当事者意識をもって広い視野で指導を行えるようにしたり、移動時間の確保も含めて時間割を工夫したりする必要があります。

フッターです。