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君は見たか!? 華麗なる川辺のハンター、カワセミ【モンタ先生の自然はともだち】

【モンタ先生の自然はともだち】
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今回は、野鳥の中でも特に筆者がお気に入りの、カワセミについて記していきたいと思います。昔から日本人に親しまれてきた、大変に美しい水辺の野鳥です。かつては環境破壊の影響で、そのすみかが山奥へと追いやられましたが、最近は環境が回復し、東京都内でも姿を見かけるようになりました。
本連載では、植物はもちろん、さまざまな小動物・昆虫類・両生類・は虫類・クモ・貝殻・天文・地質等、広く自然全般について、おもしろ情報や知識を中心に書いていきたいと思っています。

【連載】モンタ先生の自然はともだち #09

執筆/森田弘文

宝石から名付けられた美しさ

自然豊かな川の近くを散歩していて、「チッチー」というような可愛らしい鳴き声を聞いたことがありませんか? 声のする方を探すと、水面スレスレをすごいスピードで飛ぶ、輝く青い小鳥がいます。
そう、カワセミです。その青く美しい姿をして、「水辺の宝石」とか「青い宝石」などと呼ばれています。宝石の「翡翠(ヒスイ)」はカワセミの語源とされており、カワセミを漢字で書くと「翡翠」となります。
見た目は野鳥の中でも群を抜く美しさですが、さらにメスのカワセミは下のクチバシが赤くなるという特徴をもっており、輪をかけて美しい姿をしています。
下の写真は、メスのカワセミですね。

カワセミ1

最近は、都市部でも川の水がきれいになってきているので、東京都内などでもしばしばその姿が見られるようになってきました。
ある日、自宅近くの川岸を歩いていると、カワセミが河原のツルヨシの穂先に止まっているのを見つけました。静かに水面に目を凝らしています。
次の瞬間、パッと上空に舞い上がり、しばらく空中でホバリング。そして、おもむろに頭を下げ、一直線に川へ突っ込んで小魚のゲットに成功しました。息もつかせぬ早業です。
得意のダイビングを披露した後は、獲物を口にくわえ、安全な場所に移動しお食事タイムとなりました。
その絶妙な技に心の中で拍手を送りつつ、ふと、なぜ、あれほどまでに輝く青い色を配し、美しい色合いをしているのか、なぜ、魚に気付かれずに巧みな漁ができるのかと不思議に思い、調べてみました。

美しさと早さの秘密

⑴ 豊かな色彩は、なぜ? 何のため?

カワセミの天敵は、タカやワシなどの猛禽類です。いずれも高い空の上から獲物を探し、急降下して獲物を狩ります。一方のカワセミは、川面に近い、低いところにいることが多いです。
カワセミの青くて金属質な光を放つ体色は、上から見ると川の水面の色そっくりです。さらに、頭部を中心に散らばった白い斑点は、川の水面に光が当たって、キラキラ光る様子を模していると言えます。
こんなふうに景色にまぎれこんだら、いかに優れた目を持っていても、カワセミを探すのは至難の業でしょう。
なお、カワセミの他にも、自然界にはカナブンやタマムシなど、まるで金属のような光沢を持っている生き物がたくさんいますね。
これらはすべて、光の干渉によるものです。シャボン玉が七色に光るのと同じ原理です。
種は全く異なるのに同じような仕組みを身につけるように進化したなんて、生き物たちの不思議にワクワクが止まりません。

⑵ 鳥なのに水中技が見事なのは、どうして?

カワセミはかわいい姿には似合わず、すこぶる肉食系です。小魚や水棲の昆虫、オタマジャクシ、ザリガニ、エビなど何でも食べます。中でも小魚は動きが素早く、よく空中から狙って捕らえられるものですよね。その理由は2つあります。
1つめは、口ばしの形です。他の鳥と比べても特徴的で、とても尖っています。この形のため水の抵抗が小さく、魚に気付かれるよりも早く、静かに獲物を捕らえられるわけですね。新幹線の先頭車両の形はカワセミをモデルにしたという話がありますが、とても納得のいくお話です。
2つめは、目に「瞬膜」を持っていることです。この瞬膜はまぶたと目玉の間にある透明な膜で、必要に応じて開閉できるようになっています。この瞬膜を閉じると、まるで水中メガネをかけたかのようになり、カワセミは水の中でも獲物をしっかり見ることができるのですね。

コラム
崖の巣穴で子育てをするカワセミ
カワセミは、川の流れに面した、垂直な土手などに巣を作ります。巣作りは3月初旬からです。冬の間は雄と雌はそれぞれが単独でなわばりをもっていて水辺を移動しています。春の繁殖期になると、雄と雌が追いかけっこをする姿がよく見られるようになります。
カワセミの雄は雌に魚をプレゼントしながら求愛し、その行動を「求愛給餌」といいます。雌がそのプレゼントを受け取ると、晴れてカップル成立となります。カワセミの巣穴づくりは文字通り「体当たり」の重労働です。まず、巣穴づくりの場所と見込んだ土手の近くにある木の枝に止まり、そこから土手に向かって、長いくちばしを突き立てるように体当たりをしていきます。小さなくぼみができると、そこを足場にしながらくちばしで掘り進めます。こうして、直径約7㎝、奥行きはなんと約80㎝にも達する巣穴が完成します。この仕事はほとんどが雄が行うことになっています。まさに、かの有名な映画のタイトルと同じく「男はつらいよ!」ということになるのでしょうか。

特別展 カワセミアルバム

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