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《個別最適な学び》《協働的な学び》を両立する新授業デザイン〈デジタル×深い学び〉

連載
「デジタル×深い学び」の授業デザインReport

1人1台端末やネットワークの整備が進み、デジタルを活用した授業が広がりつつあります。しかし「《個別最適な学び》と《協働的な学び》を充実させる授業にするには、デジタルをどう使ったらいいの?」「教師主導の授業スタイルで困っていないけど…」といった戸惑いや悩みの声も聞こえてきます。
この連載では、「なぜ授業にデジタルを取り入れるのか?」という視点から、そのねらいや効果をわかりやすく解説。小・中学校の具体的な実践例やアイデアを紹介していきます。まずは気になるところから、授業づくりのヒントを探してみませんか?

この記事は、連続企画『「デジタル×深い学び」の授業デザインReport』の1回目です。記事一覧はこちら

東京都の施策から見える「デジタルを活用したこれからの学び」

東京都教育委員会は、令和6年3月に「東京都教育ビジョン(第5次)」を策定し、その中で 『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善の推進を掲げました。その中で、施策展開②として掲げられているのが、「『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善の推進」です。

また、同時期に策定された「東京都学校教育情報化推進計画」では、デジタル端末やクラウドサービスを活用した授業デザインについても具体的に整理しています。これらの施策を通じて、東京都は予測が困難なこれからの時代を生きる子どもたちが、自ら課題を見付け、学び方を選び、自己調整をしながら学びを深めていく姿を実現しようとしています。

こうした方向性をもとに、東京都は令和6年度に「デジタルを活用したこれからの学び研究校」として小・中・高あわせて10校を指定し、研究に取り組みました。1年間にわたる10校の取組は東京都教育庁が発信しているデジタルブック『デジタルを活用したこれからの学び TOKYO LEARNING STYLE』で紹介されています。そこには初めての挑戦に向き合う先生たちの姿や、新しい学びのあり方を学校全体に広げようと奮闘する姿など先生たちのリアルな姿が記録されています。

「デジタルを活用したこれからの学び」表紙画像
実践校のページは、実践レポートと担当教員のインタビューで構成。各授業での成果と課題を紹介するだけでなく、スマートフォンなどで担当教員のインタビュー動画も見ることができます。

「デジタル×学び」で変わる子供たちの姿

「デジタルを活用したこれからの学び」がめざしているゴールは、一人ひとりの学習スタイルやペースに合った「個別最適な学び」と、他者とのつながりの中で新たな視点やアイデアを得て、理解を深める「協働的な学び」の両方をバランスよく充実させること。そして、子供自身が自己調整しながら「自立した学習者」となる学びを実現することです。

これらの学びを可能にするツールが「デジタルの活用」です。ただし、「デジタル機器を使えばうまくいく」「このアプリを使えば安心」ということではありません。大切なのは、これらのツールを「どう使うか」ということなのです。

デジタルを活用することで、教室以外でも学びを深めることが可能になります。異なる場所で学習を進める子供同士が、クラウド上で気づきを得て、理解を深めることも。(デジタルブック『デジタルを活用したこれからの学び TOKYO LEARNING STYLE』)

「デジタルを活用したこれからの学び」に必要な3つの力とは……?

これまでのような教師主導の学びから、子供が自己決定する学びの授業に変えていくには、子供たちにも新しい力が必要になります。それが、①学びのプロセス②思考のスキル、③デジタルリテラシーです。ここではこの3つの力をみていきましょう。

(デジタルブック『デジタルを活用したこれからの学び TOKYO LEARNING STYLE』より抜粋)

①学びのプロセス
「デジタルを活用したこれからの学び」の授業では、「情報収集」「整理・分析」「まとめ」「説明」というプロセスを子どもたち自身が把握し、進めることが求められます。そのため、子供たちは「現在、自分がどのプロセスにいるのか」「次のプロセスに進むためには、今日は何をすればよいのか」などと考えて行動できるようにすることが重要です。

「情報収集」「整理・分析」「まとめ」「説明」に取り組む時間や順番は、子ども自身が決めることができます。一人ひとりの課題にあわせて、多様な流れで学びを進めることも大きな魅力です。(デジタルブック『デジタルを活用したこれからの学び TOKYO LEARNING STYLE』より抜粋)

②思考のスキル
学びのプロセスの、「整理・分析」「まとめ」の場面では、物ごとを比べたり、分けたりして考えるスキルが求められます。また、一つのことをいろいろな角度から見て考える力も必要です。こうした「比べる」「分ける」「まとめる」といった考え方の方法を、「思考のスキル」といいます

「デジタルを活用したこれからの学び」の授業だからといって、すべてをデジタルで行うわけではありません。子供の様子や学ぶ内容にあわせて、ノートやプリントなども生かして進めることも大切です。(デジタルブック『デジタルを活用したこれからの学び TOKYO LEARNING STYLE』より抜粋)

③デジタルリテラシー
ノートアプリ、ホワイトボードアプリなどを使いながら、自分の情報を収集・整理、共有し、友達の学習を参照する力です。お互いの学習をリアルタイムで参照できることで、ヒントを得たり、自分の考えを広げたりすることができます。

デジタルを活用することで学習状況を把握できるため、子供一人ひとりに合わせた指導や支援がしやすくなります。(デジタルブック『デジタルを活用したこれからの学び TOKYO LEARNING STYLE』より抜粋)

教師は学びの「伴走者」へ

「デジタルを活用したこれからの学び」を実現するうえで、教師の役割の転換は欠かせません。授業は、知識を伝える場から、子供たちが自ら学びを深めていく場へ。そして教師は、教える存在から、子供たちの学びを支援する「伴走者」としての役割が求められています。

この連載では、そうした授業づくりの考え方や工夫、子供たちに必要な3つの力を育む実践の例などをまじえながら紹介していきます。

取材・文/カラビナ

この記事は、連続企画『「デジタル×深い学び」の授業デザインReport』の1回目です。記事一覧はこちら

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