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小4国語科「こわれた千の楽器」全時間の板書&指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「こわれた千の楽器」(東京書籍)の全時間の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小四 国語科 教材名:こわれた千の楽器(東京書籍・新しい国語 四上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/熊本大学大学院教育学研究科准教授・北川雅浩
執筆/宇都宮大学共同教育学部附属小学校・綱川真人

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、C読むことの〔構造と内容の把握〕に位置付けられた指導事項イ「登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述を基に捉える」という、文学的文章における資質・能力の育成を主に図った授業を展開します。

新年度初めての文学的文章教材です。音読という表出の過程を通じて、登場人物の行動や気持ちを叙述から楽しく想像する力の育成を、言語活動を通してねらっています。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元を通して行う言語活動は、「心に残った場面を音読シアターで表す」活動です。これは、言語活動例イ「詩や物語などを読み、内容を説明したり、考えたことなどを伝え合ったりする活動」に位置付けられます。

「音読シアター」とは、ロイロノート・スクールのような学習支援アプリを活用したスライドデータ上に、想像した場面絵と音声データを取り込んだものです。基本構成は2枚のスライドデータで、音読する物語のあらすじを紹介するスライド(1枚目)と、先述した場面絵とともに音声が流れるスライド(2枚目)から成っています。

当然のことながら、単元の言語活動を設定する際は、その活動を通して、育成をねらう資質・能力が身に付くかどうかを検討しなければなりません。

主体的に子供たちが資質・能力を身に付けられるよう、「ここおもしろい!」「ぐっときた」といった感情を喚起し、ぜひ家の人に伝えたいな、と思った物語の場面について、音読で表現する課題を与えます。

登場人物の行動や会話、地の文などの叙述を「どのように音読するか」、その工夫を理由とともに考えたり、繰り返し音読したりする過程で、「人物の行動や気持ちを、叙述を基に捉える」力[C読むことイ]や、「文章全体を意識して音読する」力[知識・技能(1)ク]の育成を図ります。 

4. 指導のアイデア

本単元での指導の工夫は、大きく3点あります。

1点目は、一人一人が「心に残った場面」について読む課題とすることです。現行の学習指導要領では、すべて実生活に生きて働く資質・能力を身に付けることが求められています。「実生活で生きて働く」力を身に付けるためには、授業の課題が自分事であったり、わくわくするものであったりと、目の前の子供一人一人にとって魅力的なものでなければなりません。

今回は、おもしろかったり、感動したりした「心に残った」物語の場面について子供たちが思考を膨らませ、深く読んでいきます。「お気に入り」「大すき」「グッとくる」「心に残る・響く」といったキーワードは「子供の素の思い」を起点としており、必然性や目的性に繋がる重要なものです。これらは、学びの大きな原動力となり、効果的に資質・能力を身に付けるための武器となります。

2点目は、ICTの活用です。ICTは、国語科の資質・能力を効果的に身に付ける有効な手段の一つとして活用することが大切です。利点として、①記録(録音・録画)できる、②蓄積できる、③瞬時に共有できる、などが挙げられるでしょう。

今回の言語活動が「音読シアター」なので、①記録した音声を客観的に聞いたり、友達と聞き合って助言や感想を交流したりする、②過去の録音と比べる、③学級内で個々の音声や音読の工夫が記された台本を共有して自由に参考にする、などの活用が考えられます。

ただし、ここで注意が必要です。それは、無目的に録音することが主な活動になってしまうことです。「ICTありき」「活動ありき」とならないように、ねらいを子供たちが意識できるようにすることが大切です。

あくまで今回の目的は読む力の育成です。繰り返し物語の叙述に立ち返り、行動や気持ちを想像し音読の工夫を考える姿の表出が必須となります。

3点目は、身に付けた読みの力を読書に生かせるような環境づくりです。実生活に生かせる読みの力を身に付けるためにも、「読書量を確保し、繰り返し読む過程を設けること」「自分が関心のある読みたい本を手に取ってじっくり読む機会を設けること」が大切です。

そこで、本単元では、「みんなで力を合わせて何かを成し遂げる物語」をテーマに選書し、単元終盤に教師や図書館支援員からの本の紹介場面を設定します。

5. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名:  心に残った場面を「音読シアター」で表そう

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
① 教師の「音読シアター」を聞いて、単元の見通しをもつ。全文を読む。
② 単元の計画を確認し、語句の意味を調べる。

・第二次(3時4時5時6時7時
③ シアターのスライド1枚目にあらすじをまとめるために、「こわれた千の楽器」を読んで場面を確かめ、内容の大体を読む。
④ 一の場面を題材に、音読を工夫する方法を考える。
⑤ シアターにしたい、最も心に残った場面はどこかを友達と交流したり、台本に音読の工夫を書いたりする。
⑥⑦ 友達と交流しながら、書いた台本をよりよくしたり、録音してスライド2枚目を作ったりする。
 ※場面絵は、教科書の挿絵を使ってもよいし、自分で描きたい場合は朝の時間や休み時間に描くようにする。

・第三次(8時
⑧ 自分が気になる友達の「音読シアター」を聞き合い、感想を伝え合う。単元の学習を振り返る。

全時間の板書例、発問例、児童の発言例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
単元の見通しと「やってみたい!」思いの醸成

単元の1時間目では、どのような言語活動を通して、どのような学習過程で何の力を身に付けるのかを子供たちと共有するとともに、「やってみたい!」「楽しそう!」という思いの醸成を図ります。

導入では、「モチモチの木」「ゆうすげ村の小さな旅館―ウサギのダイコン」のような、3年生で既習の教材を使った「音読シアター」の例を教師が事前に作成し、披露します。視聴した感想を発表し合い、単元の課題や身に付ける力を共有します。

音読の工夫をほとんどしていない音声も用意して比較するなどして、叙述を基に人物の行動や気持ちを想像して表現することの価値を実感できるとよいでしょう。

また、言語活動である「音読シアター」の構成も確認します。そこで、指導事項育成の要となる、教師が音読の工夫等を書き記した台本も提示します。2回目は教師の台本を読みながらシアターの音声を聞く時間を設けることで、学習の具体的イメージをもてるようにします。

先生の音読の映像を見て、どう思いましたか。

「モチモチの木」の話が懐かしかったです。

(先生が描いた)絵は一枚しかなかったけれど、想像が膨らみました。

今の〇〇さんと同じ感想をもった人はいますか。

それはどうしてでしょう。

感情を込めて言っていたからです。

いろいろな音読の工夫をしていたからだと思います。

例えば、どのような工夫がありましたか。

「医者様を、よばなくっちゃ!」の所は早口で、焦るように読んでいました。

どうしてそのように読んだのだと思いますか。

大切に育ててもらっているじさまが苦しんでいる姿を見て、「早く助けなくちゃ」と焦っている気持ちを表したのだと思います。

〇〇さんに付け足して、「子犬みたいに体を丸めて、表戸を体でふっとばして」「ねまきのまんま」って言っていたから、急いでいることが分かります。だから、先生は早口で音読したのだと思いました。

私も、先生のようにスライドを作りたいです!

先生が作ったスライドを「音読シアター」と言います。今回の単元では、物語の心に残った場面を中心に、想像したことを音読で表して家の人に紹介しましょう。みんなに紹介してもらいたいお話は、『こわれた千の楽器』です。

千の楽器ってすごい数だな。

でも、こわれていたら捨てられちゃうよね。どんな話だろう。

その後、実際に「こわれた千の楽器」の全文を読んでいきます。この単元では、黙読でストーリーを捉えます。

その際、声に出さずに読むことを「黙読」という学習用語として確認することも大切です。もちろん、個別のニーズによっては、タブレット端末からイヤホンを使って音読されたものを聞くよう支援してもかまいません。

読み終わったら、いいなと思ったところや音読してみたいところについてノート等に書いていきます。この時点で子供たちの心に残った場面をつかんでおくことで、単元の展開に生かしやすくなります。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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