授業時数【わかる!教育ニュース #64】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
わかる!教育ニュース #64
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第64回のテーマは「授業時数」です。

授業時数を相当余分に確保しつつ、使い方をはっきり決めていない学校が4分の1

どの学年で何を教えるのかは、国が学習指導要領で定めています。そして、決められた学習内容を教えるために必要な授業のコマ数「標準授業時数」も、同様に示しています。でも、標準を超えた時数を見込んでいる学校は珍しくありません。

全国の公立小中学校がつくった2024年度の年間授業計画で、標準時数の1015コマを大きく上回る1086コマ以上の学校が、小5で17.7%、中2で15.2%に上ることが、文部科学省の調査で分かりました(参照データ)。22年度と比べて小5は19.4ポイント、中2も20.9ポイント減ったものの、まだ多いと言えます。

ただ、1086コマ以上の学校がどの自治体にもあるわけでもありません。小5の場合だと、北海道や静岡、高知など6道府県がゼロなのに対し、長野は53.9%、宮崎も49.3%と、大きな地域差があります。

なぜ1086コマ以上も見込んでおくのでしょうか。実は、具体的な使い道を想定していない学校が、小5で24.8%、中2も27.5%あります。

時数を相当余分に確保しつつ、使い方をはっきり決めていない学校が4分の1あることに、阿部俊子文科相は2月14日の会見で、計画した時数が本当に必要か精査を促すとともに、「教員の働き方改革にも大きく影響する」と述べました。3月4日の会見でも、重ねて同様の問題意識を口にしています。

理由がある場合、3割が学級閉鎖など不測の事態への備えを挙げました。文科省は「感染症などで時数が標準を下回っただけでは法令違反ではない」としていますが、学校にとって、時数が足りなくなることへの不安は根強いのでしょう。

次期学習指導要領の諮問で、年間授業時数は今以上に増やさないことが前提

一方で、指導要領絡みの回答も、少なくありません。「指導要領で定めた内容を、漏れがないよう教えるため」が、小5の場合で31.5%に上ります。子供たちの理解度によって授業の進み具合も変わるため、決められた学習内容をこなせるよう、念のために時数を多く見込んでいるようです。

「カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)」という言葉を聞くことが増えました。指導要領で定めた「最低限教えるべきこと」が多すぎて、学校や子供に大きな負担がのしかかっている状態です。今回の調査結果に、「過積載」の影響を指摘する声もあります。

「ゆとり教育」への批判から、近年の指導要領は改訂のたびに教える内容が増え、現場の負担が増していると言われてきました。昨年12月、中央教育審議会に出された次期指導要領の諮問でも、年間授業時数については、今以上に増やさない前提で議論するよう求めています。

とはいえ、授業時数は、指導要領で定めた学習内容をベースに考えるもの。「授業は増やさないけれど、教える内容量はそのまま」では、現場がいくら工夫しても限界があります。その点を踏まえて、改訂議論を進めてほしいものです。

【わかる! 教育ニュース】次回は、3月30日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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