小6理科「ものの燃え方」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6理科「ものの燃え方」の板書例、教師の発問、想定される子どもの発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

タイトル画像

執筆/福岡県福岡市立東吉塚小学校教諭・岩田謙人
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県福岡市立南片江小学校校長・酒井美佐緒
   福岡県福岡市立箱崎小学校教頭・比毛孝之

単元目標

空気の変化に着目して、物の燃え方を多面的に調べる活動を通して、燃焼の仕組みについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に妥当な考えをつくりだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。

評価規準

知識・技能

①植物体が燃えるときには、空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができることことを理解している。
②燃焼の仕組みについて、観察、実験などの目的に応じて器具や機器などを選択して正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。


思考・判断・表現

①燃焼の仕組みについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②燃焼の仕組みについて、観察、実験などを行い、ものが燃えたときの変化についてより妥当な考えをつくりだし、表現している。


主体的に学習に取り組む態度

①燃焼の仕組みについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②燃焼の仕組みについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 9時間

第1次 ものの燃え方と空気の様子

1 物を燃やした経験やろうそくが燃えている様子について気づいたことを話し合い、問題をつくる。

思考・判断・表現
燃焼の仕組みについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

2~3 ビンの中のろうそくが燃え続けるためには、どのようにしたらよいのか調べる。

知識・技能
燃焼の仕組みについて、観察、実験などの目的に応じて器具や機器などを選択して正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉

主体的に学習に取り組む態度①
燃焼の仕組みについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈発言分析・記述分析〉

第2次 ものを燃やす働きのある気体

4~5 物を燃やす働きのある気体について調べる。

思考・判断・表現②
燃焼の仕組みについて、観察、実験などを行い、ものが燃えたときの変化についてより妥当な考えをつくりだし、表現している。〈発言分析・記述分析〉

第3次 ものが燃えるときの空気の変化

6~7 ものを燃やす前と燃やした後の空気の変化をいろいろな方法で調べる。(授業の詳細

知識・技能
植物体が燃えるときには、空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができることことを理解している。〈発言分析・記述分析〉

思考・判断・表現②
燃焼の仕組みについて、観察、実験などを行い、ものが燃えたときの変化についてより妥当な考えをつくりだし、表現している。〈発言分析・記述分析〉

8~9 ろうそく以外の植物体についても、同じように燃焼するのか調べる。

主体的に学習に取り組む態度②
燃焼の仕組みについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈発言分析・記述分析〉

授業の詳細

第3次 ものが燃えるときの空気の変化

6~7 ものを燃やす前と燃やした後の空気の変化をいろいろな方法で調べる。


燃焼の仕組みについて、観察、実験などを行い、ものが燃えたときの変化についてより妥当な考えをつくりだし、表現できる。また、植物体が燃えるときには、空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができることを理解できる。

板書例の画像(クリックして拡大)

①問題を見いだす

前回までに、ビンの中の空気が入れ替わると燃え続けることと、酸素にはものを燃やす働きがあることがわかりましたね。

では、なぜ空気が入れ替わらないと火が消えてしまうのでしょうか。

燃えることで空気の性質が変化したのかな。

空気はちっ素、酸素、二酸化炭素が混ざったものだったから、それぞれの体積の割合が変化したのかもしれないね。

空気中のちっ素や酸素などの体積の割合を示した円グラフ
空気中のちっ素や酸素などの体積の割合

ものが燃えたあとの酸素や二酸化炭素の割合を調べてみたいね。

では、物が燃える前と燃えた後で、酸素と二酸化炭素の割合がどう変化するのかを調べてみましょう。


ものが燃えると、空気中の酸素や二酸化炭素の割合はどのように変化するのだろうか。

 
空気中のちっ素や酸素、二酸化炭素などの体積の割合を示したグラフを提示することで、燃焼前後で空気の性質が変化した可能性があることに気づくことができるようにしましょう。また、窒素は実験で体積の割合を調べることができないため、燃焼前後で窒素の体積の割合が変化しないことを伝えることで子どもが酸素と二酸化炭素に着目できるようにすることも考えられるでしょう。

②予想する

ものを燃やす前と燃やした後で空気にどのようなちがいがあると思いますか。

酸素がものを燃やすことを考えると、ものを燃やしたあとは、酸素が減っているのかな。

減った酸素はどうなったと思いますか。

ビンの中から外に出ていったわけじゃないから、別の気体に変わったのかな。

石油ストーブを使うと二酸化炭素が出ると聞いたことがあるよ。

酸素が二酸化炭素に変わったかもしれないね。


予想をする際、質的・実態的な見方を働かせて空気の変化について考えられるように、ICT端末を活用してイメージ図に表現することができるようにするとよいでしょう。また、表現したイメージ図をクラウド上で共有することで、予想の交流ができ、意見交換や議論が進みます。

「燃やす前」と「燃やした後」の酸素と二酸化炭素の量の変化を表したイラスト

③解決方法を考える

先生からは気体検知管と石灰水について紹介します。

ものを燃やす前後の酸素の割合を測って、変化しているかどうかを調べたらいいね。

二酸化炭素も同じように調べないといけないよね。

条件をそろえることは、これまでも気を付けてきたことですね。今回の実験でも条件をそろえましょう。

④観察・実験をする安全指導


A 気体検知管で調べる
①燃やす前のビンの中の酸素と二酸化炭素の体積の割合を気体検知管で調べる。
②火のついたろうそくをビンの中に入れてふたをする。
③火が消えたら、再び酸素と二酸化炭素の体積の割合を気体検知管で調べる。


B 石灰水で調べる
①燃やす前のビンの中に石灰水を入れ、ふたをして振り、石灰水に変化があるかどうかを調べる。
②火のついたろうそくをビンの中に入れてふたをする。
③火が消えたらろうそくを取り出し、石灰水を入れ、ふたをして振り、石灰水に変化があるかどうかを調べる。


※酸素、二酸化炭素計測器があれば、リアルタイムで気体の体積の割合の変化が見られるので、活用するとよいでしょう。


実験をする際、中の空気が入れ替わってしまうと測定誤差が大きくなるため、素早く気体検知管を入れたり、石灰水を入れたりしましょう。ふたの形状が工夫されたものを使うと測定誤差が小さくなります。

 
気体検知管は酸素用と二酸化炭素用のもので目盛りの付き方が違うため、丁寧に数値の読み方を確認するとよいでしょう。また、二酸化炭素用の気体検知管は、0.03%~1%用のものと0.5%~8%用のものがあります。まずは0.03%~1%用のものを使って、1%を超えたときに追加で0.5%~8%用のものを使うようにします。今回の実験では、燃やした後の二酸化炭素の体積の割合を測定する際に使用することになります。


石灰水は500㎤の水に多量(50g以上)の水酸化カルシウムを加えてよくかき混ぜ、2日から1週間ほどふたをして静かに放置し、この上澄み液を使用します。よくかき混ぜた後、なかなか透明にならない場合は、石灰水をろ過すると沈殿と分離することができます。

 
AとBの両方の実験を行うことで、多面的に結果を考察することにつながります。また、気体検知管と石灰水は別単元でも何度か使用するため、技能を身に付ける観点からも、なるべく両方の実験に取り組めるようにしましょう。

⑤結果の処理

結果をICT端末上に記録し、学級で共有します。

実験結果をまとめた表


実験結果を数値で記録し、学級で共有することで、なるべく多くのデータから考察を行うことができるようにします。その際、表計算ソフトなどを用いて酸素の体積の割合が減った分と、二酸化炭素の体積の割合が増えた分が一目でわかるように工夫しておくと、酸素が燃えることによって二酸化炭素に変化したことを捉えやすくなります。

⑥結果を基に考察する

予想と同じで、Aの実験では酸素が減って二酸化炭素が増えたよ。Bの実験でも、燃やした後の気体には二酸化炭素が多く含まれていることがわかった。

酸素が減った割合と二酸化炭素が増えた割合がほとんど同じなので、ものが燃えることで酸素が使われて二酸化炭素に変化したと考えられるね。

燃えた後の酸素は約17%あって、全ての酸素が使われたわけではないんだね。

ビンの中でろうそくの火が消えたのは、酸素の一部が二酸化炭素に変わっていたからなんだと考えられるよ。


考察を行う際は、自分の予想と実験結果を照らし合わせながら行いましょう。燃焼によって酸素が減り、二酸化炭素が増えるという点に加え、燃焼後の酸素が全て使われたわけではない点についても考察できるように助言するとよいでしょう。


酸素の体積が増えた割合と二酸化炭素の体積が増えた割合の数値は、多少のちがいが出ることがあります。その場合、なぜ多少のちがいが出ているのかを学級で話し合い、これまでの実験でもあったように実験を行う際の測定誤差があることを確認するとよいでしょう。

⑦結論を出す


ものが燃えると空気中の酸素の割合が減り、二酸化炭素の割合が増える。

⑧振り返る

今日の学習を振り返って考えたことはありますか。

ビンの中のろうそくが燃え続けるためには、ビンの中の空気が入れ替わらないといけなかった理由がわかったね。

気体検知管と石灰水の両方を使った実験が行えたので、その結果からはっきりとした考察ができた。

ビンの中の酸素が減って二酸化炭素が増えるから、空気が入れ替わらないといけないんだね。

ほかにも、石油ストーブを使うときに換気をしないといけないのは、ものが燃えて部屋の中の二酸化炭素が増えてしまうからだね。

学んだことを生活と結びつけて考えることができていますね。


振り返りを行うときには、前時までの学習とつなげて考えたり、日常生活に結びつけて考えたりできるように助言しましょう。そのためには、振り返りを継続実施し、ICT端末などを用いて「スタディ・ログ」として残すことが大切です。また、教師が振り返りに対して形成的評価を行うことによって学んだ価値を子どもが実感できるでしょう。

安全指導

実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。

【火を使う際の注意点】
●ぬらした雑巾などを用意する。
●燃えやすいものは机上に置かない。
●ビンやふたが熱くなるのでやけどに注意する。

【気体検知管】
●酸素用の気体検知管は熱くなるので、冷めるまで触らないように注意する。
●ガラスの破片などで手を切らないように注意する。
●気体検知管の先にはカバーゴムをつける。
●検知管を気体採取器に入れる向きに注意する。(検知管の中身が漏れ出る可能性があります。)

【石灰水】
●目に入らないように保護メガネをかける。
●石灰水が手などについたら水でよく洗う。
●石灰水をビンに入れて振るときは、こぼれないように注意する。

イラスト/難波孝

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました