高学年の子どもたちの、作品を見てほしい!という気持ちを満たす声のかけ方とは?


今回は高学年段階での、子どもの「作品を見てほしい」という気持ちを満たす声掛け法です。中学年であったような、筋の通った「素敵を見つけた声掛け」に加えて、児童の性格を意識したテンションの調整が必要になります。今回の記事では大人に近付いている高学年の、その子の性格に合わせた見てほしいという気持ちを満たす声かけについて考えていきます。
題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一
連載【いちばん楽しいアート】#11
「素敵」をその子の雰囲気に合わせて伝える
基本的な声掛けの方法は変わりませんので、どのような声かけをしたら良いのかは、以下の記事をご覧ください。
>>児童への図工的「ほめ言葉」をトレーニングして、楽しく自由な図工の授業をつくろう!
低学年、中学年ではテンション高めで、筋が通っていればどのような伝え方でも問題ありませんでした。しかし、高学年ではそうはいきません。その子の普段の雰囲気に合わせたテンション感と筋の通った声掛けが必要になります。
何だか難しそうですが、そこまで身構える必要はありませんよ。
私の経験から、下図のようなグラフと、そのときの本人の様子に合わせてテンション感を決めています。「雰囲気」「冗談好きか」「図工への印象」の3項目で判断し、その項目の中間を取ったテンション感を基本のものとしています。

テンション感が決まったら、その時の児童からの話題に合わせて筋の通った声かけをしてみてください。児童生徒の普段の様子は担任の先生方が一番よく知っています。その子の好きなゲームや漫画、スポーツ、食べ物、動物、趣味などを織り交ぜながら、作品について話してみても面白いですね。日頃の学級経営や関係作りの中で調整して頂けたらと思います。
「素敵」について会話をしよう
折角の児童からの声かけを1回の会話のラリーだけで終わらせてしまっては非常にもったいないです。ぜひ、その素敵について、または素敵から連想される言葉で、たわいも無い会話で構いませんので話してみてください。例えばこんな感じです。
先生見てください。この鳥よく描けたと思うんです。
お! この鳥の羽ばたき方、力強いねえ! なんだか、実際の鳥はどんな風に羽ばたくのか気になるから、バードウォッチングに行きたくなっちゃうね!
バードウォッチングって行ったことないです。
そうなんだね! じゃぁいつか、ぜひ行ってみてね。ところで、鳥って飛ぶでしょ? 体が軽い方が飛びやすいから、骨スカスカなんだって。だから骨折しやすいんだってさ。
今素敵な鳥の絵を描いてる児童にそんなこと言っちゃいますー?
確かに! ゴメンゴメン。どんな絵になるか楽しみにしているよ!
のような、少し脱線した会話を楽しんでみてください。素敵を見つけて声掛けしているだけだと、少し堅苦しい雰囲気になってしまうので、少し和ませる意味でも、児童と関係を作る意味でも会話することをおすすめします。高学年段階では、冗談を交えた会話を楽しむことができます。このような楽しい会話が近くで繰り広げられていたら「ちょっと会話に混ざりたいかも」と思う児童がたくさん生まれているはずですよ。

イラスト/坂齊諒一

【著者プロフィール】
坂齊諒一●さかさいりょういち
1991年埼玉県生まれ。文京学院大学人間学部児童発達学科卒業。埼玉県公立小学校教諭として7年間勤務した後、2022年に一旦退職。翌年度から小学校、中学校教諭として勤務しながら、フリーランスイラストレーターとして活動を始める。企業や教育委員会からの依頼で絵を描きつつ、教員の働き方や図工の授業について研究をしている。