小4理科「天気と気温」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小4理科「天気と気温」の板書例、教師の発問、想定される子どもの発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

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執筆/福岡県北九州市立折尾東小学校教諭・木村七帆子
   福岡県北九州市立永犬丸小学校教諭・福永匠
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県北九州市立曽根東小学校校長・中村弘幸
   福岡県北九州市立花房小学校教頭・松永庸助

単元目標

天気と気温の変化に着目し、それらを関係付けて、1日の気温の変化を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。

 
「地球」を柱とする領域である本単元は、主として時間的・空間的な視点で捉えることが特徴的な視点となっています。「時間的・空間的」な見方をはたらかせ、晴れた日と曇りや雨の日の気温の変化を比べる活動や、1日の気温の変化の仕方と天気を関係付けて考える活動を通して、学習内容の理解を深めることができるように促しましょう。

評価規準

知識・技能

①天気によって、1日の気温の変化の仕方にちがいがあることを理解している。
②天気の様子と気温との関係について、器具や機器を正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。


思考・判断・表現

①天気の様子と気温との関係について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。
②天気の様子と気温との関係について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。


主体的に学習に取り組む態度

①天気の様子と気温との関係についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②天気の様子と気温との関係について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 7時間

第1次 天気と気温の関係について調べる。

1 天気と1日の気温の変化について問題をつくる。授業の詳細①

思考・判断・表現
天気の様子と気温との関係について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

2 天気と1日の気温の変化について調べる計画を立てる。授業の詳細②

主体的に学習に取り組む態度①
天気の様子と気温との関係についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

3~5 天気と1日の気温の変化について調べ、記録する。授業の詳細③

知識・技能
天気の様子と気温との関係について、器具や機器を正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動観察・記録分析〉

6 天気と1日の気温の変化について調べた結果をもとに考察を行う。授業の詳細④

思考・判断・表現②
天気の様子と気温との関係について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

7 天気と1日の気温の変化についてまとめる。

知識・技能①
天気によって1日の気温の変化の仕方にちがいがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉

主体的に学習に取り組む態度②
水の性質について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉

授業の詳細①

第1次 天気と気温の関係について調べる。

1 天気と1日の気温の変化について問題をつくる。


天気の様子と気温との関係について、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現することができる。

板書例の画像
板書例(クリックして拡大)

①問題を見いだす

晴れの日の校庭の様子と曇りの日の校庭の様子のイラスト

晴れの日と曇りの日で、昼休みに外に出たとき、気づくことはありますか?

晴れの日は、昼は暑くなったから上着をぬいだよ。

曇りの日は、昼も少し肌寒い感じがしたよ。

3年生のとき、太陽と地面のあたたまり方の関係を調べましたが、覚えていますか?


既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を考えることを大切にしましょう。本単元では、日光が地面を温めるといった3年生での既習内容や、気温や天気による服装の変化などの生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を考え、表現することが大切です。

 
天気と気温の関係について、生活経験や3年生での「太陽のうごきと地面のようす」の学習内容を想起できるようにすることで、根拠のある予想を発想することができるようにしましょう。何を予想すればよいのかを確認することが大切です。

日なたの地面は温度がどんどん上がったね。

日かげの地面は、あまり温度が上がらなかったよ。

晴れの日は、日なたの地面と同じように、曇りの日よりも昼に暖かくなるのかな。

曇りの日は、朝と昼でちがいはないのかな。日かげの地面と同じように考えていいのかな。


タンポポやデイジーなどの花は、朝や曇り、雨の日には開花しておらず、晴れの日の午後は開花しています。学校にこれらの花があれば、観察することで時間ごとの生き物の「ちがい」から天気や気温に目を向けることができ、単元の導入に活用することができる場合があります。

②予想する

晴れの日の気温は大きく変わり、曇りの日や雨の日ではあまり変化しないと思う。なぜなら、地面の温度の変化と同じだと思うから。

曇りの日は、晴れの日と同じように気温は大きく変化すると思う。雨の日とちがって、雲で太陽が隠れているだけだから、地面は温かくならなくても空気は温かくなるんじゃないかな。

天気と気温に何か関係があるのかな。天気の日と曇りの日の気温の変化を調べてみよう。


天気によって、1日の気温の変わり方にどのようなちがいがあるのだろうか。

授業の詳細②

2 天気と1日の気温の変化について調べる計画を立てる。


天気の様子と気温との関係についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決することができる。

③解決方法を考える

天気と1日の気温の変化の関係をどうやって調べたらいいですか。

 
「晴れ」と「曇り」のちがいは、空全体の雲の量で決まります。空全体の広さのうち、9~10割が雲で覆われている状態が「曇り」です(5年生で学習する内容です)。観察前に共通理解できるように確認しておきましょう。

同じ場所で天気ごとに気温を測っていけばいいね。

今日は晴れているけれど雲も出ているよ。雲が少しでもあったら曇りなのかな。


気温を測るときは、次のことを指導するようにしましょう。
●周りがよく開けた風通しの良いところで測る。
●地面から1.2~1.5mの高さで測る。
●日光が直接温度計に当たらないように測る。
●毎回同じ場所で、同じ方向に温度計を向けて測る。


本時は、他者と関わりながら問題解決しようとする態度の育成をめざしているので、解決の方法を他者と共有し、それらを参考にしながら、子ども自身で解決の方法を発想できるようにしましょう。また、友達の考えで自分の解決の方法を見直すことができたことや、新たな考えに気づいたといったことを取り上げて、他者と関わることのよさに気づくことができるようにしましょう。

空気の温度のことを気温というんだね。どうやって測るのかな。1日に何回測ればいいのかな。

友達の考えを参考にして、晴れの日の気温の変化と、曇りや雨の日の気温の変化をわかりやすく比べるために、グラフにしてみるよ。

 
個人で解決の方法を発想できたら、クラウドに書き込み、学級全体で共有できるようにします。その方法が「自分の予想を確かめることができるのか」「その方法で調べることが可能かどうか」などの視点で選択できるように確認しましょう。

それでは晴れの日と曇りや雨の日を選んで、午前9時から午後3時までの気温を測っていきましょう。場所を決めて、測り方を練習しましょう。

授業の詳細③

3~5 天気と1日の気温の変化について調べ、記録する。


天気の様子と気温との関係について、器具や機器を正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録することができる。


1日の気温の変化と天気を正確に記録するために、温度計の読み取り方やグラフの表し方・読み方の指導を大事にしていきましょう。また、百葉箱や自記温度計を活用することで定点観測をするのに都合がよいことや、登校前・下校後の気温の観測、長期にわたって継続して観測することができることのメリットなども指導できます。適切な測り方や定点で観測することで、天気と1日の気温の変化の様子を正確に捉えることができます。

④観察・実験をする安全指導

今日の天気は何だといえますか?

今日は、雲が空の半分くらい出ているけれど、晴れといえそう。晴れの日の1日の気温の変化の記録をとります。

授業の詳細④

6 天気と1日の気温の変化について調べた結果をもとに考察を行う。


天気の様子と気温との関係について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決することができる。

⑤結果の処理

晴れの日と、雨の日の1日の気温の変化が記録できましたね。ちがいはありますか。


観察記録のグラフは、天気による1日の気温の変化をわかりやすく比較できるようにすることが大切です。トレーシングペーパーや透明なシートを用いて重ねるなどの方法がありますが、ICTの活用も有効です。表集計ソフトを利用し、結果をグラフ化して子ども同士で共有することもできます。

1日の気温の変化をグラフに表すと、比べやすいね。

⑥結果をもとに考察する

晴れの日と雨の日の1日の気温の変化を示した折れ線グラフ
晴れの日と雨の日の1日の気温の変化


気温の「変化」に注目できるようにしましょう。

晴れの日の気温のグラフは山の形になっているよ。お昼すぎの気温がいちばん高いね。

気温の変わり方が大きいから、グラフが山のような形になっているね。


発展的な内容となりますが、太陽高度を示すグラフと、晴れの日の気温の変化のグラフを同時に見ることで、両者の関係性に気づくことができます。その際、南中時間と1日の最高気温の時間がずれることから、日光はまず地面を温め、温められた地面によって空気も温められると確認できるようにすることができます。

晴れの日は、日が出る頃がいちばん低い気温になり、午後2時ごろに最高気温になっているのはどうしてだろう。

1日を通して気温があまり変わらないね。

晴れの日よりも気温が低いね。太陽が出ていなかったからかな。


表集計ソフトを利用して作成した班ごとの結果のグラフを一度に提示することで、場所がちがっても天気と1日の気温の変化との関係について共通点を見いだすことができ、対話的な学びができます。

予想通り、晴れの日の気温は昼ごろにいちばん高くなり、山がたに大きく変化しているよ。曇りや雨の日は、あまり変化しないことがわかった。

天気のちがいが1日の気温の変化に関係するのはなぜだと思いますか。

日なたと日かげの温度を調べたときのように、日光が届かない曇りや雨の日は気温が上がらないんだと思うな。

だから、天気と1日の気温の変化には関係があると考えられるね。

⑦結論を出す


1日の気温は昼に高く、朝や夕方に低いことが多い。晴れの日の気温の変わり方は大きく、太陽が雲でさえぎられるくもりの日や雨の日の気温のかわり方は小さい。

⑧振り返る

地面の温度と同じように、空気の温度も太陽と関係があったんだね。


振り返りの時間や単元の最後などで、自記温度計の記録を見て、夜間の気温の変化についても確認できるようにするとよいでしょう。太陽と気温の変化の関係についての理解が深まることにつながります。また、自記温度計の記録を見て、その日の天気を考える活動も取り入れましょう。天気を当てることが目的ではなく、グラフの形と天気の関係、気温の差、最高気温などに着目した話し合いができるように指導しましょう。

記録していない夜間の気温は、どのように変化しているのかな。

自記温度計の記録を見ると、夜間の気温の変化もわかりますよ。

安全指導

実験にあたっては、温度計の管理について、次のことを確実に指導するようにしましょう。

●割れやすいため、丁寧に扱う。
●机などにそのまま置いておくと、落ちて割れることがあるため、使わないときはケースに入れる。
●割れてしまった場合は、ガラスや液に触らない。

その他のポイント

1日の気温の変化の様子を調べる際には、グラフを用いて表したり、変化の特徴を読み取ったりすることで、算数科の学習との関連を図るようにしましょう。

イラスト/難波孝

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