小6特別活動「お世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えよう」指導アイデア

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【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
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帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小6特別活動「お世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えよう」指導アイデア
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前文部科学省視学官監修による、小6特別活動の指導アイデアです。2月は、<学級活動⑴「お世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えよう」>を紹介します。
卒業まであと2か月。6年間の集大成とも言える大切な時期です。6年間の学校生活の中でたくさんの人と関わり、成長できたことを実感し、卒業を迎えたいものです。今回は、<学級活動⑴「お世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えよう」>の実践を紹介します。

執筆/熊本県公立小学校教諭・杉本 朗 
監修/前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授・安部恭子
 尚絅大学教授・平野 修

年間執筆計画

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4月 学級活動⑴ 6年生スタート集会をしよう
5月 学級活動⑴ 学級の歌をつくろう
6月 学級活動⑵ ウ 情報通信端末の使い方を見直そう
7・8月 学級活動⑶ ウ 家庭学習をアップデートしよう
9月 学級活動⑵ イ 友達のよい相談相手になろう
10月 学級活動⑴ 係活動発表会をしよう
11月 学級活動⑴ 学級チャレンジ会をしよう
12月 学級活動⑴ 卒業文集をつくろう
1月 学級活動⑶ ア 中学校に向けてアップデート
2月 学級活動⑴ お世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えよう

事前の活動

<議題の選定>
6年生の3学期の家庭科の授業では、家族や地域の一員としての関わりを考える単元が設定されています。今回の学級会の議題は、その授業を通して、これまでお世話になった様々な人に感謝の気持ちを伝えたいという子供の思いから議題案が出され、学級全員で決定した議題です。
「感謝の気持ちを伝える会をしよう」のように、集会の形で行う場合には、集会を行う日時や場所を明確にして話し合いましょう。
話合いを通して、家族や地域と自分のつながりを考えていくこととは、卒業に向けての意識を高め、自分の成長を感じ取ることにもつながっていくものと考えられます。

家庭科の学習で、小学校生活6年間でたくさんの人と関わってきたことを学んだね。

これまでの学校生活で、いろいろな人にお世話になったね。

お世話になった方々に感謝の気持ちを伝えたいな。

お世話になった方々というのは、誰がいますか?

家の人もそうだけれど、学校の先生方や地域の方々にたくさんお世話になりました。

1〜5年生も学校生活の中でたくさん支えてもらったよ!

6年間の小学校生活を支えてくれた人たちに、感謝の気持ちを伝える企画を話し合いたいな。

<学級会ノート>

学級会ノート 記入例

<学級会活動計画>

学級会活動計画 記入例

本時の活動

話し合うこと① 感謝の気持ちを表すために何をするか

<出し合う>
お世話になった方々を保護者、先生、下級生、地域の方と明確にすることで、それぞれに合わせた意見を出し合えるようにしましょう。自分たちの気持ちを相手に分かりやすく伝え、相手に喜んでもらえるには、どのような方法がいいのか、多様な意見を出し合い、よりよい合意形成につなげましょう。

私は、地域の方々にお礼の手紙を書いて渡すといいと思います。手紙なら、あとから何回も読んでもらえて、ありがとうの気持ちがより伝わると思うからです。

ぼくは、みんなで育てたサクラソウの花を配るのもいいと思います。感謝の気持ちが伝わるだけじゃなくて、花を見るたびにぼくたちのことを思い出してもらえるからです。

家の人には、最後の授業参観のときに一人一人感謝の気持ちを伝えるというのはどうですか。

私は、これまでの感謝を手紙にして渡すのがいいと思います。

<くらべ合う>
出された意見について、提案理由や条件などをもとに、実現可能か、感謝の気持ちがより伝わるのはどれかなどをくらべ合い、どの案が「感謝の気持ちを表す企画」に適しているものかを話し合います。相手が喜んでくれるのかについても考えながら話し合います。司会は、提案理由や決まっていことを確認して、みんなから出された意見について、よりよいものはどれかくらべやすくします。黒板記録は、「家の人」「地域の人」「学校の先生方」「下級生」の小見出しの短冊をつくり、短冊を動かして出された意見を分類・整理し、分かりやすいように板書を工夫します。

地域の人には、みんなで育てたサクラソウにメッセージを添えて配るというのではどうでしょうか。メッセージを添えることで、これまでお世話になったことへの感謝の気持ちがより伝わると思います。

私は、お花のプレゼントもいいと思うけれど、枯れてしまうからメッセージのほうがいいと思います。地域の方も、メッセージなら何度も読み返せてうれしいと思うからです。

ぼくは、授業参観は最後の授業や発表を見てもらいたいので、手紙に賛成です。

だったら、卒業式の後に手紙を渡すのはどうでしょうか。感謝の気持ちがより伝わるんじゃないかと思います。

私は、担任の先生や学年の先生以外の先生方や業務主事さんにもたくさんお世話になったから、お礼の気持ちをメッセージに書いて伝えたいです。

私も今の〇〇さんの意見に賛成です。1人の人が、1人の先生や職員の方に手紙を書いて渡すのではなく、飛び出すカードみたいにして、メッセージを書いたらいいと思います。

ぼくは、1年生から5年生には、「6年生を送る会」のときに、これまで支えてくれた感謝の気持ちと、これまでの学校の伝統を大切にしてほしいなどの呼びかけをしたらいいと思います。

ぼくも、下級生には送る会で呼びかけを行うのがいいと思います。バトンを渡す感じがするからです

私は、呼びかけもいいと思うけれど、卒業したらもう一緒に遊べないから、これまでありがとうという気持ちを込めて休み時間に一緒に遊んでもっと仲を深めるのもいいと思います。放送で、何曜日の昼休みに遊ぶことを伝えたらどうでしょう。

<まとめる>
司会が出された意見を、理由をもとにまとめていきます。

(司会)それでは、これまで出された意見から、地域の方にはメッセージカード、学校の先生方には飛び出すカード、家の人には手紙を書く、下級生とは各学年と休み時間に遊ぶに決めていいですか?

決まったことを確認して、次の「話し合うこと②」につなげます。

※学年で取り組む場合
感謝の気持ちを伝えるための会については、学級単独に行うのではなく、必ず事前に学年会などで伝え、了解を得たり、共通理解を図っておいたりするようにします。
今回のような企画は、学年単位で取り組むことも考えられます。学年で取り組むことによって活動の幅が広がり、より主体的な活動が期待できます。例えば、地域の方々に感謝の気持ちを伝える会を開く、全校児童が一斉に参加する会を企画するなどのことが考えられます。
その場合は、各学級でアイデアを募った後、各学級の代表で集まって話し合ったり、学年会で話し合ったりして企画を決定しましょう。

話し合うこと② 役割分担をしよう

※今回の役割分担は、「各企画を中心となって計画する」係を決めます。係は全員が分担し、それぞれの係が中心になって、各企画について話し合って決めていきます。

役割分担の際は、自分のやりたいこと、自分のよさが生かされる係を考えて選ぶことを意識させます。また、1つの係に多くの人が集まった場合には、再度考えたり、話合いを行ったりして、自分たちで解決策を見いだすようにすることも大切なことです。
また、学級会は集団で行うことに意味があります。必要な人数について考えて分担し、担当が1人になったり、活動するには少ない人数になったりしないようにすることも大切です。「学級全員で分担した仕事を協力してやり遂げる」経験が、自己有用感の向上やキャリア形成につながっていきます。

<役割分担のポイント>
まずは、自分自身が得意なことや活躍できそうなものを選ぶことができるように声掛けをしましょう。また、役割分担は、互いのよさを見付け合ったり、集団としての役割を自覚したりする大切な場となります。前向きな言葉掛けをするなど、適切な支援をしましょう。

ぼくはどの企画に関わろうかな。難しくて選べないな……。

〇〇さんが悩んでいるようだけど、〇〇さんはどの企画だったら、活躍できると思う?

〇〇さんは工作が得意だよね! 先生への感謝グループに来てくれると、きっとすてきな飛び出すメッセージカードが作れると思う!
ぜひ、感謝グループに来てほしいな。一緒にやろうよ!

※今回は、話し合うこと②で役割分担を行い、各企画の担当に分かれて詳細について話し合う形にしましたが、話し合うこと②で「感謝の気持ちが伝わる工夫」について学級全員で出し合い、それらを参考にして各企画の係ごとに内容や工夫を話し合って決めるやり方も考えられます。

板書計画

板書例

見通しをもって進めるためのポイント

<カレンダーの掲示>
見通しをもって準備を進めるために、カレンダーを用意しましょう。係ごとに活動の予定を書き込むことで、計画的に準備を進めることができます。掲示をする際は、子供たちの目につきやすい場所にすると、日頃から意識して活動することができます。

係ごとに活動の予定を書き込んだカレンダー

<時間の確保>
休み時間だけでは、集まって話し合ったり、準備をしたりすることが難しくなります。そんなときは、3週間を卒業プロジェクトウィークと名付け、朝の会の5分間や朝自習の時間を準備の時間に充てるなど、時間を確保することで円滑に進めることができます。

<企画報告会>
企画の内容が決まったら、一度帰りの会などで報告し合います。どんな内容なのか、みんなに何をしてほしいのかなどを発表することで、共通理解が図れます。また、お互いにアドバイスをし合うことで、よりよい内容の企画が考えられ、学級全体で準備を進めるという意識を高めることができます。

事後の活動

企画の係ごとに協力して準備を行い、実践します。
地域の方への花とメッセージのプレゼントと学校の先生方へのメッセージカードについては、3月〇日の5時間目、というように、いつ渡すのかを明確にしておくことが大切です。
下級生との遊びについては事前に下学年の担任の先生と打ち合わせを行い、〇日から〇日の1週間を交流遊びの期間として放送やポスターで知らせるなどしましょう。
また、職員会議などで全教職員に6年生の活動について知らせ、共通理解を図っておくことも大切です。

<活動の振り返り>
実践後の振り返りは、子供たちが成長を感じたり、次の活動につなげたりするための大切な時間です。事前の準備から事後の活動までを振り返ります。自分の頑張りや友達のよさだけでなく、課題があった場合は、今後の学校生活に生かせるようにします。

振り返りの様子

構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝


安部恭子

監修
安部 恭子
前文部科学省視学官 帝京大学教育学部教授
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと カバー

楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと

特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!

楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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