小4国語「風船でうちゅうへ」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、「風船でうちゅうへ」です。本単元では、「要約をもとに、教材文を紹介する文章を書き、紹介し合う」が学習活動になります。そのため、本時では、要約するため筆者がいろいろな工夫をして成功するまで行ったことや考えたことを正しく理解するために役立つ板書の工夫を紹介します。

監修/元京都女子大学教授
 元同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子  

 

単元名:きょうみをもったことを中心に、しょうかいしよう
教材名:「風船でうちゅうへ」(光村図書出版)

単元の計画(全8時間)

  1. 学習の見通しをもつ。
  2. 文章の大体をつかみ、興味をもったことをはっきりさせる。
  3. 興味をもったことにそって、大事な言葉や文を書き出して、要約する。
  4. (※と同様)
  5. (※と同様)
  6. 要約をもとに、教材文を紹介する文章を書く。
  7. 書いた紹介文を読み合う。
  8. 学習を振り返る。

板書の基本

〇教材を一読した後、私は、「うちゅうと青い地球」という1枚の写真に驚きました。その写真は「カメラを付けた風船を使ってです。」と書かれてあったからです。何かの仕掛けがあって写したということは理解できます。しかし、風船を使って写したというところに驚きました。さらに、その動機がアメリカの大学生のニュースからということにも驚きました。この驚きを要約文としてまとめ、紹介しようという学習活動の導きは、授業をイメージする段階でわくわくして心が躍りました。

〇要約するためには、全体と部分をしっかりと捉えておくことが必要になります。はじめの感想においては、部分的なものであったり、全体的な印象であったりします。それを整理しながら、自分の感想がどの位置にあるかということを自覚させることが大切であると考えました。大事にしたことは、次のような板書です。

①挑戦の過程が分かる板書。
②筆者が風船の数を増やしたり、付け方を工夫したりして成功するまでに行ったことや考えたことを正しく理解することに役立つ板書。
③要約して、紹介の文を書くときに役立つ板書。

板書のコツ(2/8時間目前半)

小4国語「風船でうちゅうへ」京女式板書の技術 2/8時間目前半の板書
2/8時間目前半の板書

板書のコツ①

日付、題名を板書します。めあて「筆者のちょうせんをまとめよう。」と、学習内容の補足をします。興味をもったことは、それぞれに違うところもあり、同じところもあることを共通理解します。続いて、「わたしのちょうせんは始まりました。」の文を確認します。

挑戦の始まりが、「二か月後の十月、一号機が完成しました。」の文と図❷から一号機のことを確かめた後、「④一号機」と板書し、図❷を貼ります。続いて、「二〇一二年十月、十六号機で、ついにあざやかな景色をたくさんさつえいできました。」の文章を根拠にして、黒板の左端に「⑯十六号機」と板書しました。一号機と十六号機の間は空白になります。

板書のコツ②

空白の部分に何を書くかを確認しながら、「⑥二号機」と板書します。続いて、空白が、三号機、四号機と続くことを確認しながら、全体が見通せるように板書にしました。図❸と図❹は違いが分かるように黒板に貼ります(〇数字は段落番号)。

板書のコツ(2/8時間目中盤)

小4国語「風船でうちゅうへ」京女式板書の技術 2/8時間目中盤の板書
2/8時間目中盤の板書

板書のコツ①

1人学習の時間を設け、「何について書かれた文章であるか」を整理するよう指導しました。整理する視点としては、それぞれの実験の特徴と結果をまとめ、自分が興味をもった言葉に着目させ、思ったことや感じたこともメモするように指導しました。

板書のコツ②

1人学習でまとめたことをクラス全体で共有する時間を設けました。
視覚的に事実(実験の特徴)と結果を捉えられるようにするために、黒板の下方に右から左へ線を引きました。

板書のコツ③

それぞれの実験で子供が発言した大事な言葉を板書しています。一号機では、図❷を生かしながら、子供の発表の中から一号機の特徴を「カメラ」「二十五個の風船」「ひも」「地上をつなぐ」を上段に板書しました。下段には、結果を「ゆれたえいぞう」「風船どうしのぶつかり」を板書しました。一号機の結果を子供に問いかけ、「失敗」と赤チョークで板書しました。

二号機の特徴として、「少し大きな風船」「一個だけ」「風が強い日」を上段に板書しています。二号機の結果として、「ひもがほどける」「カメラ回収できず」を下段に板書しました。結果を問いかける前に、子供から「失敗」という声が聞かれたので、赤チョークで「失敗」と板書しました。

四号機、五号機についても、同じように改善したことや失敗に関わる言葉を板書し、挑戦が続いていることが見通せるよう板書にしました。この段階で「どんなことに興味をもったか」「どのように書かれていたか」という「問い」と「論拠」を黒板に整理していることの理解を促しました。

板書のコツ(2/8時間目後半)

小4国語「風船でうちゅうへ」京女式板書の技術 2/8時間目後半の板書
2/8時間目後半の板書

板書のコツ①

学習の見通しを立てたときに、要約することに苦手意識をもつ子供がいました。そこで、自分が興味をもった事柄について発表し、共有し合うことを通して、要約に興味をもたせました。指導した手順は次の通りです。

〇「一号機では二十五個の風船を使っていたけれども、実験の結果から二号機では一個だけになっていました。一号機の失敗を生かしていると思いました。」という子供の発言を受けて、「二十五個」に黄色チョークで波線を引き、「一個だけ」を丸で囲みました。さらに、「失敗をいかす」と板書し、赤チョークを用いて雲形で囲み、子供の発言を板書に生かしました。
〇三号機の実験の特徴は、「改良」「弱い日」とまとめて子供の発言を受けて、黄色チョークを用いて、丸で囲みました。さらに、「ひもをつけると高くは飛べないという」新たな課題が生まれたことを書き加えました。
〇四号機では、筆者の気持ちに関わる発表を受けて、「絶望」から「ちょうせん」と板書しました。五号機からは自分で考えさせました。

板書のコツ②

一号機の実験開始から十六号機の実験成功までの丸1年間の筆者の挑戦について、子供たちに考えさせました。「続けることの大切さ」「あきらめない心」という発言を受けて、黒板の左端に板書し、赤チョークで囲みました。このときの「あきらめない」は、素朴な発言ですが、教材研究の段階で、「しょうかいする文章の例」として使われていることを知り、語彙を広げることも意図して板書しています。

 

構成/浅原孝子

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