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初めての学級開き ここを押さえればうまくいく!|新任教師のための学級経営講座 #1

元鳥取県公立小学校教頭

友定章子

初めて学級担任になった新任教師にとって、「学級経営」は不安なもの。そこで、学級経営の基本が学べる連載をお届けします。毎月の準備や進め方などをその月の学校行事なども絡めながら紹介。鳥取県の公立小学校で、若手教師の育成に尽力してきた友定章子先生が、新任教師でも分かりやすいように解説します。

執筆/元鳥取県公立小学校教頭・友定章子

はじめに

初めて学校現場に出ることになった先生方、おめでとうございます。また、新しい学校、学級担任になった先生方、いよいよ新学期のスタートですね。先生の新学期は、新しい子供たちとの出会い、どんな毎日が始まるのか、ワクワクする反面、たくさん不安がありますよね。それは、どんなベテランの先生でも感じる不安です。だから“No Problem”です。見通しをもって、前もって準備できればきっと乗り越えることができます。この連載でそのお手伝いができれば幸いです。

不安1:初めて学校に着任するにあたって

辞令交付式や始業式、入学式での新任教師のふさわしい服装

どんな服装で行けばいい?

4月1日は、県教委や地教委での辞令交付があります。紺や黒などのスーツで行きましょう。その後の始業式もスーツがよいでしょう。そして、入学式もスーツがおすすめです。不安な時は、学校の先生方に事前に確認しましょう。

何時ごろに行けばいい?  

余裕をもって指定された時間の30分ぐらい前に到着するようにしましょう。道順は、前もって確認しておきます。自家用車で来校する場合は、事前に確認が必要です。公共交通機関を勧められることもあります。

何を持って行けばいい?   

バッグは、A4の辞令が入るサイズのものがよいでしょう。筆記用具、赴任先の学校で履く上靴、配付される資料を入れておくファイルやメモができるノートなど。事務手続きに印鑑が必要になる場合があります。前もって確認をしておきましょう。

初めての学校、初日は何をすればいい?

通勤手続きや住居届、金融機関の登録等、事務手続きをすることが多いです。学年の先生との打ち合わせや担任する子供たちの名簿も確認します。

それが終われば、学校を探検してみましょう。教室の配置や特別教室、トイレや手洗い場、もちろん担任する教室もチェックします。非常階段も確認しておきましょう。

職員室の先生方の名前と席をメモしておくと後々便利です。事務の先生には、提出しなくてはならない書類の締め切りを確認しましょう。

不安2:先生方とうまくやっていけるかな

初めての職員会

校長先生から学校経営のビジョンを伝えられ、学校の組織や校務分掌、学級担任の発表があります。その後、提案事項の協議、共通理解するべきことが確認されます。初めての学校では、何が何やら口をはさむこともできないうちに進行していく印象です。これは、ある程度経験を積まれた先生でも転勤するたび、同じです。

学校ごとに給食のやり方や掃除の仕方、避難の仕方についてきちんと頭に入れておく必要があります。職員会で先生たちの発言を聞いていると、先生ごとの得意なこと、学校の中の人間関係が垣間見えることもありますので、少しずつ頭に入れましょう。

初めての校務分掌

校務分掌とは、学校の組織の中での役割分担です。学校の規模によって違いはありますが、主任や副主任等があります。教科の担当や学校運営の担当が決まっているはずです。

担当になった校務分掌について、何をすればよいか、分からないことは誰に聞けばよいかを確認しましょう。それに伴って、4月の内に提出する文書もあります。学校に提出するものだけでなく、学校の代表として教育委員会に提出するものもあります。文書作成や内容等について、前任者の先生に事前に話を聞いておくとよいでしょう。

「チーム学校」の一員として(報・連・相を大切に

学級担任として自分の学級のことは、自分で何とかしなければならないという気持ちになりがちです。でも、それは違います。学校は組織で動いています。だから、学級の問題は、学校の問題なのです。

つまり、学級の中の状況を学校全体の情報として伝えておくことが大事です。かといって、全ての状況を伝えることは難しいものです。では、「何を伝えるの?」「どういうことが報告?」「相談すべきことって何?」と思いますよね。

学年主任や教務主任、養護教諭、特別支援コーディネーターと情報を共有したり(報告)、相談したりすべきなのは、次のような内容です。ポイントは、困っていることだけでなく、よいことも伝えておくことです。

・欠席(日数、理由、連絡状況)、遅刻の多い子供の状況
・保護者から連絡があった場合(電話、連絡帳等)
・学習に集中できない子、じっとできない子、切り替えが難しい子等
・がんばっている子(授業、家庭学習、掃除、当番や委員会の活動等)
・気になる子(服装が同じ、暗い表情、投げやりな態度、ケンカ、忘れ物が多い等)
・授業(学習やテストの進度、授業の進め方や板書等)で悩んでいるときはどんどん相談

不安3:子供たちとうまくやっていけるかな

どんなに経験を積んでいても、初めて学級の子供たちと顔を合わせるときは緊張します。今度担任をする子供たちはどんな子供たちだろう、どんな化学反応をするだろう、3月には「このクラスでよかった」と思いたい……。

では、まず何をすべきでしょうか。4月は、学級の基盤づくりの時期です。基礎ができていないとその上に建物は建ちません。基礎が不安定だとせっかく建てた建物はわずかな振動で崩れてしまいます。だからこそ、4月にしっかりとした基盤づくりをしておくことが大切になります。学級開きが大事だと言われるゆえんです。

子供たちと会うまでにしておくこと

まずは、学級の子供たちの名前を読めるようにしておきます。難しい読み方も多いので、間違いのないようにしっかり確認しておきます。次に、学級名簿、ロッカーや机、椅子に貼る名前シールを作成しておきましょう。また、個人情報の確認(健康、家庭環境、昨年までの成績や個別支援等)も必須です。

それから、教室の掲示物(当番表、給食当番表、掃除当番表)や子供たちへの配付物(教科書やドリル、テスト等の副教材、お手紙)の整理をしましょう。

教室の整理整頓も忘れずに。荒れた学級の教室は、特に黒板周りが汚れていて、整理整頓できていないことが多いもの。子供たちが気持ちのよいスタートを切るためにも、引き継いだ教室が汚れていたときは、掃除しましょう。

始業式で子供と初対面

始業式の前に、全校児童の前での着任式があり、校長先生からの担任発表を終えて、教室で子供たちと対面します。ドキドキしますね。でも、子供たちも「どんな先生だろう」「私のこと見てくれるかな?」などと、それ以上にドキドキ、ワクワクしています。

始業式の後の学級の時間は短く、お互いに自己紹介するだけで時間が終わります。私は、どんなクラスにしたいかを考えてくることを宿題にしていました。

学級開き(もっとも大切な3日間)

入学式の次の日からの3日間がもっとも大切です。この3日間にどんな学級をつくるか、子供と一緒に考えることが大事です。決して押し付けるのではなく、子供たちと納得するまで話し合い、みんなで折り合いをつける、ベクトルをそろえていく時間です。

この間、「授業ができないのでは?」と思われるかもしれませんが、よい学級づくりができれば授業は進みます。話し合ったことは、視覚化して子供と共有しましょう。

○どんな学級にしたいか、学級目標を決める

どんな学級にしたいか、年度末の3月にはどんな姿になっていたいかをイメージして、学級の目標を考えます。宿題にしてキーワードを集めて、それをもとに考えていくとよいでしょう。

○学級のルールを決める

子供たちと一緒に、学級のルールをつくります。「去年は〇〇だった」や「あの先生は〇〇だったのに」と言ってくる子供もいますが、これから始まる学級のルールをみんなでつくり直すことが大切です。

私は、「約束や時間等の当たり前のことを当たり前にやろう」「相手の気持ちを考えて行動しよう」「素直に謝ろう」をルールにしていました。

○お互いのよさを認めい、補い合うチームをつくる

お互いのよさを認め合い、補い合う学級の仲間であることを意識させましょう。

子供たちは、例えば、サッカーがうまい、算数が得意で計算が速い、本をたくさん読んでいて物知りなど、お互いのよさには着目しやすいもの。一方で、漢字をよく間違える、空気が読めない、勝手なことを話し出すなど、できないことを馬鹿にしたり揶揄して笑ったりすることもあります。

子供たちにとってイメージのしやすいスポーツのチームワークを取り上げて説明するのもおすすめです。お互いのよさを認め合い、補い合うチームこそが素晴らしいパフォーマンスや実力を発揮できると伝えます。

○1年間の見通しを立てる

1年間の見通しを立てることも大事です。4月に、学校行事や学年ごとの行事等、どんな楽しいことが待っているか、子供たちと確認します。学級の友達の誕生日も一緒に確認して、給食の時にお祝いしてあげるのもよいでしょう。

○授業の進め方を共有する

授業をする女性教師

学習の進め方を伝えます。ノートの書き方、発言の仕方、分からない時の伝え方等、学校生活の大半が授業です。つまり、授業づくりが学級づくりの根幹だと言えるでしょう。

小学校の先生は、たくさんの教科を教えなくてはなりませんが、知識や技能を伝えるだけでなく、子供たちの成長をサポートし、どうすれば伸びるのかコーディネートする役です。もちろん、各教科の指導書も確認しておきます。

不安4:保護者とうまくやっていけるかな

保護者は子供の話やノートを根拠に担任を判断する

新しい学級担任がどんな先生なのか、保護者にとって大事な関心事です。その情報源は子供たちです。子供たちの感じた先生の印象、日ごろの連絡帳やノート、宿題をどう評価しているか、先生の対応の仕方で判断しています。

必ずしも事実だけではなく、子供たちの感情を伴った情報なのです。しかし、伝わった時点で、保護者にはそれらがすべて事実として認知されます。それならば、先手を打って、正しい情報を学級通信として提供するのも一つの手段です。

学級の保護者はSNSでつながっている

今の時代、保護者はLINE等のSNSでつながっているため、学校の話はすぐに保護者の間で共有されます。自分の子供だけでなく、他の子に対する対応も共有されています。誠実に対応しましょう。

授業参観は恐れることなく堂々とする

授業参観。子供たちが挙手をし、保護者は笑顔で参観。

4月の授業参観日は、保護者にとって担任の先生を知るチャンス。どんな表情や態度で子供たちに接しているのか、授業の進め方はどうなのか、圧が強めの視線を感じると思いますが、堂々としましょう。自分のよさをアピールしながら、子供たち全員が笑顔で取り組めるような授業にしましょう。


友定章子

友定 章子 
長年、小学校教員(講師、教諭、教頭)として鳥取県の学校現場で勤務。2010年、鳥取県エキスパート教員(算数科)任命。2022年、広島大学大学院に進学、算数の授業を通して教員養成の在り方について研究。2024年、教育学の学位を取得。算数のエキスパート教員として先生方に授業を公開しながら算数の授業改善を目指す。若い先生方の力になりたいと学校心理士の資格を取得する。『初等教育資料』(東洋館出版社)等に執筆。

イラスト/イラストAC

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