小6国語科「考える」とは 板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小6国語科「考える」とは(光村図書)の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/福岡教育大学附属福岡小学校教頭・大村拓也
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめること(読むこと)に関する力を育てていきます。具体的には、複数の説明的な文章を読み、それぞれの内容を関連付け、「考えるとは何か」というテーマについて自分の考えをまとめること(考えの形成)ができることをねらいます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、「『考えるとは何か』というテーマについて、複数の説明的な文章を読み、理解した内容に基づいて自分の考えをまとめる活動」を言語活動として設定します。「考えるとは何か」という抽象的なテーマについて自分の考えをもつためには、「考えること」について書かれた文章から筆者の主張を捉え、これまでの自分の経験と結び付ける必要があります。
さらに、「考えること」をテーマにした文章を複数読み、内容を関連付けたり、友達と互いの考えの違いを共有したりすることで、文章を読んで理解したことに基づいて自分の考えをまとめるという、読むことの考えの形成に関する資質・能力を発揮することができると考えます。
4. 指導のアイデア
〈対話的な学び〉 文章と対話する~文章を読む順序と視点に注目して~
対話的な学びは、友達との対話だけではありません。本単元のように、あるテーマについて自分の経験と結び付けて考える、筆者の考えに納得したり賛否を感じたりしながら読み進めるといった「文章との対話」も対話的な学びの一つです。
文章との対話を促すために教師の役割として大切なことは、「文章を提示する順序を工夫すること」「読む視点を与えること」「児童が文章を読んで理解することや考えることを想定すること」だと考えます。本単元では、「考えるとは何か」をテーマに三つの文章が並べられています。以下の文章提示順、読む視点、理解することや考えることの想定を基に、6.単元の展開をご参照ください。
このように、教科書の提示順通りに、毎時一つずつ教材文を提示し、自分の経験や文章を読んで理解したことを付加しながら読み進めていきます。そうすることで、抽象的であった「考えるとは何か」というテーマについて少しずつ自分の考えを明確化することができるでしょう。
例えば、鴻上さんの文章であれば「具体化して行動することが考えることなのだな」といったことに気付くことができます。そして、「具体化して行動することの大切さ」を理解したからこそ、次に石黒さんの「考えることを考え続ける」を読んだときに、具体化に加えて「細分化することの大切さ」を理解しやすくなるでしょう。
さらに中満さんの「考える人の行動が世界を変える」を読めば、「批判的に思考することの大切さ」を知ることができます。このように、教材文の提示の順序を工夫することによって、児童は無理なく段階的に「考えるとは何か」について自分の考えをまとめていくことができます。
この他の手立てとして、三つの教材文を順序立てて提示するのではなく、児童が順序を選んで、自分なりに考えをまとめていく展開も考えられます。
しかし、文章を選んだ理由が曖昧なままに読み進める可能性がある、一人一人が読むタイミングが異なるため、共通の土台に乗った対話がしにくい、といった課題が考えられます。
自分で教材文を選ぶ活動に取り組むならば、資質・能力が効果的に育まれるように、文章を選んだ理由を簡単にまとめた上で読むように声をかけたり、選んだ教材が同じ児童によるグルーピングを行い、根拠の叙述に基づく対話を行う場面を設定したりするなどの支援を行うとよいでしょう。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)「座席表型URL置き場」で考えを共有する
5時間目には、「考えるとは何か」について友達と考えを共有する活動を設定しています。
この際、1~4時間目までにまとめた自分の考え(「考えるとは何か」について考えと根拠をスライドにまとめたもの)をアップしたURLを、「座席表型URL置き場」のそれぞれの名前のところに添付します。
この「座席表型URL置き場」の特徴は、各座席表の箱の色を意図的に3色に分けることで、児童がどの筆者の考えを中心に自分の考えをまとめているかを、一目で分かるようにできることです(例えば桃色⇒鴻上さん、水色⇒石黒さん、クリーム色⇒中満さん等)。
そうすることで、例えば「鴻上さんの考えに影響を受けたAさんのURLからスライド内の考えを読んで根拠を増やそう」などと考えを深める姿や、「私は、石黒さんの考えを中心に『考えるとは何か』について考えをまとめたけれど、中満さんを中心にまとめているBさんはどのような考えをもっているのかな」などと、考えを広げる姿につながると考えます。
意図をもって互いの考えを読み合う環境を端末上につくることで、児童は「考えるとは何か」について、自分の考えを新たにもったり問い直したりすることができるでしょう。
座席表型URL置き場(スプレッドシート等で共有)
6. 単元の展開(6時間扱い)
単元名: 考えるとは何か~三つの文章を読んで、自分の考えをまとめよう~
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① これまでの経験を基に「考えるとは何か」について、自分の考えを出し合う。
・第二次(2時、3時、4時、5時)
②「考えることとなやむこと」を読み、鴻上さんの主張と自分の考えとを比較し、「考えるとは何か」について、新たにもった考えを書く。
③「考えることを考え続ける」を読み、石黒さんの主張と自分の考えとを比較し、新たにもった考えを書く。
④ 二人の筆者(鴻上さんと石黒さん)の主張を基にした自分の考えと、「考える人の行動が世界を変える」における中満さんの主張とを比較し、新たにもった考えを書く。
⑤「考えるとは何か」について考えたことを友達と共有する。〈端末活用〉
・第三次(6時)
⑥「考えるとは何か」について最終的な自分の考えをまとめるとともに、抽象的なテーマについて考えをもち、まとめる上で大切なことは何かを話し合う。
板書例・全時間の端末活用例と指導アイデア
イラスト/横井智美