大人と子どもの権利保障はどう違う?学校における子どもの権利の保障~シリーズ「実践教育法規」~

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シリーズ「実践教育法規」
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鹿児島純心大学人間教育学部准教授

栗原真孝

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第28回は「学校における子どもの権利の保障」について。教育を受ける権利が制度上保障されていることはもちろんのこと、子どもが学校の校則に対して意見を表明する機会を確保することなども求められています。

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執筆/栗原 真孝(鹿児島純心大学人間教育学部准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#28

子どもの尊厳に基づいて人権が尊重される

日本国憲法第13条では、「すべて国民は、個人として尊重される」と定められており、大人だけではなく、子どもも個人として尊重される存在として位置づけられています。また、憲法第11条では、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と定められており、大人だけではなく、子どもも人権の享有主体として位置づけられています。人権は個人の尊厳に基づいて尊重されるため、学校においてもそれぞれの子どもの尊厳に基づいて人権が尊重されなければなりません。

その上で、憲法第26条1項に規定されている教育を受ける権利は、子どもだけの権利ではないものの、学校における子どもの権利の中で代表的な権利と言えます。教育を受ける権利は、現在は学習権を中心にして理解されています。1976年の旭川学力テスト事件の最高裁判所の判決では、「国民各自が、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる」と示されています(最高裁大法廷判決昭和51年5月21日刑事判例集30巻5号615頁)。

こうした中で、学校において体罰が発生した場合は、子どもの教育を受ける権利の保障を妨げる問題と言えます。体罰は学校教育法第11条で禁止されており、教員による体罰や不適切な指導によって、子どもの教育を受ける権利の保障が妨げられてはなりません。

校則は「生徒指導提要」の中でも触れられている

その一方で、子どもは成長途上であるため、必ずしも大人と同じように権利保障がなされるわけではありません。子どもの権利には大人とは異なる特別な制限があり、学校について考えると、一つの例として校則があります。

2022年12月に公表された「生徒指導提要(改訂版)」では、「校則は、各学校が教育基本法等に沿って教育目標を実現していく過程において、児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等を踏まえて、最終的には校長により制定されるもの」とされています。その上で、「校則は……児童生徒や保護者等の学校関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましいと考えられます。また、その見直しに当たっては、児童会・生徒会や保護者会といった場において、校則について確認したり議論したりする機会を設けるなど、絶えず積極的に見直しを行っていくことが求められ」るとし、また「校則を見直す際に児童生徒が主体的に参加し意見表明することは、学校のルールを無批判に受け入れるのではなく、自身がその根拠や影響を考え、身近な課題を自ら解決するといった教育的意義を有するものとなります」と明記されています(文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」2022年、101〜103頁)。

こうした「生徒指導提要」の方向性は、2022年6月に制定された、こども基本法の内容を踏まえたものと言えます。こども基本法は、こども施策の基本理念や基本となる事項を定め、こども施策を総合的に推進することを目的とする法律です。同法では第3条にこども施策の基本理念が6つ規定されており、第3号にこどもの意見を表明する機会が確保されること、第4号にこどもの意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることが規定されています。

こども施策の基本理念を実現し、学校における子どもの権利を保障するためには、子どもの意見表明を尊重する立場にある教師の役割が重要であると考えられます。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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