小6理科「私たちの生活と電気」指導アイデア
執筆/福岡県福岡市立香椎小学校主幹教諭・古賀隆志
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県福岡市立南片江小学校校長・酒井美佐緒
福岡県福岡市赤坂小学校教頭・今林義勝
目次
単元目標
電気の量やはたらきに着目して、それらを多面的に調べる活動を通して、発電や蓄電、電気の変換についての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①電気は、つくりだしたり蓄えたりすることができることを理解している。
②電気は、光、音、熱、運動などに変換することができることを理解している。
③身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があることを理解している。
④電気の性質や働きについて、観察、実験などの目的に応じて器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。
思考・判断・表現
①電気の性質やはたらきについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現している。
②電気の性質やはたらきについて、観察、実験などを行い、電気の量とはたらきとの関係、発電や蓄電、電気の変換についてより妥当な考えをつくりだし、表現している。
主体的に学習に取り組む態度
①電気の性質やはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②電気の性質やはたらきについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 10時間
第1次 つくる電気・ためる電気
1 身の回りで使われている電気について、気付いたことを話し合う活動を通して、学習問題をつくる。
思考・判断・表現②
電気の性質やはたらきについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現している。〈発言分析・記述分析〉
2 電気をつくることができるのか調べる。
知識・技能①
電気は、つくりだしたり蓄えたりすることができることを理解している。〈行動観察・記述分析〉
思考・判断・表現①
電気の性質やはたらきについて、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現している。〈発言分析・記述分析〉
3 電気をためることができるのか調べる。
知識・技能①
電気は、つくりだしたり蓄えたりすることができることを理解している。〈行動観察・記述分析〉
思考・判断・表現②
電気の性質やはたらきについて、観察、実験などを行い、電気の量とはたらきとの関係、発電や蓄電、電気の変換についてより妥当な考えをつくりだし、表現している。〈発言分析・記述分析〉
第2次 身の回りの電気の利用
4 電気はどのようなものに変わる性質があるのかいろいろな方法で調べる。
知識・技能②
電気は、光、音、熱、運動などに変換することができることを理解している。〈行動観察・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
電気の性質やはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析〉
第3次 使う電気の量とはたらき
5 豆電球と発光ダイオードの明かりのついている時間について条件を整えて調べる。
知識・技能④
電気の性質やはたらきについて、観察、実験などの目的に応じて器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記述分析〉
思考・判断・表現②
電気の性質やはたらきについて、観察、実験などを行い、電気の量とはたらきとの関係、発電や蓄電、電気の変換についてより妥当な考えをつくりだし、表現している。〈発言分析・記述分析〉
6 プログラミング機器を利用してプログラミングを体験したり、センサーなどを使って電気を利用した道具を動作させたりする体験活動をする。
知識・技能③
身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
電気の性質やはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析〉
7~8 効率のよい電気の使い方を考え、プログラミング機器やセンサーなどを利用して調べる。(授業の詳細)
主体的に学習に取り組む態度②
てこの規則性について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
9 発電や蓄電、電気の変換を利用したものづくりをする。
主体的に学習に取り組む態度①
電気の性質やはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析〉
10 学習のまとめをする。
主体的に学習に取り組む態度②
てこの規則性について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細
第3次 使う電気の量とはたらき
7~8 効率のよい電気の使い方を考え、プログラミング機器やセンサーなどを利用して調べる。
電気の性質やはたらきについて、学んだことを学習や生活に生かそうとすることができる。
MESHを用いる場合、前時では実際に扱いながら、ブロックの種類やペアリングの仕方、基本的なプログラムの作成方法を教えましょう。ボタンブロックや明るさブロックを使って基本的なレシピを作成して、発光ダイオードを点灯させたり、消灯させたりする活動(基本のレシピ①,②)を行います。可能であれば、コンデンサ内の電気がすべて放出されて、明かりが消えてしまうような場を設定しましょう。そうすることで、実際に身の回りのプログラミングに目を向けたときに、もっと工夫をして、より効率的に電気を使用することの必要感に子どもは気付きます。
①問題を見いだす
前回は、MESHの明るさセンサーをつかって、明かりをつけるプログラミングを行いましたね。
簡単なプログラミングで明かりがついたよ。
つけっぱなしにしておくと、蓄電した電気はすぐになくなってしまったね。
自分でオンとオフを切り替えるんじゃなくて、自動で切り替わるようにしたいな。
中では、どのようにプログラミングされていると思いますか。
信号機とか自動ドアとか……。
体育館の入り口は夜になると、人間を感知して、人間が通るときだけ勝手に明かりがつくよ。
人がいるときだけ自動で風が出る扇風機みたいなのを見たことがあるよ。
効率よく電気が使われているということですか。
私たちも効率よく電気を使うことができるようにプログラムを考えたいね。
電気を効率よく使うには、どのようなプログラムをつくればよいのだろうか。
②予想する
例えば、自動ドアはどんなプログラムが組まれていると思いますか。
人がきたり、ドアにさわったりしたら、ドアがあくようなプログラムかな。
信号機という意見もでていましたね。
そもそも色が変わる時間がプログラムされているけど、うちの近くには、感応式といって車を感知したら信号が変わるのがあるよ。あれもプログラミングだと思う。
電気を効率的に利用するためにどんな工夫があると思いますか。
人を感知するセンサーがあって、反応があるとドアが開いたり、明かりがついたりするんじゃないかな。
例えば、電灯であれば、明かりがつくときと、消えるときの条件が細かく設定されているんだと思うな。
では、グループに分かれて、もう少し詳しくプログラムを考えてみましょう。
③解決方法を考える
子どもたちから出た意見をもとにプログラミングするものを整理する。そして、興味関心のあるものを子どもが選択して取り組むことができるようにする。
課題例
A:感応式信号機 B:自動ドア C:人感ライト D:人感扇風機
では、どのようなプログラムを作成すればよいかグループで考えてみましょう。MESHを用いる場合は、扱う前にホワイトボードでプログラムの設計図を作成してみてください。
私たちは、人感ライトのプログラムだから、人感ブロックが使えそうね。
人の動きを感知したら明かりがついて、人の動きを感知しなくなったら明かりが消え るように設定しよう。
この設計図では、昼間も人を感知したら明かりがつきますね。
明るくなったら、電灯をつける必要がないので、オフにしないとね。明るさブロックで判断できるようにしたらどうかな。
この前よりも、オンとオフの条件が複雑になるね。
一律に人感ライトのプログラミングを行うのではなく、これまで学習した内容と自分の生活と結びつけながら、興味・関心のあるもののプログラミングを行うことができるよう、課題を整理したり実験器具を準備したりして活動をしくみましょう。そうすることで、活動欲求が高まるうえ、個別最適な学びの具現化にもつながります。そして、選択したものが同じ子ども同士の4人程度で小グループを組み、協働的に問題解決できるように学習集団を構成するとよいでしょう。
MESHをどのように使えば、自分たちの考えたプログラムが実現するのか、ホワイトボードとMESHに見立てたカードを使って、グループで話し合い、プログラムの設計図を作成する。その際に、「センサーをどのように使えばよいのか」「電気を効率的に使うにはどんなプログラムを作ればよいのか」といったアイデアを出し合うだけではなく、順序立てて、論理的に考えることができるように助言を行うようにしましょう。
④観察・実験を行う
ホワイトボード上で自分たちのプログラムの設計図ができたら、MESHを使って実際にプログラムをつくる。
では、実際にMESHを使って、プログラミングを行いましょう。プログラムができたら、実際に回路が動くかを確かめてみましょう。
●レシピ例(感応式信号機)
車を感知したら、数秒後に、信号が切り替わる。
●レシピ例(自動ドア)
人を感知したら、あるいはドアに触れたら、モーターが作動して、ドアがあく。
●レシピ例(人感ライト)
人を感知したら、周囲の明るさを確認。暗い場合は、照明をつける。
●レシピ例(人感扇風機)
基本的には、GPIOブロックが作動するように、コンデンサーとプログラミングスイッチを導線で結び、回路を作れば、実験を行うことができます。また、GPIOブロックに直結できるワイヤ付きのモーターやLDEを使うと、回路をつくる手間が省けるので、手軽にプログラミングやものづくりを行うことができます。
以下、本実践で使用したブロックや実験器具です。
A:感応式信号機グループ
主な準備物:プログラミングスイッチ、GPIOブロック、ボタンブロック、人感ブロック、LEDブロック、コンデンサー、ワニ口クリップ(導線)
B:自動ドアグループ
主な準備:プログラミングスイッチ、GPIOブロック、人感ブロック、ボタンブロック、コンデンサー、モーター、ワニ口クリップ(導線)
※モーターを使用する場合は、GPIOブロックとモーターの電気仕様を確認の上、用途に合わせた適切なモーターを準備して下さい。負荷トルクによっては動かないことがあるので、注意。ジャンパワイヤ(オス)があらかじめはんだづけされているホビー用のモーターがGPIOブロックにそのまま配線できるのでおすすめです。
C:人感ライトグループ
主な準備:プログラミングスイッチ、GPIOブロック、人感ブロック、明るさブロック、コンデンサー、発光ダイオード、ワニ口クリップ(導線)
D:人感扇風機グループ
主な準備:プログラミングスイッチ、GPIOブロック、ボタンブロック、人感ブロック、温度・湿度ブロック、コンデンサー、発光ダイオード、ワニ口クリップ(導線)
⑤結果の処理
MESHで作成したプログラムを画像で撮影したり、回路が作動する様子を動画で撮影したりして、活動の過程や学習の成果を記録、蓄積する。また、実験を行うなかで、プログラムを修正した場合は、何をどのように修正したのかを記録、整理する。
⑥結果を基に考察する
課題ごとに、どんなプログラムをつくったのか全体で紹介し演示を行う。その後、プログラミングの活動を通して、考えたことを話し合う。
設計図をもとに、プログラムを作成することができましたか。
実験をしながら、うまくいかなかったところは直しながら作ることができた。
同じもののプログラミングでも、少しちがうところがあるね。
そうですね。例えば、人感ライトでは、人を感知したら、まず周囲の明るさを確認して、暗い場合は、照明をつけるプログラムを作っているグループや周囲の明るさも合わせて確認するプログラムを作っているグループなど、いくつかの種類がありますね。
どのプログラムでも、回路はうまく動いていたよ。
自動ドアグループでは、人感センサーをうまく使っていますね。
モーターが回るように、設定しているのはすごいね。
人を感知する扇風機も、温度に応じて動くようにプログラムしているのがすごい。
必要なときだけ、明かりがついたり、ものが動いたりするのは節約だね。
プログラムを作って気づいたけれど、感応式の信号機って、交通をスムーズで、効率 的に動かしているんだね。
全体でプログラムを紹介し合う際、おなじもののプログラムでも内容が異なる場合があるので、そのちがいに着目できるようにしましょう。そして、目的を達成するには、いくつかの種類のプログラムがあることを伝えて、価値付けるとよいでしょう。
⑦結論を出す
「電気を効率よく使うには、どのようなプログラムをつくればよいのだろうか」という問題に対して、プログラミングを行いましたが、どんなまとめができますか。
人を感知するセンサーや明かりを感知するセンサーなどを使ってプログラムをつくると、電気を効率的に使うことができる。
GPIOスイッチが作動するまでの時間も、どのくらいが丁度いいのか、けっこう考えました。
必要に応じて、電気を使うしくみをプログラミングすればいいね。
電気を効率的に使うためには、センサーを活用したり、時間を設定したりして、状況に応じたプログラムをつくるとよい。
⑧振り返る
はじめの設計図とできたプログラムを比べて、今日の学習を振り返りましょう。
人感ブロックと明かりブロックを組み合わせて、必要なときに明かりをつけるしくみを作ることができたよ。
設計図を作るときは、簡単にプログラムを作れるような気がしたけど、実際に、MESHでやってみると、直す部分があった。
実際の生活を具体的にイメージすると、プログラムを作ることができたよ。
効率的な電気の使用という点について考えたことはありますか。
前の実験では、蓄電した電気を短い時間で使い切ってしまったけど、今日みたいに必要なときに使うようプログラムすることで、電気を長く有効活用できると思った。
当たり前だと思っていたけど、車を感知したら、信号を切り替えるプログラムみたいに、「~すると、〇〇になる」のような便利なプログラムが身のまわりにはたくさんあることに気付いた。
効率的な電気の利用という視点で活動を振り返り、「身の回りの電気製品は、プログラミングで制御することにより、自然エネルギーの有効活用を図っている」と、子どもが捉ることができるようにしましょう。また、身の回りの電気製品に目を向けるように促して、これまでの学習した内容や生活を見直したり、これからのくらしについて考えたりすることができるようにして、学びを深めましょう。
例えば、MESHやToio、レゴデュケーションSPIKE、micro:bitなど、理科で活用できるプログラミング教材は、数多くあります。最近では、Windows、ChromeOS、iPad、全てのOSにアプリをインストールできるようになっていて便利です。今回使用したMESHは、ブロックの機能をMESH アプリの画面上で線でつなぐだけで、非常に簡単ですし、直観的な操作でプログラムを作ることができます。また、操作性が高くて、グループワークにも適しています。
安全指導
コンデンサーを使って実験を行う場合は、以下の点に注意しましょう。扱い方を誤ると、発熱して蓄電能力が落ちてしまいます。
●+端子と-端子が決められているので、他の器具と接続する際には注意する。
●電源装置を使って蓄電しない。
●実験で使用する前に、放電する。
●実験終了時に、+端子と-端子をつなぎ、コンデンサー内に残っている電気を放電する。
●低出力タイプの手回し発電機で蓄電するときは、低速でハンドルを回すと電圧が低すぎて電気がたまらないことがあるので、適切な回転速度で回す。
イラスト/難波孝