活動の特質と発達段階を踏まえた係活動・当番の指導【主体的に生きる力を育む学級経営の極意④】


子供たちが多様な他者と関わりながら社会につながり、主体的に生きる力を育んでいくために、教師はどのような学級経営をしていけばよいのでしょうか。学級経営・特別活動を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に学級経営の本流を踏まえて基礎基本を解説します。第4回は、係活動と当番の指導のポイントについて解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章
「係と当番」の活動は、活動自体は似ている面がありますが、特質は大きく異なります。「係活動」は、学級活動として教育課程に位置付く活動で、学級会の話合いによって子供たちが設定するものです。一方、「当番」の仕事は、学級経営上の運営を円滑にするために教師が設定するものです。このような異なる特質を踏まえ、次の3つのキーワード「係と当番の特質の理解」「発達の段階を踏まえた実践」「活動上の配慮事項」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 係と当番の特質の理解
「係と当番」の活動の特質を踏まえて実践することが大切です。この違いの認識がなされないと、用具の準備等を行う活動としての「体育係」のように、当番として行うべき活動が係活動として設定されてしまうことがあります。「係活動」は、学級生活を豊かにするもので、やらなければならない活動ではありません。一方、「当番」の仕事は、日直や給食・清掃当番など、学級経営上なくてはならない活動です。まずは、それぞれの特質を踏まえて「係と当番」の活動を設定するという認識をもつことからスタートしましょう。
「係活動」は教育課程、「当番」は日常の生活指導です
「係活動」の設定は、学級会の話合いによって子供たちが編成します。子供たちの創意工夫をもとに、豊かな学級生活を向上・発展できるようにしていく活動です。「当番」の設定は、学級生活の円滑な運営を目指して、教師が意図的に設定する活動です。
「係活動」は、子供たちの創意工夫を大切にし、継続して活動が展開できるようにしていきます。その活動は、責任を追及するというものではなく、互いに支え合って豊かな学級生活を創造させていくという特質があります。「当番」の仕事は、日直や給食当番等、手順通りに活動できるようにし、輪番で交代しながら公平に活動を展開します。特に、当番の仕事は、責任を伴うものとして活動するため、時には活動が停滞した場合には、やり直しをするなどの指導も行われます。それぞれの特質を踏まえた上で組織を編成できるように努めていきましょう。

CHECK② 発達の段階を踏まえた実践
1年生の入門期(4月)の「係活動」は、一人1役で「しごと見つけ」から始めます。やがて、集団活動の必要性に気付くようにし、話し合って係をつくることになります。
中学年では、低学年の経験をより発展させる意図をもって、当番との仕事の違いを理解しながら、話し合って係をつくるようにします。高学年では、中学年の経験の上に立って、より発展的な活動を目指して、話し合って係をつくるようにしましょう。
「低・中・高学年」程度の段階でめやすとなる活動を例示します
「係活動」の発達段階に即した大まかな活動については、次のような例を参考に指導しましょう。
①「低学年」本係・花係・金魚係・保健係・クイズ係・お知らせ係・ロッカー係・整頓係・落とし物係・道具箱係・ボール係・飾り係・みんなのコーナー係など(アンダーラインのある係は徐々に当番としての仕事に移行していきます)
②「中学年」学級文庫係・生き物係・ニュース係・お楽しみ係・みんなのコーナー係・保健係・掲示係・クラスの歩み係・歌係・道具箱係など
③「高学年」図書係・新聞係・掲示係・飼育係・レクリエーション係・お知らせコーナー係・保健係・学級生活歩み係・中学校情報係・リサイクル係など
CHECK③ 活動上の配慮事項
「係活動」は、教育課程上、学級会での話合いで設定し、基本的には3人以上の集団で編成します。単に、子供たちがやりたいことを行うのではなく、学級生活の充実と向上を目指し、学級にとって必要な活動を話し合って係を設定し、全員で分担して所属することが基本です。特に、当番の仕事のように、責任を追及することなく、子供たち同士で支え合い、助け合って活動が展開できるようにすることが求められます。
「係活動」は「競争」でなく、「協働」の視点で活動できるようにします
「係活動」を活性化するために、「〇〇会社係」等と称して他の係と競わせて意欲を喚起しようとする実践が散見します。教育課程として学級活動に位置付く係活動の特質を踏まえ、係が支え合い協働できるような活動を展開することが肝要です。また、個性の伸長を重視するという考え方で、個々にやりたい活動を展開するのではなく、常に学級生活の充実と向上を目指し、学級文化を創造する豊かな活動が展開できるようにしていきましょう。

イラスト/町田ねる(イラストメーカーズ)