冬休みまであと一歩! 失敗しない12月の学級経営3つのポイント

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埼玉県公立小学校教諭

紺野 悟

行事後のトラブルが多い「魔の11月」を乗り越え、冬休みまであと一歩。そのあとわずかの12月が肝心と語る埼玉県公立小学校教諭の紺野悟先生が、ここで“もう一段の成長”を後押しする学級経営のポイントを伝授! 「バタバタ」で終わらせない師走の過ごし方「3つのポイント」や、クラスの人間関係がある程度構築されてきたこの時期だからこそ実践したい「アクティビティ3選」など、隙間時間の実践で教室に一歩進んだ連帯感や安心感を生むアイデアが満載です。2学期のラストスパート、穏やかで楽しい学校生活とともに、子供たちの“もうひと伸び”をめざしましょう!

執筆/埼玉県公立小学校教諭・紺野悟

1.師走は過ぎ去っていく

いよいよ12月が迫ってきました。もう少しで冬休みです。どの学校も、ここまで運動会や音楽会、遠足など様々な行事があったことでしょう。そして2学期の様々な行事を通して、学級の成長や課題が見えてきたことでしょう。

「さあ、2学期のゴールが見えてきた」「あと一歩!」「もう一踏ん張り!」と思えてきた12月。でも実は、12月は盲点なのです。毎年あっという間に過ぎていく感覚があります。どういうことか、説明しましょう!

12月はとにかくあっという間!

2.行事後の魔の11月も忙しいけれど、師走はさらに忙しい!?

「行事後」の時期は、事件や事故、いじめやトラブルが多く発生する時期という意味で「魔の11月」と呼ばれることもあります。ですから、アンテナの高い先生方は「行事の前」と同じように、またはそれ以上に、「行事の後」の指導を丁寧に行っています。学級目標を確認したり、行事の成長を確かめ合ったり、課題を話し合ったりと、様々な手だてを打っているはずです。

でもこのあと12月に入ったとしても、「魔の11月も終わったぞ。やれやれ。さあ、冬休みももう少しだなあ」と、流すように日々を過ごしてはいけません。「魔の11月」で取り組んできたことのまとめとして、修正として、もう一段成長できる場として12月を位置づけましょう

一説によれば、師走とは「この時期になると、師が東西に忙しく走り回るのであっという間に終わっていく」様子からきていると言われます。実際、12月の登校日は15日程度しかありません。ですから、バタバタしている間に終わっちゃった! なんてことにならないように、12月こそ丁寧に、そして行事とは異なる穏やかで楽しい学校生活をめざしましょう。

では、どんなことを心がけていくべきか、3つのポイントにまとめましたので見ていきましょう。

3.師走の過ごし方、3つのポイント

(1)事務的なことは子供たちと共有して進める

事務的なことは子どもたちと共有して進める

大事な提出物、返却物、まとめテストの日程、大掃除の日程と担当場所、等々、事務的に決められているものは子供たちと事前に共有して進めましょう。

例えば、大掃除がいつ行われる予定か、担当箇所はどこか、漢字の50問テストはいつ行われるのか、図工の作品はいつ持ち帰るのか、給食はいつまでか、などがこれに当たります。とくにロッカーをいつ掃除するとか、書き初めがいつあるのかなど、予定に入れなくてもよさそうなことまで入れておくのが肝です。

とにかく、学校や学年で決まっているものから、学級裁量で行うことまで、事務的で確実な遂行が求められるものを一覧にして、カレンダーや掲示物にするのです。タブレット端末で確認できる掲示板でも構いませんが、教室に掲示してあることで、自然と目に入る回数が増えます。こうすることで忘れることが減り、確実に物事が進んでいきます。

また、これからの時期はインフルエンザなどで担任が欠席不在になる場合も想定されます。予定を掲示しておけば、万が一そんなときでも忘れられることがなく、物事が行われていく効果もあります。

さらに言えば、単に忘れないで行うためのものではなく、段取りを学んでいく機会にもなります。忙しい時期だからこそ、予定を決め、システム的に行うことで、効率よく物事を遂行する力も育んでいきたいものです。

子供たちと予定を決めるときは、このような段取りで行います。

【段取りの例】

①これまでの行事や活動の成果を確認する。
 ↓
②終業式までのカレンダーを提示する。
 ↓
③それまでにやらなくてはならない活動を出し合う。
 ↓
④学校で決まっているものは日程を伝える。
 ↓
⑤持ち帰らなければならないものを出し合う。
 ↓
⑥持ち帰る日を子供たちと合意形成する。
 ↓
⑦カレンダーを教室に掲示する。
 ↓
⑧完了したら、赤ペンで丸をつけていく。

(2)楽しいイベントを行う準備を行う

クリスマスパーティーなど学級イベントを行うのであれば、11月から企画・準備が必要です。準備には相応の時間がかかります。また、準備の時間は子供たち同士が折り合いを付けたり、物事を分担して遂行したりすることを経験できる貴重な時間です。こうしたイベントを「子供が言い出さないからやらない」と子供たちの責任にせず、教師発信でイベントを行えるだけの下ごしらえをしていきましょう。

学級会の議題等で「クリスマスパーティーをやりたい」などと意見が入ったとします。(または教師から枠組みを提示してもよいです)。話合いを通して出し物や仕組みを決め、そして準備に入ります。私の学級では、グループに分かれて屋台を作り、お祭り形式で行うことがよくあります。これは6月ごろに私(教師)から「やってみない?」と提案して行ったことがあるため、「もう一回やりたい!」と再度企画を提案してくれるからです。誰しも一度、楽しい経験をすることで、もう一度やろうとしたり、アレンジしたりしようとします。一度経験するためには、子供たちが分からないことは教師が発信する必要があります。

理想的には12月にもなれば子供たちから自主的に取り組んでほしい時期です。でも現実的に考えれば、必要に応じて教師が出ていく方が有意義ではないでしょうか。

お祭り形式の学級イベントは、具体的には以下の流れで決めていきます。

①お店の内容を決める

まず4人グループを構成してから、どんな屋台にするかグループごとに内容を決めます。射的をやるグループが2つになっても大丈夫です。お店によってルールが全く同じということはありません。以下は射的を例に進めていきます。

②お店のルールを決める

内容が決まったら、お店のルールを決めます。入店したら、学級通貨をいくら払うのか、いくらで何回できるのか、当たった数で景品を決めるのか、それとも的に点数が書いてあって点数で決めるのか、どれくらいの距離から的を狙うのか、などを決めていきます。

③リハーサル

お店のルールが決まったら、リハーサルをします。入店から退店までをグループの人たちで何回かやってみます。すると、ルール表をここに置こうとか、景品はどうやって置こうか、と具体的に決まってきます。

楽しいイベントを行う準備を行う

④景品作り

ここまできたら、景品を作り始めます。子供たちは景品から作り始めることが多いですが、こうした段取りも大事な学習です。A賞をいくつ作るのか? B賞はいくつ作るのか? など、具体的に決めてから作り始めます。

⑤お祭り当日

4人グループなら、店員2人と遊びに行く人2人で分かれます。前半後半で交代すれば、お店を経営する経験もできますし、屋台で遊ぶこともできます。

このように活動を進めると、射的やボウリング、卓球やクイズなど、本当に様々な趣向を凝らした面白いお店がたくさん現れます。お店の仕組みやルールを話し合って決めることも有意義な学びです。景品も折り紙で作ったものやビーズなどで手作りしたものが並びます。意外な特技が見つかり、それでフィーチャーされる子供もいます。

こうした活動をするためには、早めの準備が必要です。なぜなら、お店作りには時間が必要だからです。段ボールを切ったり、ルール表を作成したり、景品を用意したり、休み時間や授業の隙間時間を使って準備していきます。

これを学級だけでなく学年全体を巻き込んで行うこともできます。下記のようないろいろなお店がたくさんできて、それは楽しいイベントになることでしょう。

【屋台の例】

  • 射的
  • 的当て
  • ストラックアウト
  • 魚釣り
  • 缶つみ
  • クイズ(早押し)
  • 謎解き
  • クリスマスカード作り
  • 干支お絵描き

(3)日常的に「穏やかで楽しい」場面を意図的に作る

子供たちは秋に行事を通して「盛り上がる楽しさ」を経験してきました。みんなで涙した悔しさや感動を経験した学級もあるかもしれません。学級の経験としてどれも尊いことです。一方、12月は忙しく終わっていってしまいます。その日常の中に、穏やかに笑いあえる場面を意図的に用意していきましょう

そのための一つの手だてが学級アクティビティ、教室で5〜15分程度でできる小さなアクティビティです。例えば4月だったら子供たちをつなぐ、緊張関係をほぐす、いわゆるアイスブレイクとしてのアクティビティを行うことが多いと思いますが、この時期は同じアクティビティでも目的が異なります。

誰が消しゴムをもっているでしょう?

以前「みんなの教育技術」で紹介(※)した、「持っているのだ〜れ?」というアクティビティがあります。これを6月に行うなら、少し人間関係が構築されてきたことを踏まえて、相談したり答えたりすることで学級で楽しむ一体感をめざして行います。でも12月であれば、つながりはもうある程度構築されていますので、むしろこうした遊びを通して「失敗を楽しめる」ということがひとつの意図になります。消しゴムを別の何かに変えてみるなど、難易度の高いもので行うことで、また楽しみを生み出せます。

※「山場の『魔の6月』を乗り越える!学級メンテナンスの手立て完全ガイド」

4.師走にやりたいアクティビティ3選!

さて、ではどんなアクティビティを行うとよいのでしょう。ここで福井県の小学校教諭である塩田海斗先生に「師走にやりたいアクティビティ」を3つほど紹介していただきます。

塩田先生は、この12月を「関係の強化(再構築)月間」と位置づけています。関係ができてきている子供たちが多くいる一方で、まだつながりの薄い関係も存在します。そうした関係の中にアプローチを行うようなアクティビティです。

(1)あたまおしりゲーム

このアクティビティは、某テレビ番組で紹介されていたものを参考にしていますので、子供たちにもなじみがあるのではないでしょうか。指定された「あたまの文字」と「おしりの文字」をつかって言葉を作る単純なものです。

進め方とセリフ

① 4〜5人のグループを作ります。

② 先生が五十音から「あたまの文字」と「おしりの文字」を示します。

今から、みんなに言葉の『あたまの文字』と『おしりの文字』を出します。

例えば、あたまの文字が『く』、おしりの文字が『す』だったら、考える言葉の最初は『く』、最後は『す』になります。10秒以内に『く』で始まり『す』で終わる言葉を相談してホワイトボードに書きます。

例えば、これだと「クリスマス」なんてのが思い浮かびますね。これで、一番長い言葉を考えたグループが勝ちです。

質問はありますか?

③アクティビティ開始

問題! 10秒間で考えましょう!
『あ』から始まって『ん』で終わる言葉!」

(10秒経過)

はい、ストップ! それぞれのグループごとの答えオープン!

 グループA:「アンパン」

 グループB:「アンパンマン」

④結果発表

グループBが6文字の言葉を考えました。Bグループの勝ちです!

このように、グループで協力して言葉を考えていきます。これは様々なアレンジが可能な遊びです。考える時間を短くしたり、グループを変えたり、短い方が勝ちにしたり、国語辞典を使って調べてもよいことにしたり、教員が考えた言葉と同じ言葉を考えたグループは得点が2倍になったり、様々です。ルールを工夫することで、繰り返し行うことができます。グループで協力することで、互いの頑張りや気付きに褒め合う場面が自然と生まれます。

あたまおしりゲーム

(2)何をかいたのでSHOW!

代表者がお題の絵を描いて、それを見て何を書いたのかを当てるゲームです。このままでも面白いのですが、代表者の子がうまく描けなかったら責められてしまったり、絵が苦手な子が参加しづらかったり、とハードルが高くなってしまいます。そこで「代表者は目をつぶってお題の絵を描く」というルールを加えます。目をつぶって何かを描くのは難しいことです。だからこそ、誰でも代表者になって絵を描くことができるはずです。

何をかあいたのでSHOW!

進め方とセリフ

①4人のグループを作ります。

②グループの中で代表者を1人決めます。

次に、グループの中から代表者を1人決めてください。この人がみんなのために絵を描きます!

③代表者にお題を伝えます。

代表者の人だけ、こっそり前に来てください。今から、お題を伝えます。

④代表者は、目をつぶって30秒間でお題の絵を描きます。

お題の絵を30秒で描いてください。よーい、スタート!

⑤(描き終わったら)何を描いたかをグループの子供たちが1分間で当てます。

みんな、絵を見て何を描いたか当ててみましょう!
1分間で答えを出してね。代表者の人はヒントを出しちゃいけませんよ。
……スタート!

 子供A:「ネコ」

 子供B:「ネズミ」

 子供C:「クマ」

「クマ」が正解です。お見事! 拍手をしましょう。

描いた絵を一生懸命当てようとする姿が見られたり、描いた人の頑張りをねぎらったりする姿が見られるはずです。このアクティビティは「失敗」「下手」が前提の遊びであり、楽しく笑い飛ばすことで安心感が生まれます。こうした雰囲気が醸成された学級で、より機能するアクティビティです。子供たちの中に「相手を尊敬し合う心」を育むと同時に、教室全体に「居心地の良い」雰囲気を醸成します。関係をより強固にしていくためのきっかけ作りになると思います。

お題に難易度を設定したり、正解者にポイントを与えてグループごとに競わせたりすると盛り上がります。

(3)つながる輪っかチャレンジ

クラス全員で輪になると、一体感が生まれます。自然と「安心・安全」の温かい雰囲気を生み出すことができます。この雰囲気は、「関係の強化(再構築)」には欠かせません。

このアクティビティは、割り箸を指で持ち上げて輪になるアクティビティです。発達段階によっては、手をつないで輪になることを恥ずかしがってしまいます。そこで、手をつなぐのではなく、割り箸を協力して持ち上げ、輪をつくっていきます。割り箸が準備できなければ、子供たちの鉛筆やペンでも代用できます。

つながる輪っかチャレンジ

進め方とセリフ

①1人1本の割り箸を用意します。

まず、みんな1人1本ずつ割り箸を持ってください。割り箸が落ちないように、息を合わせてくださいね。

②席の隣同士で割り箸1本を人差し指で持ち上げます。

今から、隣の人と一緒に割り箸を1本持ちます。両方の人差し指を使って持ち上げてみましょう。いいですか?

③頭の上まで持ち上げたら、拍手をします。

割り箸を頭の上まで持ち上げてみましょう。さあ、上がりましたね?
では、拍手!

④次は4人で割り箸を持ち上げて輪を作ります。

次は4人で挑戦! 割り箸を持ち上げてみましょう!

⑤頭の上まで持ち上げたら、拍手をします。

4人の輪ができましたか?
では、みんなで割り箸を頭の上まで上げてみましょう! さあ、上がりましたね?
では、拍手!

⑥全員で、割り箸を持ち上げ輪になります。

最後は全員、クラスで大きな輪を作ります。みんなで1本ずつ割り箸を持ち上げましょう!

⑦頭の上まで持ち上げられたら、拍手をします。

全員で頭の上まで持ち上げられましたね、拍手〜!

このように進めていき、徐々に輪になる人数を増やしていき、クラス全体で輪になったら終了です。割り箸を持ち上げる際に、互いの呼吸を自然と合わせたり、力の入れ具合を考えたりと子供たちは真剣になっていきます。すると、自然と声を掛け合う姿が生まれてきます。

活動後には、そのような姿をフィードバックしてあげたいですね。活動の中での子供たちの動きを価値づけすることで、他の場面でもそのような姿を見せてくれる子供に変わっていくはずです。

また「全員で協力して物事を達成する楽しさ」を味わわせることもできるので、すごくおすすめのアクティビティです。長さの違う棒を用意したり、持ち上げる指を指定したりして難易度をあげてチャレンジするのも面白いです。


今回紹介した3つのアクティビティは、「協力する」ということが1つのキーワードになっています。「協力する」ことを通して、目標に対して一体感が生まれます。子供たちが同じ方向に向かって力を合わせ、 一緒に困難を乗り越えることで、チームワークが強くなり、連帯感も生まれます。関係を強化していく上では、外すことのできない視点だと思います。

どのアクティビティも、準備物は少なく、スキマ時間の10〜15分で実施可能です。師走の慌ただしい時期ですが、ぜひ取り入れてみてくだい。

終わりに

いかがでしたか。

ただ、スケジュールを組むにも、子供たちと合意することが必要です。
お楽しみ会を行うにも、経験値が必要です。
短い時間でアクティビティを行うのには、目的が必要です。

忙しい12月だからこそ、丁寧に行うことは、徹底的に丁寧に。

でも子供たちに委ねるところは、存分に委ねてみてください。

過ぎ去っていく12月が、もう「ひと伸び」する12月になることでしょう。小さなトラブルを解消することにもつながるでしょう。

この記事が、皆さんにとって素敵な冬休みにつながれば幸いです。


執筆者:紺野悟(こんの・さとる)
埼玉の教育サークル clover 代表。イベントを数多く企画・運営し、価値ある教育情報を広めている。共著『全単元・全時間の流れが一目でわかる!社会科 6 年 365 日の板書型指導案』(明治図書出版)他多数。

大好評! 紺野悟先生の『完全シリーズ』はこちらからご覧ください。
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