小6理科「土地のつくりと変化」指導アイデア
執筆/福岡県福岡市立有住小学校教諭・中村咲歩
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県福岡市立南片江小学校校長・酒井美佐緒
福岡県福岡市立箱崎小学校教頭・比毛孝之
目次
単元目標
土地やその中に含まれる物に着目して、土地のつくりやでき方を多面的に調べる活動を通して、土地のつくりや変化についての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考え方をつくりだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①土地は、礫、砂、泥、火山灰などからできており、層をつくって広がっているものがあること、また、層には化石が含まれているものがあることを理解している。
②地層は、流れる水のはたらきによってできることを理解している。
③地層は、火山の噴火によってできることを理解している。
④土地は、火山の噴火や地震によって変化することを理解している。
⑤土地のつくりと変化について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。
思考・判断・表現
①土地のつくりと変化について問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②土地のつくりと変化について、観察、実験などを行い、土地のつくりやでき方について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①土地のつくりと変化についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②土地のつくりと変化について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 11時間
第1次 土地をつくっているものについて調べる。
1 教科書の写真や地図アプリなどを用いて、さまざまな土地の様子を見て、気付きを出し合い、問題を見いだす。
思考・判断・表現①
土地のつくりと変化について問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
2~4 ボーリング試料を使ったり、実際に観察したりして、土地のしま模様をつくっている物や含まれている物を調べる。
知識・技能①
土地は、礫、砂、泥、火山灰などからできており、層をつくって広がっているものがあること、また、層には化石が含まれているものがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
土地のつくりと変化について、観察、実験などを行い、土地のつくりやでき方について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
土地のつくりと変化についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
第2次 地層のでき方について調べる。
5~6 水を入れた水槽を海に見立てて実験し、流れる水のはたらきでできた地層について調べる。
知識・技能②
地層は、流れる水のはたらきによってできることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能⑤
土地のつくりと変化について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉
7 火山灰を観察したり、教科書の火山の噴火の動画を見たりして、火山のはたらきでできた地層について調べる。
知識・技能③
地層は、火山の噴火によってできることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
8 地層のでき方についてまとめる。
思考・判断・表現②
土地のつくりと変化について、観察、実験などを行い、土地のつくりやでき方について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
第3次 火山活動や地震による土地の変化を調べる。
9~10 教科書の火山活動や地震による土地の変化の動画を見たり、被害についてインターネットで調べたりして、土地の変化について調べる。(授業の詳細)
知識・技能④
土地は、火山の噴火や地震によって変化することを理解している。〈発言分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
土地のつくりと変化について、観察、実験などを行い、土地のつくりやでき方について、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
11 学んだことをもとに、自分達の住む土地や第1時で見た様々な土地のでき方を考える。また、災害による土地の変化に備え準備できることはなにか考えをもつ。
主体的に学習に取り組む態度①
土地のつくりと変化についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度②
土地のつくりと変化について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細
第3次 火山活動や地震による土地の変化を調べる。
9~10 教科書の火山活動や地震による土地の変化の動画を見たり、被害についてインターネットで調べたりして、土地の変化について調べる。
土地のつくりと変化について、観察、実験などを行い、土地のつくりと変化について、より妥当な考えをつくりだし、表現できることや、土地は火山の噴火や地震によって変化することを理解できる。
①問題を見いだす
前時までに、地層は礫や砂、どろ、火山灰などが重なってできており、流れる水のはたらきや火山の噴火によってつくられるといった「土地のつくり」の学習をしたことを確認する。そして、単元名後半の「土地の変化」について学習することを伝える。
次は、「土地の変化」について学習します。
いちばん上の写真は、土地がずれてしまっているね。なぜだろう。
その下の写真は、すごいたくさんの火山灰。火山の噴火で出てくるものも影響するのかな。
火山活動や地震について着目することができるように、写真を提示しましょう。調べる際のヒントになるように、どこで起こった地震なのかを示したり火山が噴火したときに出た火山灰などがうつっている写真を準備しておいたりしましょう。
土地は何が影響して、どのように変化するのだろうか。
②予想する
火山灰が積もってできる地層もあったね。だから、火山が噴火して、火山灰などの火山から出されたものが降り積もり、土地の様子は変わると思う。
大きな地震があったとき、ニュースで道路が崩れて通れなくなったのをみたよ。
あの田んぼの写真も、地震があった後ではないかな。地震が土地を崩すと思う。
③解決方法を考える
火山が噴火したときに出ているものが土地の様子に関係していると思うから、火山活動で出てくるものや被害について、私は図鑑で調べてみるよ。
私は地震によって、土地が崩されていると思う。だから、地震に関する被害についてインターネットで調べてみるね。
調べ終わったら、地震が影響しているのか教えてね。ぼくは、火山の噴火が影響しているのか調べたことを伝えるね。
学習意欲を高めるために「火山活動」か「地震」のどちらを調べるのかを、予想をもとに子ども自身で決めることができるようにする。
④調べ学習を行う
次時の防災へ学びをつなげるために、できるだけ子ども達の住んでいる地域に近い火山や地震を調べることができるようにする。
調べる際、情報量が多く焦点化できないことが考えられるため、あらかじめ教員の方で閲覧してもよいサイトや図鑑をまとめておくとよい。また、教科書にのっている動画を見て調べることもできるようにしておく。
子どもたちがICT端末を使って土地の変化を調べる場合には、調べる内容が目的からずれないように、また学習内容・範囲から広がりすぎることがないように 「〇〇地震 土地の変化」と検索ワードを指定したり、閲覧してもよいサイトを指定することが考えられます。
【調べることが可能なサイト】(参考)
●国土交通省 国土地理院サイト
●NHK for School
⑤結果の処理
火山の噴火で、カルデラというくぼ地ができたという写真を図鑑でみたよ。火山活動は、土地を崩してしまうんだね。
私は、火山の噴火によって流れ出た溶岩が冷やされてかたまった記事をみつけたよ。反対に、火山活動が土地を新しくつくることもあるみたい。
地震があると、田んぼの写真のように土地のずれが起こることがわかったよ。あのずれのことを「断層」というと知ったよ。
断層以外にも、地震が起こると土地が盛り上がったり反対に沈んだりするとわかったよ。地震という大きな力によって、土地の様子は変化するんだね。
大きな地震だと津波も起こってしまうときがあるみたいだよ。東日本大震災のときの津波の映像をみると、大きく土地を変化させていたよ。
火山活動、地震と調べたものごとにグループをつくり、結果について意見交換や議論できるようにするとよいでしょう。そうすることで、自ら調べた内容と他の班の調べた内容とで、土地のつくりと変化について6年生の重点目標「妥当な考えをつくりだす」ことにつながるでしょう。
⑥結果を基に考察する
火山が噴火することによって、出てくるもので土地がけずられることもあれば、土地を新しくつくることもあった。このことから、火山活動は土地の変化に大きな影響をあたえるといえるね。
地震によって、土地が盛り上がったりしずんだり、断層をおこしたりしていたね。だから、地震も土地の変化に大きな影響をあたえるといえるね。また、地震によっておこる津波は水だから、土地が変化することにも影響するのかな。
長い時間をかけて、繰り返し火山が噴火したり、地震が起こったりすることで土地が新しくできたり、変化したりするのですね。
⑦結論を出す
土地は、火山活動がえいきょうして、火山灰やよう岩によって新しくつくりだされる。また、地しんのえいきょうで、盛り上がったりしずんだり、がけがくずれたりして変化する。
⑧振り返る
火山が噴火したときは、新しい土地がつくられることもあるんだね。実際にできたこともあったみたいだ。そのことについてもっと調べてみたいな。
地震はどこでも起こる可能性があるから、もし起こってしまったときは、土地が変化することを頭に入れて、すばやく避難できるようにしたいな。
子どもたちの住む県の火山のある場所を示した地図や、過去の身近な県での地震を紹介することで、次時の学習に意欲をもつことができるようにする。
安全指導
実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。
●子どもたちと地層の見学に行く場合は、現地までのルートの下見を必ず行い、安全確保のための手立てを確認しておきましょう。
●野外観察をするときの服装や持ち物は、事前に確認しておき、安全に観察できるようにしましょう。
イラスト/難波孝