小2特別活動「病気の予防」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小2特別活動の指導アイデアです。12月は、学級活動(2)ウ「病気の予防」を紹介します。
寒くなり、空気が乾燥するようになると、様々な感染症が流行してくるようになります。この季節、多くの子供が集まる学校では、病気にならないための日々の感染症対策が大切です。感染症対策をただ指導して取り組ませるのではなく、子供一人一人が自分から「やってみよう」と思える学級活動(2)の授業に取り組みましょう。
今回は、ゲストティーチャーとして養護教諭と連携した授業展開を提案します。養護教諭と連携して授業を行うことで、子供の集中力がぐっと増しますし、発達の段階に即した専門的な指導となります。
執筆/埼玉県公立特別支援学校教頭・山形 悟
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
埼玉県公立小学校校長・野村佐智夫
目次
年間執筆計画
04月 学級活動(1) どうぞよろしくの会をしよう
05月 学級活動(2)ア 身の回りの整理整頓
06月 学級活動(1) クラスの歌をつくろう
07月 学級活動(1) 1学期がんばったね会をしよう
09月 学級活動(1) 係をきめよう
10月 学級活動(3)ウ いろんな本を発見!楽しい読書
11月 学級活動(1) クラスの記録大会をしよう
12月 学級活動(2)ウ 病気の予防
01月 学級活動(1) クラスのカルタを作ろう
02月 学級活動(3)ア もうすぐ3年生
03月 学級活動(1) 思い出集会をしよう
本実践までの本学級の状況
12月になり、2学期もまとめの時期になりました。しかし、風邪症状で欠席する子供が何人か出ており、朝の健康観察でも風邪症状を訴える子供も多い状況です。コロナ禍で定着した「新しい生活様式」も、今ではあまり意識されないようになりつつあります。
事前の指導
①病気の予防に関するアンケート調査を行う
事前に子供のICT端末を用いてアンケートを実施し、子供の病気の予防に関する意識調査を行います。
質問項目例:
病気にならないために、いつもしていることはありますか。[選択式・複数回答可]
選択肢:
①手洗い ②うがい ③消毒 ④マスク ⑤よく寝る ⑥好き嫌いなく食べる ⑦運動をする ⑧何もしていない
紙面でアンケートをとることもできますが、ICT端末を活用してアンケートフォームから回答するようにすると集計が簡単です。
②養護教諭と事前に打合せをして授業計画を立てる
アンケート結果をもとに、本時の授業を組み立てます。その際、事前に養護教諭にゲストティーチャーとして本時の授業への協力を依頼し、以下の内容について事前に打ち合わせておきます。
・本時の授業の流れとゲストティーチャーの役割を確認する
(どの場面で、どんな話をしてほしいのかなどの役割を明確にしておきます)
・事前に準備が必要なものを用意する
(アンケート結果の集計表、月別の風邪症状の人数の表など)
※今回は、ゲストティーチャーとして「さぐる」の段階で感染症対策について話してもらいましたが、TTの形で、T1学級担任、T2養護教諭として連携して授業を行うのも効果的です。その場合も事前打合せをしっかり行い、T1が話しているときにT2が板書や補足説明をしたり、T2が説明しているときにT1が板書や机間指導をしたりするなど、役割を明確にしましょう。
【養護教諭】先生が作成したアンケートの集計表を見ると、手洗い・うがいに進んで取り組んでいる子は多いのに、睡眠・運動・食事についてはできている子は少ないですね。
【学級担任】そうなんです。睡眠・運動・食事が病気に負けない体をつくるために大切だと気づいていないことが原因だと思います。
感染症の予防には、
①病気のもとをなくす(感染源対策)
②病気がうつらないようにする(感染経路対策)
③病気にならないようにする(感受性対策)
の3要素が重要であると言われています。睡眠・運動・食事は主に③にあたりますね。
今回の授業では、「さぐる」の場面で、病気を予防する方法について、その3つの視点で養護教諭の先生からお話しいただけますか。その中でも、本学級の課題である睡眠・運動・食事について、特に重点を置いて説明をお願いします。
分かりました。適切な睡眠・運動・食事が体の抵抗力を高めることを2年生にも分かりやすいように、掲示物を使って工夫してみますね。
子供たちが話し合ったり、がんばりカードを書いたりしているときには、私と一緒に机間指導をお願いします。私が1・2号車を担当するので、先生は3・4号車をお願いします。
分かりました。
それから、子供たちが意思決定した内容について、よいところを認めたり、足りない点を補足したりしてください。
それでは必要に応じて、子供たちから出てこなかった内容などにも触れるようにしますね。
ありがとうございます。よろしくお願いします。
本時のねらい
病気にならずに、学校に元気に登校するための方法を考えよう。
本時の指導
学級活動(2)ウ
題材:病気の予防
[つかむ]クラスの欠席の状況やアンケートの結果から本時の課題を自分事として捉える
アンケート結果は、2年生でも分かりやすいように、表などにして黒板に掲示します。
今日はみなさんと一緒に「病気の予防」について考えていきます。
今月に入って、具合が悪くて休む人が増えてきていますね。先日、みなさんにとったアンケート結果がこれです。ここからどんなことが分かりますか。
手洗いやうがいをしている人が多いです。クラスのほとんどの人が、給食前や校庭から帰ってきたときにしていると思います。
「好き嫌いなく食べる」は大切なことだけど、私も苦手なんです。
そうですね。実は、このアンケートにのっている1番~7番のことは、すべて病気にならないために大切なことなのです。そこで、これからも元気に学校で過ごすために、病気にかからない方法を一緒に考えていきましょう。
めあて:病気にならずに元気に過ごすための方法を考えよう
[さぐる]アンケートの結果から数値が低い項目について、なぜ低いのか原因を考える
「よくねる」「すききらいなく食べる」「うんどうする」は、している人が少ないですね。どうしてか、日ごろの自分の生活や経験から考えてみましょう。
睡眠・食事・運動が低い理由(例)
睡眠:見たい動画やゲームがやりたいから。習い事があるから。
食事:嫌いな食べ物があるから。自分の好きなものしか食べないから。
運動:外が寒いから。運動すると疲れるから。
感染症対策について養護教諭が説明する
ここからゲストティーチャーの養護教諭と一緒に感染症対策について考えていきます。進行は担任が行い、授業の流れをリードしていきます。
【学級担任】できている人が少ない項目について、いろいろな理由がありましたが、これからもできないままでよいのでしょうか。
病気にならないための方法について更に考えていくために、今日は特別な先生をお招きしています。みなさんもよく知っている保健室の○○先生です。
【養護教諭】いつも保健室にいる○○です。今日はみなさんと一緒に病気にならないための方法について考えていきますね。病気にならないためには、3つの方法があります。1つ目は病気の元をなくすこと、2つ目は病気がうつらないようにすること、3つ目は病気にならないようにすることです。アンケートの1番~7番がどれに当てはまるのか、一緒に考えていきましょう。
寝ることも、病気に負けない体をつくるためには、必要なことなんだね。
ぼくたちがやっていたことには、ちゃんと意味があるんだね。
○○先生も言っていましたが、手洗いやうがいのような目に見える方法も大切ですが、食事や運動など日ごろから取り組んでいる目に見えない方法も大切なのですね。
説明に必要な情報は以下のサイトが参考になります。
・【睡眠】厚生労働省
・【食育】文部科学省
・【運動】スポーツ庁
子供たちの発達の段階に合わせて重点化を図り、分かりやすい説明となるようにしましょう。
[見つける]感染症対策の具体的な方法を考える
実践人数が少ない感染症対策の視点について、具体的な取組方法を考えます。ワークシートを使って、最初は個人で考え、その次にグループで話し合い、思考を深めます。
グループでの話合いでは、短冊やミニホワイトボードなどに、話し合って考えた病気予防の方法をまとめてもよいでしょう。考えがまとまったら、各グループが発表する時間を設けます。
グループの中でたくさんの意見が出た場合には、「みんなに伝えたいことを2つ決めて発表しましょう」と伝えておくとよいでしょう。
※マスクの着用については、マスクをしない子供や、できない子供もいることから、話合いの視点から除いておき、教師が触れる形にするとよいでしょう。
各班から、たくさんの意見が出されました。○○先生、何か付け足しはありますか。
はい。寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見ていると、眠れなくなってしまいます。そうならないためにも、寝る前はスマートフォンやパソコンを使わないようにすることも大切です。ゲームも同じですよ。
学級活動(2)(3) ここがポイント!その4
【[見つける]場面での養護教諭からの補足説明】
各グループから出された解決方法は、自分のめあてを決めるうえでとても参考になりますが、場合によっては、本時のめあてに迫る観点や方法が子供から出てこないことも想定されます。その場合、そのまま授業を進行するのではなく、子供から意見が出なければ、教師から最後に補足するようにします。そうすることで、正しい理解をもったり、解決方法が広がったりして、よりよく意思決定に臨むことができます。
※「学級活動(2)(3)ここがポイント!その1&その2」は、小2特別活動「身の回りの整理整頓」指導アイデアをチェック。
※「学級活動(2)(3)ここがポイント!その3」は、小2特別活動「いろいろな本を発見!楽しい読書」指導アイデアをチェック。
[決める]自分に合った具体的な目標を決める
ワークシートに自分の目標を記入します。目標は、いつ、何を、どのように、どのくらいするのかなど、自分の課題に合った具体的な行動目標になるようにします。
各グループの意見を参考にして、自分ができていないなと思う項目を1つ選んで、これから自分が意識して取り組んでみようと思うことをワークシートに書きましょう。
ぼくは、家に帰ったら宿題をすぐやって、〇時までには寝るようにします。
わたしは、学校に来たら、毎日、校庭を2周走って体力をつけようと思います。
意思決定したことの大切さを価値付け、取り組む意欲につなげる
自分で決めた目標を守ってこれから1週間、取り組んでいきましょう。
ただし、めあてを実践しても、それでも病気になってしまうこともあると思います。そのときは早く治るように体を休めましょうね。
私も保健室から応援しています。具合が悪いときは、無理せず、先生に言って保健室に来てください。
ワークシートに記入後、ペア同士や学級全体で自分の決意を発表したり、必要に応じて内容や表記の見直しをしたりしながら、よりよい意思決定ができるようにします。
◆板書例
※「班ごとに書いたものを発表して終わり」にせず、学級全体で話し合ったり、出てこなかったものについて養護教諭が補足説明したりして、よりよい意思決定につなげます。
※上の板書例では、各班のホワイトボードを掲示しましたが、各班から出された内容を分類・整理して、短冊などで示すことも効果的です。
【資料1】ワークシート「病気の予防」一週間チャレンジ
※下記、ボタンからダウンロードできます。
事後の指導
本実践について、学級だより等で保護者にも周知するとともに、協力を依頼しておき、家庭と連携を図ると効果的です。授業参観のときに、授業を参観してもらうのもよいでしょう。
一週間取り組み、振り返りをします。ワークシートは養護教諭にも共有するようにしましょう。
学級活動(2)(3) ここがポイント!その5
【家庭との連携】
本実践のように、子供が意思決定しためあてが学校にいる間だけでは達成できない場合もあります。そこで、家庭に協力を依頼しておくと、保護者が子供が立てた目標を後押ししてくれます。学級だより等で授業の様子とともに依頼をすれば、保護者も学校の様子が分かり、学校への信頼も増すことになり、効果的です。
イラスト/高橋正輝