小5理科「流れる水のはたらきと土地の変化」指導アイデア
執筆/福岡県那珂川市立岩戸小学校教諭・濵本めぐみ
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県那珂川市立安徳北小学校校長・白水隆暢
福岡県那珂川市立片縄小学校元校長・石松政浩
福岡県那珂川市立南畑小学校教頭・大園亨
目次
単元目標
流れる水の速さや量に着目して、それらの条件を制御しながら、流れる水のはたらきと土地の変化を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や主体的に問題を解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①流れる水には、土地を浸食したり、石や土などを運搬したり堆積させたりするはたらきがあることを理解している。
②川の上流と下流によって、川原の石の大きさや形に違いがあることを理解している。
③雨の降り方によって、流れる水の速さや量は変わり、増水により土地の様子が大きく変化する場合があることを理解している。
④流れる水の働きと土地の変化について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。
思考・判断・表現
①流れる水のはたらきと土地の変化について、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②流れる水のはたらきと土地の変化について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①流れる水のはたらきと土地の変化についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②流れる水のはたらきと土地の変化について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 11時間
第1次 流れる水のはたらき
1~2 2組の写真の比較から問題を見いだし、流れる水にはどのようなはたらきがあるかを調べる。(授業の詳細①)(授業の詳細②)
思考・判断・表現①
流れる水の働きと土地の変化について、問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能①
流れる水には、土地を浸食したり、石や土などを運搬したり堆積させたりするはたらきがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
3~4 水の量による流れる水の働きの変化を調べる。
知識・技能④
流れる水のはたらきと土地の変化について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
流れる水のはたらきと土地の変化についての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
5 モデル実験と実際の川の比較をする。
知識・技能③
雨の降り方によって、流れる水の速さや量は変わり、増水により土地の様子が大きく変化する場合があることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
第2次 川と河原の石の様子
6~7 流れる場所によって、川原の石にはどのようなちがいが見られるのかを調べる。
知識・技能②
川の上流と下流によって、川原の石の大きさや形に違いがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
第3次 流れる水と変化する土地。
8~9 水の量の変化と土地の変化の関係を調べる。
思考・判断・表現②
流れる水の働きと土地の変化について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
10~11 洪水の被害や洪水に備える工夫、実際の川の様子について調べる。
主体的に学習に取り組む態度②
流れる水の働きと土地の変化について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細①
第1次 流れる水のはたらき
1 2組の写真の比較から問題を見いだし、流れる水にはどのようなはたらきがあるかを調べる。
同じ場所の写真を見比べる中で気付いたことや疑問に思った事から、差異点や共通点を基に、流れる水の働きについて問題を見いだし、予想や仮説を基に解決の方法を発想し、表現できる。
①問題を見いだす【自然事象との出合い】
同じ川の同じ場所から撮った様子の違う写真を用意しましょう。地域の川の写真や動画が準備できると、より子どもの興味・関心を高めることができます。また、水の量や色、見えている石や木の部分など、視点を定めて比較できるようにするとよいでしょう。
普段の川の様子と、雨が降った後の川の様子を比較し、どこがどのように違うのか、違いに目を向けることができるようにしましょう。子どもたちにとって身近な川を取り上げると、意欲的に学習することができます。 写真の比較から気付いたことを書き込み、意見交流することで水の色・水の量・水の勢い(速さ)にも目を向けることができます。
同じ川なのに、全然違って見えるね。
どこが違うのか、比べて見つけましょう。
普段の川は、水の色がきれいだけれど大雨が降ったら茶色になっているね。
大雨がふると、川幅や川の水の色が変わるね。水が流れることで、どんな変化が起きているのかな。
流れる水によって、どのような変化が起きるのだろう。
②予想する
大雨のときは川の色が茶色になっているから、水が流れることで川の周りや川底の土や砂が流されていると思う。
この学習は、4年生の「雨水の行方と地面の様子」の学習と関わっています。子どもの発言を取り上げるときに、そのことを教師が意識しておくことが大切です。
雨が降った後は地面でも川のような筋が見られたから、川も水が流れることで川の土や砂が運ばれていると思うな。
どうやって調べますか。
③解決方法を考える
実際の川みたいに、斜めにした地面に溝を作って水を流すといいんじゃないかな。
水が流れていく様子をしっかり観察するといいね。
授業の詳細②
2 実験し、流れる水のはたらきについて捉える。
流れる水のはたらきについて追究するなかで、流れる水には、土地を侵食したり、石や土などを運搬したり堆積させたりするはたらきがあることを捉えることができる。
①流水実験器に土を入れ、ゆるやかな坂になるように置く。(傾斜5度程度)
②溝をつける(曲がっている部分があるようにする)。
③流水実験器に200ml程度の水を流す。
④流れる水のはたらきによる土や砂の様子について調べる。
運動場などの土を盛ったところに溝をほり、水を流して実験することも考えられますが、適切な場所がない場合、プランターの水受けに排水できるように穴を開け、実験道具として使うこともできます。その場合、珪砂を使用すると、粒の動きがはっきりと捉えやすくなります。珪砂の準備が難しい場合は、粒の動きがわかるように、おがくずやカラーサンドのような動きの捉えやすい物を使うとよいです。傾斜は実験する場所によって変わるので、前もって確認すること(予備実験)が大切です。土を軽く湿らせておかないと、流した水を吸い込んでしまい、結果がわかりづらくなります。プランターの1/5~1/6ほどは土を入れず空けておきましょう。また、あふれた水を受け止められるように、水槽などの水受けを下に用意しておきくことも大切です。水が一定に流れるようにコップに穴を開けて使用したり、注ぎ入れるコップの縁を切ったりするとよいでしょう。
④観察・実験をする
⑤結果の処理
実験でどのような変化が起きたのか比較できるように、実験前の様子と実験後の様子を写真に撮影しましょう。比較し、変化の見られた所を写真に書き込み、意見交流することで、結果の共有がしやすくなります。また、実験の様子を動画で撮影すると、土や粒の動きがはっきりとわかり、流れる水のはたらきを捉えやすくなります。
水を流す前は溝がはっきりしていたけれど、水が流れた後は土が多く流されていたよ。
実験しているとき、水と一緒に土が下の方に流れていっているのが見えたよ。
土がけずられたようになって、実験器の下の方に集まっているね。
⑥結果を基に考察する
予想通り、やっぱり水が流れることで土や砂がけずられるとわかったよ。
水が流れるときに、土や砂が運ばれて、最後はたまっているとわかったよ。
考察の中で、流れる水は土地を浸食(けずる)・運搬(けずった土砂を運ぶ)・堆積(積もらせる)することを指導しましょう。
実験でわかったことがたくさんありましたね。
⑦結論を出す
流れる水によって、土や砂がけずられ、運ばれ、積もるといった変化が起きた。
⑧振り返る
流れる水には、土地をしん食・運ぱん・たい積させるはたらきがあるんだね。
流す水の量を多くすると、水のはたらきはどのようになるのか、調べたいな。
イラスト/難波孝