小6理科「水よう液の性質」指導アイデア
執筆/福岡県福岡市立香椎東小学校教諭・中尾駿平
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県福岡市立南片江小学校校長・酒井美佐緒
福岡県福岡市立美和台小学校校長・岩田勝英
福岡県福岡市立青葉小学校教頭・須藤大介
目次
単元目標
水に溶けている物に着目して、それらによる水よう液の性質や、はたらきの違いを多面的に調べる活動を通して、水よう液の性質や、はたらきについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①水よう液には、酸性、アルカリ性及び中性のものがあることを理解している。
②水よう液には、気体が溶けているものがあることを理解している。
③水よう液には、金属を変化させるものがあることを理解している。
④水よう液の性質や、はたらきについて観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。
思考・判断・表現
①水よう液の性質や働きについて問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②水よう液の性質や働きについて追究する中で、溶けているものによる性質や働きの違いについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして、問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①水よう液の性質や働きについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②水よう液の性質や働きについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 12時間
第1次 水よう液に溶けているもの
1 身の回りにある水よう液の気付きを出し合い、調べる。
思考・判断・表現①
水よう液の性質や働きについて問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
2~3 炭酸水には何が溶けているのか調べる。(授業の詳細)
知識・技能②
水よう液には、気体が溶けているものがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
水よう液の性質や働きについて追究する中で、溶けているものによる性質や働きの違いについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして、問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
4 二酸化炭素が水に溶けるか調べる。
知識・技能②
水よう液には、気体が溶けているものがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
水よう液の性質や働きについて追究する中で、溶けているものによる性質や働きの違いについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして、問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
第2次 酸性・中性・アルカリ性の水よう液
5 リトマス紙を使って、水よう液の液性を調べる。
知識・技能①
水よう液には、酸性、アルカリ性及び中性のものがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能④
水よう液の性質や働きについて観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉
6 ムラサキキャベツ液を使って、水よう液の液性を調べる。
知識・技能①
水よう液には、酸性、アルカリ性及び中性のものがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能④
水よう液の性質や働きについて観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉
第3次 金属を溶かす水よう液
7~8 酸性の水よう液には、金属を溶かす性質があるのか調べる。
思考・判断・表現①
水よう液について問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度②
水よう液の性質や働きについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
9~10 金属が溶けた液体を熱し、出てきた個体が金属のままであるのか調べる。
知識・技能③
水よう液には、金属を変化させるものがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
水よう液の性質や働きについて追究する中で、溶けているものによる性質や働きの違いについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして、問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
第4次 学んだことを生かし、水よう液を判別する
11~12 学んだことを生かして、塩酸、炭酸水、石灰水、食塩水、アンモニア水を判別する。
主体的に学習に取り組む態度①
水よう液の性質や働きについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしている。 〈行動観察・発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度②
水よう液の性質や働きについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細
第1次 水よう液に溶けているもの
炭酸水には、二酸化炭素が溶けていることを複数の実験結果から導き出し、水よう液の中には気体が溶けているものもあるという妥当な考えをつくりだし、表現できる。そして、水溶液には気体が溶けているものがあることを理解している。
①問題を見いだす
前時の学習から、蒸発乾固をしても何も残らなかった水よう液もあることを想起して、問題を見いだしましょう。
前の学習を思い出してみましょう。
どれも透明な水よう液だったけど炭酸水だけ泡がでていたし、アンモニア水は、においがあってくさかった。
蒸発乾固をすると、炭酸水と塩酸とアンモニア水は何も残らなかった。何が溶けているのかな?
使用する炭酸水によっては、中に水と二酸化炭素以外のものが入っていることもあり、固体が出てくることがあります。使用する炭酸水の成分表を見て、蒸発乾固の実験をしましょう。
炭酸水には、何が溶けているのだろうか。
②予想する
炭酸水を注ぐと泡が出てくる。そして、炭酸水を熱しても何も残らなかった。だから、気体が溶けていると思うよ。
炭酸水を作る機械がうちにあるけど、その時、二酸化炭素のボンベを使っていたから、二酸化炭素が溶けていると思う。
炭酸水を熱しても何も残らなかったのは、気体が溶けているからだと思う。体のつくりとはたらきで勉強をした、酸素が溶けているのかも。
③解決方法を考える
もし、気体が溶けているとしたら、炭酸水を振ったり、温めたりするともっと泡が出てくると思う。
二酸化炭素が溶けているとしたら、出てくる泡を集めて、石灰水を使えば、調べられると思う。
もし、酸素が溶けているとしたら、集めた泡でろうそくの火が激しく燃えると思う。
子どもたちが、自分の予想を確かめられそうな実験方法を立案できるように、今まで学習してきた酸素や二酸化炭素の特徴を振り返ることができるようにしましょう(掲示物、ICT端末、教科書など)。
④実験をする
6年生で主に身に付けたい問題解決の力は、「より妥当な考えをつくりだし、表現する」です。そのため、1つの実験だけで、「二酸化炭素が溶けている」と判断するのではなく、既習の内容を活かし、さまざまな実験を通して多面的に考えられるよう促しましょう。(安全指導)
⑤結果の処理
炭酸水をふるとあわが出てきたよ。
炭酸水をお湯につけるとあわが出てきた。
炭酸水から出てきた泡を集気びんに集め、火のついたろうそくを入れると、すぐに火が消えた。
炭酸水から出てきた泡を試験管の石灰水に通すと石灰水が白く濁った。
⑥結果を基に考察する
炭酸水をふったり、お湯につけたりすると泡が出てきたよ。炭酸水から出てきた泡を試験管の石灰水に通すと石灰水が白く濁って、火のついたろうそくを入れるとすぐに火が消えた。このことから、炭酸水には気体の二酸化炭素が溶けていることがわかった。
気体が溶けている水よう液があるということは、アンモニア水や塩酸も何かの気体が溶けている可能性があると思う。
⑦結論を出す
炭酸水には気体の二酸化炭素がとけている。
炭酸水には二酸化炭素が溶けていることがわかった。でも、本当に水に溶けるのかな?
気体が溶けている水よう液があるなんて初めて知った。アンモニア水や塩酸にはどんな気体が溶けているんだろう? 調べてみたいな。
食塩水と石灰水は、においもないし、熱すると白い個体が残ったけど、判別できないのかな?
学習の振り返りを子どもが書くときには、視点が必要です。①何を学んだか、②どのように学んだか、③生活や次の学習に活かせそうなこと、④疑問に思ったこと・調べてみたいことの4つを適宜提示するとよいでしょう。
次時の学習では、「二酸化炭素が、水に本当に溶けるのか」を調べていきます。発展的な学習ですが、この学習をすることで、より学びが深まります。実験方法は、以下の通りです。
①水を入れたペットボトル(炭酸飲料水用)に二酸化炭素(二酸化炭素缶)を集め、フタをして水そうから取り出す。
②ペットボトルをふり混ぜる。
③ペットボトルがへこむ。
④ペットボトルがへこむ=ペットボトル内の二酸化炭素が水に溶けたことになります。
どうして、ペットボトルがへこんだのか説明する際、イメージ図を用いると、実体的な見方がはたらきやすくなり、子どもが自分の考えを表現しやすくなります。
安全指導
実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。
【単元全体】本単元で掲示物をつくり、常に掲示しておくと便利です。
●薬品が目に入らないように、保護めがねをつける。
●薬品が手などについたら、水でよく洗う。
●やけどに気を付ける。
●火を使う場合は、必ずぬれぞうきんを準備する。
●燃え移りを防ぐために、袖をまくり、上着の前をとめる。また、髪が長ければ結ぶ。
【炭酸水の泡を発生させる実験】
●石灰水で調べる際は、二酸化炭素を通し過ぎると、白濁が消えることがあるので注意する。
●ろうそくを入れ、燃えるかを調べる実験では、水上置換法で気体を集める際、集気びん内に水を残す。
イラスト/難波孝