失敗しない!10月「折り返し地点」の学級経営完全ガイド
1年間の折り返し地点、それが10月です。学級経営に悩む先生方必見! 埼玉県公立小学校教諭の紺野悟先生が、半年経過時点での学級の振り返り方と、さらなる向上のためのポイントを詳しく解説します。朝の活動の工夫から給食システムの見直しまで、具体的な例を交えながら、学級の細部にこだわることの重要性と、そのバランスの取り方を分かりやすく伝授。新任からベテランまで、すべての先生方の学級経営スキルアップに役立つヒントが満載です。この記事を参考に、後半戦でより良い学級づくりを目指しましょう!
執筆/埼玉県公立小学校教諭・紺野悟
目次
折り返しの地点こそ、振り返りのチャンス!
10月です。学級開きから半年、1年間の折り返し地点に差し掛かったことになります。2学期制の学校はちょうど前期の終業式がありますし、3学期制の学校は2学期が始まって1か月たった頃にあたります。「折り返し」の言葉の通り、ここまで通ってきた道を改めて通るように、これまでの学級の出来事を振り返ってみる時期です。
どんな学級であろうとうまく行ったこと、いかなかったことがあります。
どんな先生でも、授業中に見切れなかった場面、様子があります。
どんな学級でもいじめのタネはあります。
普段は、忙しくて振り返る時間も気力もないことでしょう。私も実はその1人です。ですが、この折り返し時期だからこそ、よく考えてみることはとても効果の高いことです。学級の状態を見取り、解釈して、学級をより良い方向へ導いていけるからです。
振り返ることで、「見えていなかった様子」へ目がいくようになります。
振り返ることで、「目が行き届かなかったあの子」へ話しかけるようになります。
振り返ることで、「なんとなく進んでいた活動」へテコ入れをすることができます。
振り返ることで、「人間関係に気づき」いじめの早期発見につながるかもしれません。
このように、いろんなメリットがある振り返り。それが半年たった今だからこそできる、学級をさらにバージョンアップさせる出発点になります。それでは、行ってみましょう。
ある朝の活動から考えてみよう!
先日、私のクラスに転校生が来ました。そのとき、私(先生)の自己紹介を兼ねて、モジュールの時間(15分)でこのような活動を行いました。
活動①先生クイズ
さて、転校生の〇〇くんが来たことですので、先生クイズを行います! 先生が今からクイズを出します。わかっても答えを言わないでください。10秒後に「せーの」でタブレットで回答を見せてください。その後、答えを発表します。
全部で3問出します。正解したら左上の1・2・3に丸をしてください。この数字は問題1、問題2、問題3と言う意味です。質問はありますか?
【クイズ1】先生はサッカーが好きです。好きなチームはどこでしょう?
【選択肢】 A:浦和レッズ B:北海道コンサドーレ札幌 C:ザスパ草津群馬 *写真で提示
【答え】 A:浦和レッズ
【クイズ2】先生は、この学校に来て6年目です。さて、学校の先生としては何年目でしょうか?
【選択肢】 A:1年 B:11年 C:111年
【答え】B:11年
【クイズ3】紺野先生が毎年必ず教室でやっていることがあります。それはなんでしょう?
【選択肢】 A:筋トレ B:絵を描く C:読み聞かせ *写真を提示
【答え】 C:読み聞かせ
活動②友達クイズ
全問正解できましたか? 〇〇くんにも先生のことが少しわかってもらえたでしょう。次は、いま先生がクイズを出したように、みんなにクイズを出してもらいます。
ロイロノートを使って問題を2〜3問作ります。先生が出した問題を参考にしてください。質問はありませんか? それでは作成タイム3分です。スタート!
では問題を出し合います。ペアを作ります。じゃんけんをして勝った方から問題を出します。3問終わったら交代してください。先生が終わりと言ったら終わりにして席に戻ってください。それでは、始め!
活動③テーマdeトークwithウソ
最後に「テーマdeトークwithウソ」をやります。4つのカードを出します。そのカードに、次のことを書いてください(スライド右側に提示)。ただし、1つだけウソを入れてください。やることは分かりましたか? では書き始めましょう。
班のメンバーとじゃんけんをしてください。勝った人から順番に見せましょう。最後に「どれがウソでしょう?」と言いましょう。やることは、分かりましたか? それでは始めてください。
さて、これらのスライドを見て、どんな意図を感じられたでしょうか。単なる3つのアクティビティを並べただけではありません。もちろん転校生にとって学級へ少しでも入っていけるようにするための手だてが組み込まれています。が、それ以外にも、今の学級の状態も加味されています。夏休み明けから、朝の動きが鈍いのです。腰が重いのです。連絡帳を出しに来るだけで、立つ、歩く、カゴに入れるこの作業に、間に雑談、席に戻る、遠回りするような感覚があります。そんな学級のリズムを改善したいという思いがあります。
この二つの目的を達成するために、15分の朝のモジュールの時間を使って、このような活動を行いました。それぞれどんな意図があったのか説明していきましょう。
(1)先生クイズでデモンストレーション
転校生が来ると、必ずといっていいほど自己紹介をします。まず転校生がして、続いて学級の全員がします。今回は初めに先生クイズと題して、先生の自己紹介です。ですから、盛り上がることを想定しているのではなく、「②友達クイズはこうやるんですよ」というデモンストレーションを兼ねているのです。ましてや、朝のだらっとした雰囲気です。まだ眠っているような雰囲気です。ですから、スイッチを数人押すことができれば成功です。
(2)友達クイズでリズムをつくる。
全体で全員が自己紹介をする方法を選ばなかったのは、聞いている時間が保たないからです。だらっとした雰囲気を払拭したいという目的があります。ですので、リズムを生み出せるようなペアで交流を繰り返します。
そこで、「5人と交流してください。終わったら座ってください。」と指示したとします。すると、交流にリズムが生まれません。早い人は早く終わっておしゃべり、なかなかペアを作れない子が困っている。そんな状況に知っては逆効果です。
そこで、2分ごとにタイマーを鳴らしました。タイマーがなったらペアを作り問題を出し合うことにします。これを5回程度、様子を見て繰り返します。こうすることでリズムが生まれるのではないでしょうか。
(3)テーマdeトークwithウソで、考えて楽しむ。
ダレている学級は、考えることを放棄しています。考えることこそが楽しい学びのはずなのに、考えずに「分からない」とすぐ口にします。そこで、ウソを考えるという、普段だったらよくはないことをしてみます。前の活動でリズムを作りましたが、生活班グループで行うので、身体的な動きはありません。むしろ、脳を動かすイメージです。
このようなことを想定して、朝の活動を行いました。きっと、転校生は全員の名前を覚えられなかったと思います。でもそれは、全員の前で全員が自己紹介しても同じです。1回で全員の名前を覚えるのは至難の業ですから、少しずつ覚えていけばよいと思います。大事なのは、緊張を少し解いてあげること、次に、話すきっかけを少し作ってあげることです。
細部にこだわって取り組む
このような活動を考える際に、いろいろな視点をもって考えてプログラムしていることが分かりましたでしょうか。全ての活動、授業においてこうやって考えることは難しいことです。しかし、折り返しの今だからこそ、1つの授業だけ、1つの単元だけ、今回の例のようなアクティビティだけでもいいでしょう。細部にまでこだわって取り組むことで見えてくることがあります。
【ポイント1】アクティビティの順序
前述の通り、学級のスイッチの入らなさに課題を感じていて、転校生が来るという2つの視点から考えた活動でした。①でデモンストレーション、②で活動量のピーク、そして③授業へつなげていくための脳の活動量がピークになる。そんな想定です。
しかし実際は、想定していたことと少し異なりました。①先生クイズで食いつきが思いのほかよく、こっちを見て聞いてくれていました。スイッチが入っているなと思いました。「話を聞いてくれるとよく伝わるよね。みんながこういう表情だととってもうれしいし楽しいな」と行動に価値づけました。
これは、現状の教室を分析していたからこそできたことだと思います。もしかすると、何も考えていなくてもうまくいったかもしれませんが、的確に伝えられたのは、細部にこだわって準備したからだと思います。
同じように授業でも、細かいことにこだわってみてはどうでしょうか。机間指導のルート、説明の時間、交流の時間、説明の仕方など、細部にこだわるほど、授業技術が高まっていくはずです。
【ポイント2】説明から余計な雑味を抜く
たかが朝のアクティビティですが、スライドを作成したのは、余計な説明の雑味を抜くためです。説明が分からないと、活動はできません。いろんな学級を見ていると、先生の説明が下手でも、子どもたちがなんとなくで解釈してくれていることがあります。また、「えーっと」「あの〜」と、間に雑音が多い先生も結構います。案外聞きにくいのです。このチャレンジは、私自身が物事を短文ではっきり伝えられるようになるトレーニングのつもりでもあります。
このように、ことあるごとに言葉に気をつけていくと、だんだんと子どもたちが話を聞いてくれるようになります。自分の説明に雑味はないか、動画でもとってみてもいいかもしれません。折り返し地点ですから。
なんとなく進んでいる学級システムを定期点検しよう!
なんとなく行っている朝の会。なんとなく取り組んでいる掃除活動。4月はあんなに指導したのに、今では何も声をかけない。かけたとしても「ちゃんとやりなさい!」になってはいないでしょうか。家の火災報知器の点検が年1回行われるように、システムには定期点検が必要です。
例えば、チェックリストを作りましたので、確認してみてください。
これらの点で見ていくと、現時点での学級の問題点が見えてきます。その問題点を解決していけばよいのですが、学級の場合、点検後に先生だけじゃなくて学級の子どもたちが直していかなくてはなりません。
例えば、〈準備中、トイレや水道から2分以上帰ってこない人がいる〉学級なら、それは今日遊ぶ約束をしに他のクラスに行っているかもしれません。トイレでコソコソ話しているかもしれません。どちらも改善が必要です。また、〈いつも同じメンバーで手洗いに行っているグループが1組でもある〉場合、全体の利益よりも個人の利益の優先順位が上回ってしまっています。ということは、給食当番だとしても、友達とトイレを優先してしまい全体が遅くなりかねません。
これらは、システムの機能度を急激に低下させる恐れのある行動です。点検で発見し、修正をしていきましょう。
給食システムを見直した例
数年前の私の学級では、給食の準備に課題がありました。そこで、上記のチェックリストを行うと以下のような問題点が見えてきました。
- 4時間目が終わって食べ始めるまでに何分かかりますか?
手洗いに行ってから、戻ってくるまで最初の人と最後の人のタイム差は?いつも同じメンバーで手洗いに行っているグループは何組ありますか?配膳開始から終了まで何分かかりますか?- 準備中、トイレや水道から2分以上帰ってこない人は何人いますか?
- 「あ、当番だったの忘れてた!」という人は週に何人いますか?
給食着は綺麗に畳んであると言えるのは何着ですか?給食セットを忘れてくる人は1日何人ですか?
これらにより、
①4時間目終わりから、準備開始までに5分かかってしまっている。
②よって配膳は遅くないが食べる時間が減ってしまっている。
③自分の役割を忘れている人もいる。
ということを解消することにしました。
子どもたちと話し合い、以下のような表を作成しました。
子どもたちと話し合っていくと、水道の数が限られているので混んでいることによって、時間がかかっていることが見えてきました。そこで、水道にいく時間をずらすことにしました。食缶を運ぶ人たちを優先して先に手洗いをするようにすると全体の利益になることを確認しました。そこで、誰が、どう動いたら準備が早くなり、ゆっくり食べる時間が生まれるかを話し合い、このような順番で行うことになりました。
細部を再確認して修正する
学級のシステムの最大目的は円滑な学級運営です。改札がICカードで通れるようになり、タッチすれば電車に乗れるようになりました。このシステムは円滑に改札を通れるようにしてくれています。このように、円滑なシステムは快適さを生みます。
そのためには学級の子どもたちと合意しながら進めることが大切です。今回の給食システムの例で言えば、「早く食べられる方がみんなにとってよいこと」であることを確認して、合意した上で進めます。「こうすればうまくいくんじゃないか?」というアイデアは子供たちからも出しますが、先生からも提示します。
細部にこだわりすぎてはいけない!
さて、ここまで細かいことまでよく見て、課題を解決していきましょうということを述べてきました。最後に、こだわりすぎないということを提案します。細部は置いておいて、偶発性も楽しみましょう、ということです。
快適なシステムには余白が必要です。ICカードしか使えない電車は、快適なようでそれはそれで困ることもあります。完全なセルフレジでは困ることもあります。偶発的なことにも対応できるように、85%をめざしましょう。当番の仕事をどうしても忘れてしまう子には、先生が教えてあげることが時には必要です。給食システムの順番通りじゃないことにもめてしまっては、余計時間がかかってしまいます。
大事なことは、ここはこだわるけど、ここは偶発的なものに身を任せてみようと分けてみることです。
いかがでしたか。ぜひ、こだわってみるポイントを見付けてみましょう。そして、ここは任せてみようというポイントも見付けてみましょう。1年の折り返し地点だからこそ、分けて考えてみることによって、今後の学級経営がより楽しく、素敵な時間を過ごせるようになるはずです。
執筆者:紺野悟(こんの・さとる)
埼玉の教育サークル clover 代表。イベントを数多く企画・運営し、価値ある教育情報を広めている。共著『全単元・全時間の流れが一目でわかる!社会科 6 年 365 日の板書型指導案』(明治図書出版)他多数。
大好評! 紺野悟先生の『完全シリーズ』はこちらからご覧ください。
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