小6国語「模型のまち」板書の技術
今回の教材は、「模型のまち」です。本単元では、「表現に着目して読み、考えたことを伝え合おう」という目標を設定。物語の題名や、くり返し出てくる表現、情景描写などに着目しながら、「表現の効果」を捉えることをめざします。そのため、表現に着目できるような板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂
教材名 「模型のまち」(東京書籍)
目次
単元の計画(全5時間)
- これまでの学習を確かめ、単元の学習の見通しをもつ。
- 「模型のまち」の構成を捉え、登場人物を確かめる。
- 表現の効果について考える。
- 物語を読んで、感じたことや考えたことを伝え合う。
- 単元の学習を振り返る。
板書の基本
「模型のまち」は、広島在住の作家、中澤晶子さんの戦争文学です。子供たちにとって当時の状況を想像するのが難しいなか、まるでその当時を体験したかのような、「自分ごと」として考えることができる作品となっています。現代の小学生が主人公の作品です。
この単元では、「表現に着目して読み、考えたことを伝え合おう」という付けたい力を設定し、子供たちと確認しました。
これまでに、5年生での「注文の多い料理店」で「表現のくふうをみつける」、4年生での「一つの花」で「物語のだいじな言葉に着目する」学習を積み重ねています。
5年生の表現の工夫では、
・音や様子を表す言葉
・色を使った表現
・たとえを使った表現
・同じ言葉や文がくり返し使われているところ
・複数の意味がこめられている表現
を見付けて学習してきました。
そこで、今回は、物語の題名や、くり返し出てくる表現、情景描写などに着目しながら、「表現の効果」を捉えることをめざします。
板書では、毎回学習用語の短冊カードを生かすようにします。学習を振り返る際に、短冊にした「学習用語」のカードを作成しておきます。この短冊は、単元の学習後、「言葉の宝箱」として掲示物にすることで、1年間意識して学習につなげることができるようになります。今回は、「色彩表現」「物語の題名」「くり返し出てくる表現」「情景描写」を活用しました。また、以前に物語の学習で活用していた「場面」「設定」「山場」「冒頭と結末」などのカードも活用できます。
板書のコツ(2/5時間目導入)
板書のコツ
今回のめあては、「物語の構成について考えよう。」です。付けたい力である「表現に着目して読み、考えたことを伝え合おう」は毎回、確認するようにします。
板書のコツ(2/5時間目中盤)
板書のコツ
その後、物語の構成は何かを確認して、「時」「場所」「人物(登場人物)」の大きく3つで分けました。この教材は長文なので、あらすじ理解も含めて基本的なことをまずは確認しました。場面分けがもともとされている教材ですが、この項目で見ていくと全体像も見えてきます。そこから、1から8場面までを時で分けて読んでいきました。
板書のコツ(2/5時間目後半)
板書のコツ
このように、1から8場面まで、確認しながらノートにもまとめていくなかで、子供たちが書きながら気が付くことがありました。それは、1場面と8場面の始まりです。1と8場面は現在で始まる「今」からスタートして、再度また8場面で「今」に戻っているということでした。その気付きは赤色の矢印で表現しました。そして、「いま、むかし、いま、むかし。」という表現もつなげて考えていたので、板書することで全員が「表現に着目」できるようにしました。
板書のコツ(3/5時間目前半)
板書のコツ
今回のめあては、「表現の効果について考えよう。」です。「表現のくふう」については、5年生の「注文の多い料理店」でも学習しています。
初発の感想の交流にて、「ビー玉」「模型のまち」という言葉に注目している子供たちが多かったので、この2つの言葉を表現している部分を見付け、交流していきました。
板書のコツ(3/5時間目中盤)
板書のコツ
教科書に線を引きながら、子供たちはそれぞれの表現に着目していきます。
このようにまとめていくことで、子供たちは「まち」がひらがなになっていること、題名とつながっていること、色彩表現されていることなど、気付きが増えていきました。そして、ここで「『ビー玉』『模型のまち』は亮にとってどんなものだったの?」と発問しました。
板書のコツ(3/5時間目後半)
板書のコツ
すると、「亮を変化させたもの」「今と昔をつなぐもの」「戦争について考え、自分事にしてくれるもの」という意見が出てきました。それらの意見をまとめていくことで、子供たちが「表現に着目して読み、考えたことを伝え合う力」につなげていきました。
構成/浅原孝子