「コミュニケーションが向上するゲームをしよう」対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり #8
コロナ禍以降、コミュニケーションに苦労する子供や人間関係の希薄な学級が増えていると言います。子供たちが深い絆で結ばれた学級をつくるには、子供同士の関わりをふんだんに取り入れた対話型授業と、子供たちが主体的に取り組む自治的な活動が不可欠です。第8回は、コミュニケーションのトレーニングについて解説します。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
学級に合った実践を見つけ、定期的に取り組もう
絆のある学級とは、人間関係が良好な学級といえます。そして、人間関係の基盤はコミュニケーションです。
もともと性格的にコミュニケーションが得意、うまい人がいます。しかし、もって生まれたもので全てが決まるわけではありません。コミュニケーションが苦手な人であっても、実生活での人との関係で様々に試行錯誤し、そうした経験の中でよりよい方法を学んでいくことが可能です。
子供たちにとって、学級活動や学校行事はそうした有効な場となるでしょう。
ただし、場数を踏むだけではなく、ちょっとしたコツ、技術を知っていると、コミュニケーション能力はより向上します。人間性や性格はなかなか変わりませんが、技術は練習によって上達するからです。
コミュニケーション能力を高める取組には、様々なものがあります。ソーシャルスキルトレーニング、構成的グループエンカウンター、アサーショントレーニング、ピアサポート、グループワークトレーニングなど、みなさんも聞いたことがあると思います。
学問的には、それぞれは異なったものなのですが、実際に実践する上では、さほどその違いを気にする必要はないと思います。
今挙げたようなキーワードで、書籍やネットの情報を探ってみれば、人間関係づくり、コミュニケーション能力アップのための様々なゲームやトレーニングを見つけることができるでしょう。
そうした中から、自分のクラスで取り入れたらよさそうなものを、定期的に実施していくようにしましょう。
コミュニケーションが上達するゲーム4選
今回は、その導入編として、取り組みやすく、楽しいゲームを紹介していきます。
ただし、円滑なコミュケーションのための技術習得を目指したゲームですので、やりっぱなしではいけません。活動の振り返りをしっかりと行うことが大切です。そのため、いずれのゲームも、次のような流れで行います。
1.ゲームの説明
本日行う活動のやり方や意図について説明する。
2.ゲームの実施
実際にゲームを行う。
教師は活動の振り返りで取り上げたい、模範的なグループや特徴的な児童を探したり、活動が円滑に進むように援助したりする。
3.活動の振り返り
どのようなことを学んだのか、今後役立ちそうなことは何か、今回のゲームにおいて活躍した人はいないかなどを振り返る。
それでは、すぐに取り組めるゲームをいくつか紹介していきます。
質問じゃんけん
【進め方】
①二人組をつくる。
②じゃんけんをして、勝った人が負けた人に質問をする。
③負けた人はその質問に回答する。
④1分程度でペアを入れ替える。
⑤振り返りをする。
質問事項はあらかじめ板書しておきますが、慣れてきたら板書していない質問でもよいことにしましょう。
【質問例】
・好きな食べ物は?
・好きな勉強は?
・行ってみたい場所は?
・好きな給食のメニューは?
事前に、相手の回答には常に肯定的な反応をするということを約束しておきましょう。そして、聞き手が肯定的だと話しやすいということを実感させましょう。
質問、回答が終わったら、再度じゃんけんをします。同じように質問、回答を繰り返します。
1分程度で、ペアを入れ替えます。男女で組ませたり、普段話をしない人とペアにさせたりします。このように、普段親しくない人とも話をすることも、コミュニケーションのよいトレーニングになります。
最後に活動の振り返りをします。何人かに気付いたことやこのゲームをしてよかったことなどを発表してもらいます。「質問することで、相手の新たな一面が分かる」「肯定的に聞いてもらえると話しやすい」などの感想を取り上げるとよいでしょう。
聖徳太子ゲーム
3文字の言葉を、3人が1文字ずつ担当し、一斉にその文字を発声し、他のチームがそれを聞き取るゲームです。
【進め方】
①3人グループをつくる。
②1つのグループが出題し、他のグループが解答することを確認する。
③合図に合わせて、出題グループは一斉に声を出す。
④他のグループは3人で答えを相談し、解答用紙に書く。
⑤答え合わせ後、次のグループが出題する。
⑥振り返りをする。
出題するグループは、教室前に横一列に並びます。1人が1文字を担当し、同時に声を出します。
出題する言葉は、それぞれのチームで考えます。それも大切なコミュニケーションの場となります。
活動の振り返りでは、集中して聞くことの大切さや、グループで問題を考える際に課題となったことやうまくいったことなどを確認しましょう。
感情あてゲーム
【進め方】
①感情を表す言葉を、学級全員で考え、それを教師が板書する。
例:「うれしい」「悲しい」「はずかしい」「楽しい」など
②各自がどれか1つの感情を選び、その感情を表す表情を考え、練習する。
③希望者1名が前に出て、考えた表情をする。
④他の子はその顔を見て、どんな感情を表しているのかを解答する。正解が出たら、次の希望者が出題する。
⑤振り返りをする。
振り返りでは、相手の感情を察するために、表情をしっかりと見ることが大切だといったことに触れましょう。
図形伝達ゲーム
【進め方】
①二人組をつくる(一人が出題者、もう一人が解答者)。
②出題者は、教師のところに集まり、教師が示した図形を覚え、それを言葉だけで解答者に伝える。
※ジェスチャーは禁止。教師が示す図形は、三角や四角を組み合わせた単純なものがよい。
③解答者は話をしっかりと聞き、図形を紙に書いて再現する。
④図形を書き終わったら、教師の書いた図形と比べる。
⑤次に役割を交代し、もう一度ゲームを行う。
⑥振り返りをする。
振り返りでは、うまく書けたペアに、なぜうまくいったのか、そのコツや工夫などを発表してもらいます。
まとめ
今回紹介したゲームは慣れればどれも短時間でできるものです。技術は繰り返すことによって定着するものです。1度だけやってそれで終わりではなく、毎週1回は朝の会で取り組むなど、定期的に実施できるようにしていきましょう。
また、いつも固定したペアやグループでやるのではなく、どんどん組み合わせを変えていくことで、学級全体の人間関係が良好になっていくことが期待できます。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/イラストAC
【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
保護者を味方にする学級経営術(全13回)
【瀧澤真先生ご著書】
まわりの先生から「むむっ!授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。(学陽書房)
まわりの先生から「おっ!クラスまとまったね」と言われる本。(学陽書房)