小2特別活動「いろいろな本を発見!楽しい読書」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小2特別活動「いろいろな本を発見!楽しい読書」指導アイデア バナー

前文部科学省視学官監修による、小2特別活動の指導アイデアです。10月は、学級活動(3)ウ「いろいろな本を発見!楽しい読書」を紹介します。

秋になり、各学校で読書を推奨する取組が進められている頃かと思います。絵本など比較的短い物語が読みやすく、子供たちには人気がありますね。子供たちによっては、絵本など好きな本の分野を多く読んでいると思います。そこで、学級活動(3)ウの授業で、専門知識をもつ学校図書館司書から図書室の中にある本を紹介してもらい、「もっといろいろな本を読んでみよう!」という子供たちの姿を引き出しましょう。いろいろな分類の本に触れることで、「考える力」や「感じる力」「表現する力」などを育てるとともに、自らの心を耕すためのアイデアを紹介します。

執筆/埼玉県公立小学校教諭・佐藤絵里香
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
 埼玉県公立小学校校長・野村佐智夫

年間執筆計画

年間執筆計画はこちらをクリック

04月 学級活動(1) どうぞよろしくの会をしよう
05月 学級活動(2)ア 身の回りの整理整頓
06月 学級活動(1) クラスの歌をつくろう
07月 学級活動(1) 1学期がんばったね会をしよう
09月 学級活動(1) 係をきめよう
10月 学級活動(3)ウ いろいろな本を発見!楽しい読書
11月 学級活動(1) クラスの記録大会をしよう
12月 学級活動(2)ウ 病気の予防
01月 学級活動(1) クラスのカルタを作ろう
02月 学級活動(3)ア もうすぐ3年生
03月 学級活動(1) 思い出集会をしよう

本実践までの本学級の状況

子供たちは、国語の学習の図書の時間に本に親しむことを楽しみにしています。1時間に2冊まで借りるなど、図書室にある本をどんどん読む様子も見られます。人気のある本はなかなか借りられずに、順番待ちをしている様子も見られます。

一方で、子供の手にする本の量には個人差があり、読む本の種類にも偏りが見られます。子供の手にする本を見ていると、主に物語や絵本が多く、読み物として楽しむことが目的になっており、興味や疑問をもった調べ学習の際に使われる図鑑や辞典などをあまり手に取っていないようです。

事前の指導

読書に関するアンケート調査を行う

質問項目例
①本を読むことは好きですか。
②どのくらい本を読みますか。
③どんな内容の本をよく読みますか。

読書アンケート

自分たちの読書に関する現状を知ることで、問題解決への意欲につなげます。

アンケート調査の結果をまとめ、掲示しておく

事前にアンケート結果を掲示しておくと、題材について関心をもって生活したり、問題意識を高めたりすることができます。

学校図書館司書と事前に打合せをする

アンケート結果をもとに、学校図書館司書にゲストティーチャーとして本時の授業の協力を依頼し、以下のような内容について事前に打合せをしておきます。

【学級担任】アンケート結果を見ると、物語をよく読む子が多いようです。図書室での様子を見ていても、絵本のように短い本を好んでいるように思います。もっといろいろな本があることを知ってほしいなと思っています。

【学校図書館司書】そうですね。図書館は広いので、子供たちはどのような種類の本があるのか、わからないかもしれません。選択肢が多すぎて、いつも読んでいる本を手に取ってしまうこともあります。

教室で本の紹介をしてもらうことはできますか。子供たちが興味や関心をもちやすいような本を何種類か選んでもらって、実際に手にとることができるようにしたいです。

分かりました。比較的読みやすいものを選びますね。例えば、歴史やスポーツ、宇宙、学校に関する本はどうでしょうか。

いいですね。グループは6グループです。今後、調べ学習で学校図書館を使用したいので、図鑑や辞典なども紹介してもらえますか。また、紹介の時間は5分でお願いしたいのですがいかがでしょうか。

学級活動(2)(3) ここがポイント!その3
【ゲストティーチャーとの連携】

本実践のような学校図書館司書との連携だけでなく、以下のような校内のゲストティーチャーとの連携も考えられるでしょう。

①健康な体についての指導:養護教諭との連携
②食育に関する指導:栄養教諭との連携
③心の健康に関する指導:スクールカウンセラーや養護教諭との連携

その場合、必ず事前の打合せを通して、役割や内容などを明確にしておく必要があります。そのようにすることで、発達の段階に合った内容を話してもらうなど、授業の進行がスムーズになるだけでなく、ゲストティーチャーの方も安心して授業に参加することができます。
また、単に授業の一部の時間で話してもらうのではなく、TTで行うとより効果的です。本時の展開の中で、それぞれの役割を明確にすることが大切です。

※「学級活動(2)(3)ここがポイント!その1&その2」は、小2特別活動「身の回りの整理整頓」をチェック。

本時のねらい

図書室にある本は、内容ごとに分類・整理されていること、その時期に合ったおすすめの本が紹介されていることなどを確認し、様々な種類や内容の本に親しもうとする態度を育てる。

本時の指導

※本実践は、教室で行いました。図書室で行うよさはあるのですが、選択肢が増えすぎてしまい、ねらいに迫り難いことが考えられるためです。事後に図書室で本棚ごとのにどのような本が置かれているか、その場所を確認する図書室ツアーを行うとよいでしょう。

〇[つかむ]…学級の読書についての実態や自分の課題を把握する

学級の読書についての実態を把握します。事前にとったアンケート結果を掲示しながら、学級全体の問題意識を高めていくようにします。前日に結果を提示しておくことで、本時の[つかむ]で時間をかけすぎずに、概要と傾向を分かりやすく確認することができるようになります。

そして、自分の読書の量や分野の片よりなど、自分の課題に気付くことができるようにします。

〇[さぐる]…学校図書館司書から図書室にはいろいろな本があることを紹介してもらう

学校図書館司書に図書室にはいろいろな種類の本があることを紹介してもらいます。また、その中から1冊を読み聞かせしてもらいます。

このようにすることで、子供たちは図書室の中にはいろいろな種類の本があることを知り、「見てみたい! 読んでみたい!」という思いが高まるようになります。

【学校図書館司書】0類には、みんなが知りたいことを調べられる本があります。例えば、辞典がありますよ。

みなさん、遊ぶことは好きですか。クラスで新しい遊びがしたいなと思ったら、7類に遊びやスポーツのことを知ることができる本があります。

※〇類といっても、2年生の子供たちにはなかなか理解できないと思いますので、写真やスライドで図書室の様子を示すとよいでしょう。図書室で行うことも考えられます。

絵本の読み聞かせをする学校司書

「できていない、うまく取り組めないのはなぜか」という視点では、課題の解決に向かう話合いになるので、なりたい自分に向けて、今、取り組むことの1つが「いろいろな本を発見!楽しい読書」という本取組であることを理解できるように話をします。

例えば、これまで読んでこなかった種類の本を読んでみる、いろいろな昆虫の本を読んでみるなど、本を選ぶ視点を多様にもてるようにします。

子供の実態や発達の段階に応じて紹介する本の種類を精選すると、子供たちの興味・関心が高まるので、学校図書館司書との事前の打合せがとても大切です。

〇[見つける]…グループでおすすめの本を話し合い、みんなに紹介する

今回は、学校図書館司書が選んだ本をグループに割り振り、どんなことが書かれているか見て、感想を伝え合うとともに、いろいろな種類の本があることに気付き、グループ内で情報交換をします。

「こんな本があったよ!」とみんなに紹介してもらうことを伝えて、本に触れる時間を確保します。グループの友達と読み合いながら、他のグループに伝えたい本のよさを考えます。その後、他のグループの友達に本を紹介します。

一人一人が自分が紹介する本のおすすめポイントを伝え合いやすくなるように、4名程度でグループを編成するとよいでしょう。

グループでの話合いの後に、その内容を共有できるよう全体での話合いを行います。全体での話合いの際に各グループによる発表を行うので、発表者を1名決めるように事前に伝えておくと、「みんなに紹介したい本のおすすめポイントはどれか」を考えながら聞くことができます。

グループ内で本を紹介し合う子供たち

※自分が選んだおすすめの本をグループの友達と紹介し合うことも考えられます。また、同じジャンルの本を4~5冊ずつグループ分を用意し、順に読んでいくやり方も考えられます。

◆板書例

小2特別活動「いろいろな本を発見!楽しい読書」指導アイデア 板書例

〇[決める]…自分の実践目標を意思決定する

ワークシートに自分の目標を記入します。今までの自分の読書をもう一度振り返り、本の種類の片よりや量など、自分に合った具体的な目標を立てるように助言します。

ワークシート「楽しさ発見!図書室探検隊」がんばりカード

※資料1 ワークシート「楽しさはっ見!としょしつたんけんたい」がんばりカードは、下記ボタンからダウンロードできます。

みなさんいろいろな種類の本のおすすめポイントを見つけるできましたね。今まで読んだことがなかったけれど、面白いと思った本や興味がある本があったと思います。そこで、明日から1週間もっといろいろな本と出合えるように自分ができそうなめあてを決めて、ワークシートに書きましょう。

わたしは、動物が好きだから、動物が出てくる本を毎日1冊探して、読んでみようかな。

ぼくは、今まで絵本ばかり読んでいたから、おすすめコーナーの本を1日1冊読んでみようかな。

書き終わったら、友達と隣同士で、自分が立てためあてを見せ合ってみましょう。振り返りができるめあてになっていますか。

回数、時間など数字を用いて表すと、取り組みやすく確認しやすいことを伝えます。振り返りができるめあてになっているか確認することもやりやすさにつながります。また、様々な種類や内容の本を手に取ることをねらいとしているので、本時では最後まで読み終わらなくてもよいことにしました。

事後の指導

図書室で本を選んだり、本を読んだりする子供たち

毎日の取組を終える度に、頑張りカードに記入する

一定期間の取組を終えた後、振り返りを行い、実践について見届けをし、今後も継続した取組となるよう声かけをしていきます。うまく取り組めない子供を個別に励ましたり、他の子供の取組を紹介したりすることで、意欲の継続化を図ります。

読書の木に取り組む

模造紙などに描いた大きな木のイラストに、自分のおすすめの本を用紙に書いて貼っていくことで、本を選択するときの拠り所になるようにすると継続的な取組につながります。

イラスト/高橋正輝、イラストAC

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