小学校理科「知識・技能」の技能面の評価って、どうすればいいの?【理科の壺】
授業における評価の観点については、国立教育政策研究所の評価資料や教科書会社から出ている教師用の資料など様々ありますが、具体的にどのように評価するかについては、各学校や先生方に任されています。そのため、子どもたちの状況や単元内容、先生の考え方によって評価の方法が結構異なっています。また、指導法の研修はあっても、評価の研修はなかなかないかと思います。皆さんはどのような方法で評価をしているのでしょうか。今回は、「知識・技能」における、技能面の評価方法についての紹介になります。ご自分の方法と比べながら、よりよい方法を考えてみるのもいいですね。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校教諭・蒲生友作
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
皆さんは学習評価をどのように行っているでしょうか。評価には「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」がありますが、中でも「知識・技能」の技能面における評価は、なかなか難しいのではないかと思います。今回はその方法について、考えていきたいと思います。
1.知識・技能の技能面の評価について
知識・技能での技能面での学習評価について、国立教育政策研究所教育課程研究センター(2021)の『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校 理科』p33~44において以下のように示されています。
第3、4学年
「(A)について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を分かりやすく記録している。」第5、6学年
「(A)について、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。」(A)は、「内容のまとまり」における学習の対象を示しています。例えば、第6学年「燃焼の仕組み」ならば、(燃焼の仕組み)が(A)となります。
国立教育政策研究所教育課程研究センター『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校 理科』
2.具体的な技能の評価
⑴ 器具や機器などを正しく扱うこと
評価規準にある「器具や機器などを正しく扱う」ことについて評価する場合は、1時間の中で評価することは難しいかと思います。単元の中で何度かある観察、実験の中で見ていくとよいでしょう。観察カードやノートやワークシートなどに書かれた実験結果などの記録の中にヒントがあることもあります。例えば、3・4年生で植物の観察を行った際に、対象物の大きさを正確に測ることができていたり、温度を正確に測ることができていたりする場合は「適切に記録している」だけではなく、器具や機器を正しく扱うことができているかと思います。(ただし、友だちの記録を写している可能性もあります)
反対に正確に記録できていない場合は次回の観察の際に、その子どもがどのように器具や機器を扱っているか注意深く見て、できていなければ指導しましょう。教師の指導改善や児童の学習改善につなげることができます。
また、グループでの実験の場合は1人1台端末で動画を撮っておくと、子どもが実験の様子を振り返る他にも教師が見ることで正しく器具や機器を扱っているかを評価することができます。
第5・6学年においては「目的に応じて器具や機器などを選択する」ことも評価の対象となります。教師は実験器具を子どもたちが考えるよりも先に準備をしておいて出すことが多いと思いますが、子どもたちに選択させる機会もつくるとよいでしょう。例えば、第5学年「電流がつくる磁力」で電磁石の強さを変える実験では、電流の大きさを測るために検流計を使うことを選択できるかどうかをみるために、準備せずに子どもたちがどのような器具や機器を用意したらよいか考えさせて評価することも大切であると考えます。
⑵ 観察、実験の過程や得られた結果を分かりやすく(適切に)記録する
「観察、実験の過程や得られた結果を適切に記録する」ことの評価はどうしたらよいでしょうか。観察カードを見て、生き物が色、大きさ、形などが分かりやすく記録されているか、などは教師にとっても評価しやすいと思います。
では、実験の記録を評価する場合にはどうしたらよいでしょうか。
第3・4学年では記録することに関して、教師が指導をしていく中で分かりやすく記録できているかどうかを評価しましょう。
例えば、第3学年「風とゴムの力の働き」において、子どもたちは表に実験の記録を行います。
そのときに、教師が表を示したり、ワークシートに表が書いてあるものを使用したりすると思います。
3・4年生のときはどのように結果を整理していくかについては、教師の指導が大切になってきます。しかし、いつまでも表を示すのではなく5・6年生になったときにはどのように結果を整理していくかも子どもに委ねてみるのはどうでしょうか。
例えば、第5学年「振り子の運動」において、自分の実験結果については以下の表のようにまとめると思います。
しかし、平均は自分で計算をして「1往復する時間」だけまとめて、さらに他の班の結果も整理しようと考えた以下のような整理の仕方はどうでしょうか。
他の班の結果についてもまとめられる子どもは、「実験の過程や結果を適切に記録している」と言えると思います。今までの経験からどのように整理したらよいか考えて、まとめている。また、考察しやすくするために他の班の結果についても自分の班の結果と並べてまとめている姿は、まさに「実験の過程や結果を適切に記録している」ではないかと思います。
このように学年ごとの評価規準に合わせて、子どもたちにまかせて評価してみるのはいかがでしょうか。
イラスト/難波孝
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<執筆者プロフィール>
蒲生友作●がもう・ゆうさく 東京学芸大学附属小金井小学校教諭。東京都公立小学校教員を経て、現職。公立小学校教員のときは東京都の理科に関する授業研究に広く携わる。東京都小学校理科教育研究会リーダー研究推進委員、東京都教師道場助言者、東京都教育研究員、東京都研究開発委員など。共著に『GIGAスクールに対応した小学校理科1人1台端末活用BOOK』(明治図書)、『小学校理科フローチャート型授業ガイド』(東洋館出版)など。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。