小3特別活動「家庭学習パワーアップ大作せん」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小3特別活動<9月>
タイトル

前文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。9月は、学級活動(3)ウ「家庭学習パワーアップ大作せん」の実践を紹介します。

自分に合った家庭学習の方法について目標を立てることで、主体的な学習態度を形成することをねらいとしています。実践を通して、学習の進め方や、自分に合った学習方法について改めて考えることで、主体的に学習に取り組む態度を養うことを目指します。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・門別整
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
 日本体育大学教授・橋谷由紀

年間執筆計画

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4月 学級活動(3) ア 3年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ ぼうさいマスターになろう
7月 学級活動(1) なかよし集会をしよう
9月 学級活動(3) ウ 家庭学習パワーアップ大作せん
10月 学級活動(1) 係発表会をしよう
11月 学級活動(1) クラス運動会をしよう
12月 学級活動(1) 今年もがんばったね集会をしよう
1月 学級活動(2) エ よくかんで食べよう
2月 学級活動(3) イ スッキリそうじ~みんなのためにきれいに~
3月 学級活動(1) ありがとう集会をしよう

学級活動(3)ウの指導について

学級活動(3)ウは、学習することの楽しさや価値に気付き、自分に合った効果的な学習方法や、学ぶことが将来の自己実現にどうつながっていくかについて考え、生涯にわたって主体的に学び続けようとする態度を養うことを内容としています。
子供たちが自ら進んで学習に取り組むことや、見通しをもって粘り強く取り組むこと、学習活動を振り返って次に生かすことなどができるように、自分に合った具体的な目標を立てられるようにしましょう。

各教科等との関連について

学習指導要領解説(特別活動編)には、各教科等を学習する意義や学習習慣の定着に向けた取組や学習を深めるための資料の活用など、主体的に学ぶための方法や工夫などについても意思決定することができるような工夫が望まれると示されています。
社会科や理科、総合的な学習の時間などの新たな教科等が加わり、学習内容が増える3年生では、学習の仕方や自分に合った学習方法について考えることが大切です。

学級活動(3)の一連の学習過程について

一連の学習過程については、学習指導要領解説(特別活動編)には、「①問題の発見・確認」「②解決方法等の話合い」「③解決方法の決定」「④決めたことの実践」「⑤振り返り」、そして、「次の課題解決へ」と示されています。簡易的に示すと次のようになります。

図表1

また、特別活動指導資料にある意思決定に向けた本時の学習については、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つの段階の学習過程を重視しています。子供たちの成長やよさを認め合ったり、話合い活動の場を設けたりすることで個々の考えや可能性を広げ、強い決意をもって実践することができるようにすることが大切です。

【つかむ】…課題の把握
→アンケート結果をもとに、家庭学習に対する課題を把握します。

【さぐる】……可能性への気付き
→これまでの自分を振り返り、「なりたい自分」について自分の願いをもち、よさや可能性をさぐります。

【見つける】……解決方法等の話合い
→学級のみんなで家庭学習の方法や内容、工夫などについて話し合い、よりよい意思決定につなげます。

【決める】……個人目標の意思決定
→強い意志をもって、一人一人が自分に合った具体的な解決方法やめあてを決めます。

事前の指導

これまでの学習に対するアンケート調査を行います。自分の現状や目指す姿について考えたり、調べたりして、課題意識を高められるようにします。

本時のねらい

本題材では、自分に合った家庭学習の方法について目標を立てることで、主体的な学習態度を形成することをねらいとしています。
3年生では、国語で学習する漢字の数が増えたり、社会科や理科など新しい教科が加わったりするなど、学習内容が増えます。また、実際に行って調査したり、観察したりすることも多く、知的好奇心が高まります。そこで、本題材の実践を通して、学習の進め方や、自分に合った学習方法について改めて考えることで、主体的に学習に取り組む態度を養うことを目指します。

つかむ

今までの自分の家庭学習に対する時間のかけ方について振り返り、課題をつかむ。

①事前に取ったアンケートの結果をもとに、家庭学習に対する自分たちの課題に気付く
これまでの家庭学習を振り返るとともに、これからどのような成長をしていきたいかについてアンケートを取ります。このアンケートからは、家庭学習に対する自分自身の現状を把握することができるようにします。
授業では、アンケートの結果を提示し、学級の子供たちが、「これからもっとがんばりたい」と回答していることに焦点が当たるようにします。そこから、家庭学習の取り組み方への意識を高めることができるようにしましょう。
学級の子供たちの中には、進んで家庭学習に取り組むことができている子供たちもいます。これらの子供たちも、本題材について意欲的に取り組むことができるように価値付けをするとともに、これまでよりもさらに成長するためには、どのように家庭学習に取り組むとよいかを考えるよう声掛けをすることがポイントになります。

アンケート結果を見て、気付いたことはありますか?

家での学習もしっかりできている人がたくさんいるね。

家で、30分以上学習に取り組んでいる人もいるんだね。

だけど、もっとがんばれると思っている人もいるよ。

私もテレビやゲームが気になってしまい、時間がかかるときがあるよ。

さぐる

各教科等の学習を続けたり、家庭で学習に取り組んだりすることのよさについて考える。

②各教科等の学習を続けたり、家庭で学習に取り組んだりすることで、どのようなよいことがあったり、成長できたりするのかを話し合う
これまでの学習を振り返り、学校での教科等の学習や家庭での学習を進めてきて、自分ができるようになったことや成長したことなどを伝え合います。それぞれどのような学習をしてきたかをまとめ提示することで、子供たちがより自分の成長を感じられるようにしましょう。また、今の学びが将来につながっていることや、将来なりたい自分になるためには、今がんばることが大切なのだということも実感できるよう、教師が問いかけ、子供たち自身が考えられるようにすることも大切です。

見つける

これから家庭での学習を充実させるためには、どのようにすればよいか考え、話し合う
具体的な個人目標の意思決定を行うために、家庭でどのように学習に取り組んでいくとよいかを話し合います。具体的な目標をもつことができる手立てとなるよう、「学習する時間」「学習する量」「学習の取り組み方」など、項目を提示し、整理しながら板書することがポイントです。

家での学習をさらにパワーアップするためには、どのようなことに取り組むとよいでしょう。

反対意見や心配意見ばかり出てしまうとき

よりよい解決に向かっていくには反対意見ばかりでいいか、考えてみよう。

ぼくは、集中して勉強するために、30分間など時間を決めて、漢字や計算の練習など、がんばりたいことに取り組むとよいと思います。

わたしは、計算がもっと得意になりたいから、算数の教科書の問題やドリルの問題を毎日1ページ解いたらよいと思います。

ぼくは、ゲームが気になって勉強のじゃまになっていたので、家族に預けて、勉強が終わったらやるようにしているよ。だから、漫画やゲームなど、勉強のじゃまになるようなものは家族に預けて勉強したら、集中できると思います。

私は今まで計算ドリルや漢字ドリルしかやっていなかったけれど、本やパソコンで気になったことや知りたいことを調べてまとめる調べ学習に取り組むのも、パワーアップになると思います。

家庭学習をがんばる子供

※パワーアップの内容や方法として、4年生に話を聞くのもよいでしょう。その際は、事前に打合せを行い、家庭学習の内容や方法、集中するための工夫など、子供たちの課題解決につながるものや取組が広がるものになるようにしましょう。

決める

自分に合った学習方法を決め、ワークシートに書く
「見つける」で話し合ったことなどをもとに、自分のめあてを考え、学習カードに書きます。自身のこれまでの家庭学習を振り返り、「学習する時間」「学習する量」「学習の取り組み方」などの項目から選択し、自身に合っためあてや具体的な実践方法となるとよいことを伝えましょう。

※家庭学習で取り組む内容については、「苦手なことをできるようにする」という視点になりがちなので、「得意なことを伸ばす」「興味・関心があることを広げる」などの視点でも考えられるようにするとよいでしょう。

がんばりカード見本

板書例

板書例

事後指導

振り返る

自分の決めためあてや実践方法について、振り返る
学級活動(3)の振り返りは、一定の期間継続して取り組んだ後、振り返りの場を設定することが考えられます。本題材では、自分の決めためあてに対して達成できたかどうかを振り返り、自他のがんばりや努力、成長に気付いたり、次の課題を見付け、新たなめあてを設定したりすることで、学習へのさらなる意欲を高めることにつながります。

【参考文献等】
『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説(特別活動編)』 文部科学省 東洋館出版社
『みんなで、よりよい学級・学校生活をつくる特別活動 小学校編』 文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 文溪堂
『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校 特別活動』 文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 東洋館出版社

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


安部恭子視学官

監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


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楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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