「研推(校内研究)」とは?【知っておきたい教育用語】
「15時から、けんすいを始めます。けんすいの先生方はお集まりください」ーー学校で飛び交う専門用語に1年目の教員は戸惑うことでしょう。「研推」とは、「校内研究(修)推進」の略称。校内研究を実施することで、日々の授業実践の改善に努めます。
執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム
目次
研推(校内研究)によって、学び続ける教員
【研推(校内研究)】
各学校が児童の実態に合わせて課題解決のための研究主題を設定し、授業実践を通して、その課題が改善されているかを評価・改善していく活動。研推の中心になってつかさどる分掌組織が「研究推進委員会」である。
はじめに、教育基本法第9条には、以下のように示されています。
法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
文部科学省(ウェブサイト)「教育基本法」
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
また、教育公務員特例法第22条には「教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない」とも明記されています。
以上のことから、どの学校でも研推および校内研究を行っているのは、教育公務員が研究と修養に励み、日々学び続ける義務があるから、と説明できると同時に、教師の学ぶ機会が法的に保障されていることがわかります。「研究と修養」は、教師の学ぶ義務であり、学ぶ権利です。教育公務員が常に学び続けることによって、日々の授業実践をアップデートし、指導力向上・学力向上につながっています。
校内研究のメリットと課題
校内研究を実施する一つのメリットとして、「学校独自のカラーを出せること」が挙げられます。例えば、特別活動や生活指導は、学校間で多少の差異はあっても、ほとんどが学校間では似通っています。しかし、校内研究はそうではありません。
多くの学校では、目の前の子どもたちの実態を見て、研究主題を決め、実践と検証を繰り返していくなかで、子どもたちの変容を見取り、成果や課題を考察していることでしょう。したがって、実践方法や掲示物などをまねすることはできても、目の前の子どもが異なる以上は、自分の学校で同じ効果が表れるわけではありません。つまり、校内研究は、その学校にしかできないものであり、その学校のカラーといえるからこそ、積極的に実施する意義があるといえるのです。
一方で、課題もあります。それは、「モチベーションの違い」です。文部科学省の調査「令和4年度学校教員統計(学校教員統計調査)」によると、学校現場の職層は、ここ10年でだいぶ変わってきています。若手からベテランがいるなかで、その方向性を一つにすることはなかなか難しいのです。加えて、GIGAスクール構想の実現に向けて、ICT端末を使用することや、個別最適な学びを実現する授業形態(自由進度学習)など、学校現場が目まぐるしく発展している昨今において、その変化についていけない教員が一定数いることも確かです。
「若手教員はこうしたいけど、ベテラン教員には理解を得られない」「若手教員の言っていることは理解できるけど、今までのやり方に慣れている」など多様な意見があります。そうした課題のなかで、どのように研究を進めていくかが各校のいちばんの課題になり得るでしょう。どの世代の教員も「やりたい!」「楽しい!」と思える研推づくりに努めることが大切です。
これからの校内研究
先述した課題を解決する一つの案として、研推の在り方をアップデートすることが、今必要なのではないかと考えています。
●まずは、形からアップデート~フランクな校内研究へ~
「研推」や「校内研究」と聞くと、指導案作成、研究協議会、教員たちのスーツ姿など、堅いイメージをもつでしょう。堅い雰囲気では、子どもも教員も萎縮してしまいます。活発な研究にするには、その環境づくりが大切です。例えば、以下のような実践事例があります。
①学習指導案は、A4用紙1枚以内におさめる。
②研究授業でもスーツ着用を義務としない。
学習指導案を10ページ近く作成することは、日々の忙しさを考えれば大きな負担ですが、A4用紙1枚程度なら取り組めそうです。また、子どもたちの目線に立って考えると、教室を教員たちがぐるっと囲って参観するだけでも普段と異なる状況であるのに、全員スーツを着ていたら、さらに不思議な光景でしょう。普段の子どもたちの学びを見取るならば、できるだけ教員も子供たちの日常に近付ける配慮が必要でしょう。
いずれにしても、「お堅い」イメージから「フランクな」イメージに変えるだけで、教員の研推に対するモチベーションが変わることでしょう(ただし、児童の実態に応じて管理職の判断が必要です)。
●研究協議会をアップデート
近年では、研究協議会の形も近年会議室に集まって同じ方向を向いて行う講義スタイルから、グループごとに座るスタイルへ変化してきています。研究推進委員がグループに一人参加し、ファシリテーターとして意見をまとめる形も見られます。そのほかにも、ワールド・カフェスタイルにすることで多様な意見の交流を促したり、ICT端末を使ってオンライン上で意見を出し合い、共有する方法を取り入れる学校も増えています。
いずれも共通することは、「発言しやすい雰囲気」です。例えば、研究協議会に入る前に研推委員長を中心として円になり、ちょっとしたPA活動をしたり、お題に対するトークをしたりするなど心をほぐしてから研究協議会を行うことも話しやすい雰囲気づくりの工夫の一つです。
研推(校内研究)は、教師が教師として成長するのに、欠かせないものです。そして、その学校でしかできない唯一無二のものです。せっかくやるなら、楽しく、そして持続可能な校内研究にしたいものです。そのためには、学校の実態、職員室の実態に合わせて、学校オリジナルの校内研究を創っていくことが大切です。先生たちが楽しく意欲的に学ぶ姿は、子どもたちにも必ず伝わることでしょう。
▼参考資料
文部科学省(PDF)「令和4年度学校教員統計(学校教員統計調査の結果)確定値を公表します」令和6年3月27日
木原俊行『「学校研究」ー授業力量の向上をめざして」ぎょうせい、2006年6月1日
澤井陽介『入門 校内研究のつくり方ー教師自らが共に学ぶ主体的・対話的で深い研究を実現する!』東洋館出版社、2024年6月27日
NHK(ウェブサイト)「虐待受けた子どもなどが生活『一時保護施設』 新たな基準案」2024年2月2日