「助け合える学級にするためのアイデア2選」対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり #6
コロナ禍以降、コミュニケーションに苦労する子供や人間関係の希薄な学級が増えていると言います。子供たちが深い絆で結ばれた学級をつくるには、子供同士の関わりをふんだんに取り入れた対話型授業と、子供たちが主体的に取り組む自治的な活動が不可欠です。第6回は、みんなが助け合える学級にするためのアイデアについて解説します。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
深い絆のある学級は、みんなが自然と助け合っている
本連載は深い絆のある学級づくりがテーマですが、どんな状態だと自分の学級は深い絆で結ばれているなと感じるでしょうか。
私のイメージでは、「みんなが自然と助け合える」です。
学級がそういう状態だというのが、1つの目安になるのではと思います。
では、みなさんの学級は、どうでしょうか。困っている人がいれば、さっと手を貸す子がいるでしょうか。学級をよりよくするために、力を発揮している子がいるでしょうか。
もし、そうした様子が見られないならば、今回提案する2つのことに、ぜひ取り組んでみてください。
アイデア1:教師が子供の手助けの見本を示し、また、子供に助けを求める
担任が休んだときに、私が授業の補欠に入ることがあります。
その際、授業で使用する資料を黒板に貼ろうと思っても、マグネットが見つからないということがあります。そこで、「どこかにないかな」などと探し始めると、それを察して、マグネットを持ってきてくれる子がいます。学級によっては何人もそうやって手助けしてくれます。そういう学級は間違いなくよい学級と言えるでしょう。助け合える学級です。
教師が困っている姿を察する感度があるということは、友達が困っていることにも気付くでしょうし、そうであれば、きっと子供同士も助け合っているでしょう。
一方で、まったく無反応な学級もあります。
だれも手助けしてくれません。仕方がないので、「磁石はどこにあるかな」などと聞くと、やっと教えてくれます。そういう学級では、子供同士の絆が深いということもないでしょう。
そこで、自分の学級はまだまだ助け合えるような感じではないなというときには、教師がまずは親切に、積極的に子供の手助けをするとよいでしょう。
例えば、消しゴムを忘れて困っていたら、「どうぞ、これ使っていいよ」と言って、笑顔で貸してあげましょう。
間違っても、「前の日にしっかり確認しないのだから忘れるのですよ」とか、「この前も忘れたよね!」などと責めないようにしましょう。
子は親の鏡と言いますが、これは教師にも当てはまります。教師の行動が子供に影響を与えます。ですので、子供がたくさんの荷物を持っていたら、「半分持つよ」と声をかけてあげたり、習字の墨で床を汚してしまった子がいれば、一緒に拭き取ったりしてあげましょう。そんなことを続けていれば、「自分も一緒に手伝います」という子が必ず出てきます。
そうしたら、「一緒にやってくれる子がいるなんて、嬉しいなあ」と伝えれば、さらにお手伝いしてくれる子が増えるでしょう。
また、教師が助けてほしいなという場面では、遠慮せずに子供たちに声をかけましょう。
窓を開けて換気したいなと思えば、「だれか一緒に窓を開けてくれないかなあ」と言います。すると、何人かがさっと窓を開けてくれるでしょう。
そこですかさず、「すぐに手伝ってくれる子がいてありがたい。嬉しいな」と伝えましょう。手伝ってくれたことをほめるのではなく、嬉しいと気持ちを伝えるほうがいいのです。ほめられるから行うのではなく、相手に喜んでもらえるから行うほうが、その後、子供同士での助け合いにもつながります。
アイデア2:係活動で学級のために力を発揮してもらおう
係活動によって学級のために力を発揮させることも、助け合いにつながります。学級の友達に喜んでもらえるようがんばるという点では、先に挙げたお手伝いなどと同じなのです。
しかし、係活動はともすると、やらねばならない仕事になっていることもあります。当番とほとんど同じでは、仲間のためにがんばるという気持ちにはなかなかなりませんね。
係活動のポイントは自主性です。そのためには、子供の興味に基づいた活動にすることです。
そこで、そうした活動があまりできていない場合は、これまでやってきた係や当番は継続しつつ、参加自由で取り組ませてみましょう。
例えば、このように呼びかけます。
この学級をもっと楽しく、もっとよくするための係活動をみんなに取り組んでもらいたいと思います。
○おわらい係…クラスのみんなを笑わせる
○かざり係…絵や折り紙などでクラスを飾る
○クイズ係…帰りの会でクイズを出す
こんなふうに、やってみたいなと思うことに自由に挑戦しましょう。今、先生が言った係以外にもやってみたいことがあったら提案してくださいね。
このように説明した後、アイデアを募り、メンバーを募集します。アイデアが出ない場合は、上記の3つの係をやりたい子を募集し、とりあえず活動をスタートさせましょう。そのうちに、違う活動をやってみたいと提案する子が現れるでしょう。
メンバーが決まったら、活動計画を立てる時間を確保します。例えば、毎朝読書の時間があるならば、週に1回は、その時間を係の話合いの時間にします。全員が係に参加していなくてもかまいません。参加していない子は読書でいいのです。
同様に、給食も週に1回から2回は、係で集まって食べてよいことにします。そして、役割分担などを話し合います。そのほか、帰りの会で発表したり、休み時間に活動したりします。
私の経験では、帰りの会で「おわらい係」がショートコントを披露したり、「クイズ係」が問題を出題したりしていました。
なお、よくある実践ではありますが、「○○係」というよりも、もっと活動を端的に表すようなネーミングにすることで、子供たちはさらに意欲的に取り組むようになります。
例えば、「おわらい係」よりも「○○プロダクション」、「クイズ係」よりも「○○王」などのほうがよいでしょう。どのような名前にするかも、もちろん子供たちに任せます。楽しくいろいろなアイデアを出し合うことで、同じ係の仲間としての絆も深まるでしょう。
また、こうした活動は、最初はがんばるものの、継続しにくいものです。
そこで、私は、金曜日の帰りの会で1週間の振り返りをして、どの係がどんながんばりをしていたのかを認め、称賛するようにしていました。こうして、活動をフィードバックしていくことが、子供たちの次の意欲につながります。
いずれにせよ、全員が参加しなくてもいい、活動が停止してしまう係があってもいい、いくつも掛け持ちしてもいいなど、少し緩い形で行ったほうが結局は継続しますし、楽しく取り組めるのではないでしょうか。
この取組だけで助け合う学級にするというよりも、その一助になる程度と捉え、気楽に挑戦してみてください。
少し小難しい言い方ですが、「返報性の原則」というものがあります。人は他人から何かしてもらったら、そのお返しをしたくなるというものです。
ですので、助けてもらった子は、今度は自分が助けたいと思うようになります。それが積み重なったとき、クラスの絆は今よりももっと深くなっているでしょう。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/高橋正輝
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