ウェルビーイング【わかる!教育ニュース#51】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第51回のテーマは「ウェルビーイング」です。
目次
小中学生の幸福感には、友達との関係が最も強く影響している
「ウェルビーイング」という言葉を耳にする機会が増えました。「個人や社会が満たされていて、良い状態」「幸福度」とも訳され、2023年度から始まった第4期教育振興基本計画でも言及しています。でも、子供の幸せは、どんなことと関わっているのでしょうか。興味深い分析結果が、先日の中央教育審議会で報告されました。
小中学生の幸福感には、友達との関係が最も強く影響しているー。23年の全国学力・学習状況調査で行った質問紙調査の回答を分析した京都大学の研究チームが、そのような傾向を見いだしました(参照データ)。
研究チームはまず、子供の主観的幸福感はどのぐらいかを調べました。質問紙の「学校に行くのは楽しいか」「普段の生活で、幸せな気持ちになることはどれくらいあるか」という問いの回答を基に、4点を最高値として数値化。小6の平均値は3.35、中3は3.24で、幸福感は高いほうだと考えられます。
さらに、ウェルビーイングに関わる質問紙の項目を「友達関係」「協働性」「教師サポート」「自己肯定感」「成績」など17に分類し、子供の回答を基に幸福感との関連を分析しました。すると、最も関連が高かったのは、小中学生いずれも「友達関係」でした。次いで強い関連があったのが、「教師サポート」です。一方で、全国学力テストの正答率から算出した「成績」は、幸福感との関連がほとんど見られませんでした。
教育関連のウェルビーイングの要素は自己肯定感や心身の健康など
23年度から5年間を計画期間にしている教育振興基本計画では、ウェルビーイングを「身体的・精神的・社会的に良い状態にあること」と定義しています。一時的な幸福にとどまらず、人生の意義や生きがいなど、持続的な幸福も含めた概念です。
いじめ、貧困、不登校、ヤングケアラー。近年、社会の複雑さは増し、子供を巡る問題も多様化しています。そんな状況を背景に基本計画では、個々が幸せや生きがいを感じ、地域や社会も豊かな状態を目指し、「教育を通じたウェルビーイングの向上」を理念の1つに掲げました。
教育に関連するウェルビーイングの要素には、自己肯定感や心身の健康、利他性、社会貢献意識など11を挙げています。今回、研究チームはこの11要素を踏まえ、質問紙調査の回答から現状をつかもうとしました。
分析の報告書では、「学校では学力よりも、むしろ友達や教師との関係など、他者とのつながりが幸福感の向上に重要な役割を果たしている」と指摘し、学校という場の状態を良くする必要性を説きました。
子供の幸せに影響を与えているのは、学力よりも人とのつながり。当たり前のことのようですが、裏付けができたのは大きな意義があります。そしてもう一つ、重要な指摘がありました。それは、子供をサポートする側の教員の心や時間の余裕。業務や働き方を見直し、教員の幸福感を上げる方策も考える必要があります。
【わかる! 教育ニュース】次回は、7月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子