小6算数「分数と整数のかけ算・わり算」指導アイデア《帯分数×整数の計算の仕方を考える》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小6算数「分数と整数のかけ算・わり算」指導アイデア
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執筆/富山県高岡市立木津小学校教諭・屋鋪善祐
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、前・富山県南砺市立福光東部小学校校長・中川愼一

年間指導計画「分数×÷整数」

単元の展開

第1時 (分数)×(整数)の意味と計算の仕方を考える。
▼   《分数×整数の意味と計算の仕方》
第2時(本時)(帯分数)×(整数)の計算の仕方を考える。

第3時 (分数)÷(整数)の意味と計算の仕方を考える。

第4時 (分数)÷(整数)の計算の仕方をまとめ、計算する。
▼   《分数÷整数の計算の仕方》
第5時 (分数)÷(整数)の計算について、途中で約分するよさを検討する。

第6時 (帯分数)÷(整数)の計算の仕方を考える。

第7時 (分数)×(整数)と(分数)÷(整数)の計算の仕方をまとめる。

第8時 (分数)×(整数)と(分数)÷(整数)の計算を確かめる。

本時のねらい

帯分数に整数を掛ける計算の仕方について考える。

評価規準

真分数に整数を掛ける計算の仕方や分数の意味と表現を基にして、帯分数に整数を掛ける計算の仕方を多面的に捉え考えている。(思考・判断・表現)

本時の展開

問題
次の計算をしましょう。
[MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH]×4
1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3

「[MATH]\(\frac{3}{5}\)[/MATH]×4」を計算しましょう。

答えは、[MATH]\(\frac{12}{5}\)[/MATH]です。

どのように求めましたか。

分母の5はそのままにして、分子の3に掛ける数の4を掛けると、分子が12になりました。

分数に整数を掛ける計算は、分母はそのままにして、分子にその整数を掛ければ求めることができます。

それでは、次の「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3」の計算もしてみましょう。

ええ! これまでと違うよ。

これまでの計算とどこが違いますか。

真分数や仮分数ではなくて、帯分数のある計算になっています。

うーん、難しそうだな……。

なぜ難しいと思ったのですか。

帯分数のなかの「1」をどうすればいいのか悩みます。

いや、大丈夫だよ!

これまでと同じような分数に変形すれば計算できそうだよ。

学習のねらい

本時の学習のねらい 1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3の計算の仕方を考えよう

下矢印

学びのなかで焦点化したねらい どうして1にも[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]にも3を掛けるのだろう。

見通し

掛けられる帯分数の整数の部分と分数の部分の分子に、整数を掛ければ求めることができるのではないかな。(方法の見通し)

帯分数を仮分数に変形すれば、前と同じように計算ができそうだよ。(結果の見通し)

1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]は1より大きく2より小さいから、その3倍は3より大きくて6よりは小さいはずだよ。(結果の大きさの見通し)

自力解決の様子

A つまずいている子
帯分数の整数の部分はそのままにして、分数の部分にだけ整数を掛けている。
1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=1[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH](1[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH])


B 素朴に解いている子
帯分数の整数の部分に整数を掛け、分数の部分の分子に整数を掛けている。
1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH](1×3[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH])


C ねらい通り解いている子
帯分数の整数の部分に整数を掛け、分数の部分の分子に整数を掛けている。
1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH](1×3[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH])

さらに、帯分数の整数の部分と分数の部分はたし算の関係にあるという数の構造に着目し、なぜ分数の部分だけでなく整数の部分にも掛ける必要があるのか説明している。
1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=(1+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH])×3=1×3+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=3+[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH]=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH]

また、帯分数を仮分数に直して計算し、整数の部分に掛けることの正しさを説明している。
1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=[MATH]\(\frac{9}{7}\)[/MATH]×3=[MATH]\(\frac{27}{7}\)[/MATH]=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH] 


学び合いの計画

前時と違って本時は、帯分数を含んだ分数の計算です。子供がつまずきやすいのは、「1 [MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=1[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH](1[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH]」など、帯分数の整数の部分はそのままにして、分数の部分だけ計算してしまうところです。そこで大切にしたいのは、「どうして、整数の部分(1)にも3を掛けないといけないのか」という疑問に立ち止まり、互いに納得できるように表現し合う場を設けることです。

帯分数の整数の部分と分数の部分がたし算の関係で結ばれていることを、「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=(1+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH])×3=1×3+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=3+[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH]=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH]」の式に表して数の構造に着目したり、帯分数1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]を仮分数[MATH]\(\frac{9}{7}\)[/MATH]に直して計算し、大きさが変わらないことを確認し合ったりすると効果的です。

子供一人一人が根拠を示しながら自分の考えを語り、互いに考えを理解し合って、考えを深めていく学び合いの場を大切にしましょう。

ノート例

A つまずいている子

ノート例1

B 素朴に解いている子

ノート例2

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3」は、どのように計算をすればよいですか。

〈○○さん〉さん私は、「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=1[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH](1[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH]」と計算したんだけど、どこか変だと感じています。

〈□□さん〉あれ、私と違います。私は「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH](1×3[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH])」と計算しました。

○○さんと□□さんの考えは、どこが違うのですか。

□□さんの考えは、帯分数の整数の部分と分数の部分に整数を掛けていますが、○○さんの考えは分数の部分だけに整数を掛けています。

整数の部分1にも整数3を掛けないといけないのかな。

私は、整数の部分1にも整数3を掛けないといけないと思います。

〈○○さん〉私も整数の部分の1に3を掛けることを考えたのだけど、なぜ掛けるのか分からなくて、そのままにしてしまいました。

□□さんが、整数の部分の1に3を掛けることを考えたのはなぜですか。

〈□□さん〉なんとなく、そのほうが正しいんじゃないかなと思ったからです。

整数の部分の1に3を掛けることは正しいと思ったけれど、そのわけがはっきりしなくてそのままにしたんですね。□□さんと同じように少し困っている人はいますか。

僕は、整数の部分の1に3を掛けたんだけど、その理由までは考えていませんでした。

私も本当は整数の部分の1に3を掛ける理由をうまく説明はできません。

同じように、1に3を掛けることは正しいと思うけれど、そのわけの説明には自信がないという人はいますか。(挙手を求める→挙手多数)みなさんは、どうして1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3の計算で、1にも[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]にも3を掛けるのか悩んでいるのですね。

学びのなかで焦点化したねらい どうして1にも[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]にも3を掛けるのだろう。

どうして1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3の計算で、 1にも[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]にも3を掛けるのだと思いますか。みんなで考えを出し合って深めていきましょう。

1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]は1+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]と考えられるので、「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3」は「(1+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH])×3」となり、「1×3+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=3+[MATH]\(\frac{2×3}{7}\)[/MATH]=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH]」と計算するのだと思います。

図表1

他のみなさんは、1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]は1+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]というのは、納得できますか。

大丈夫です。納得できます。

そこまでは、OKです。

そこまでOKというのは、この先のことが納得しきれないということですね。それは何ですか。 

それは、1+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]なら、なぜ、1にも[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]にも3を掛けなければいけないかということです。

う~ん。

そういえば、1.2×3なら、1にも2(0.2)にも3を掛けるよ。

小数も1.2=1+0.2のように、それぞれの位はたし算の構造になっているからだよ。

1.2×3=3.6なのは、(1+0.2)×3=1×3+ 0.2×3だからなんだね。

図表2

小数の場合と同じように考えると、分数の場合も納得しやすいね。

確かに。あと、「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3」は1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]の3倍だから、答えは3より大きくて、4より小さいです。だから、答えは1[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH]ではなく、3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH]となる○○さんの考えに賛成です。

□□さん。みんなの考えを聞いて、どう思いましたか。

〈□□さん〉みんなの考えを聞いて、帯分数の分数の部分だけに整数を掛けていたけれど、帯分数の整数の部分にも整数を掛けないと正しくないことに気付きました。

帯分数の構造を、小数と同じように、たし算の関係にあるという見方をすることで、考えをまとめたのですね。

〈△△さん〉あと、私は別の考え方で計算しました。「1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3=[MATH]\(\frac{9}{7}\)[/MATH]×3=[MATH]\(\frac{27}{7}\)[/MATH]=3[MATH]\(\frac{6}{7}\)[/MATH]」

みなさん、△△さんの考えは、どんな考え方だと思いますか。

帯分数1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]を、分数[MATH]\(\frac{9}{7}\)[/MATH]に直してから計算する方法だと思います。

確かに、帯分数を仮分数に直せば、すぐに計算ができるよ。

帯分数に直して計算すると、答えの大きさが正しいことが分って安心できるね。

別の方法で求めても答えが同じになることで、方法の正しさを確かめることができますね。

学習のまとめ

1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]×3の計算は、

・1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]を1+[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]と考え、仮分数の分数の部分だけでなく整数の部分にも3を掛けて計算すればよい。
・帯分数の1[MATH]\(\frac{2}{7}\)[/MATH]を仮分数の[MATH]\(\frac{9}{7}\)[/MATH]に直してから計算すればよい。

下矢印

帯分数に整数を掛ける計算は、
・帯分数の整数の部分に整数を掛け、分数の部分の分子に整数を掛けて計算すればよい。
・帯分数を仮分数に直してから計算すればよい。

どうしてかというと、帯分数の整数の部分と真分数の部分がたし算の構造だから

評価問題

次の①~⑥までのなかから1つを選んで、「1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]×2=2[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]」の説明をしましょう。

①1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH] + 1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH] = 2[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]

②1.2 ×2= 2.4

③[MATH]\(\frac{6}{5}\)[/MATH] × 2 = [MATH]\(\frac{12}{5}\)[/MATH] = 2[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]

図表3

図表4

図表5

子供に期待する解答の具体例

<例1>
1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]×2は、1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]+1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]と同じです。

1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]+1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]=2[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]なので、1[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]×2=2[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]です。

<例2>
1Lの2倍は2L、[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]Lの2倍は[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]Lです。合わせて、2[MATH]\(\frac{2}{5}\)[/MATH]Lです。

図表3

※「答えの大きさの正しさ」「計算の方法の正しさ」のみを説明している子には、「帯分数を整数と分数に分けて考える意味」についての説明を加えるようにうながす。

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿

真分数に整数を掛ける計算の仕方や分数の意味と表現を基にして、帯分数に整数を掛ける計算の仕方を多面的に捉え考えている。

感想

  • 帯分数に整数を掛けるときは、帯分数の整数の部分と分数の部分を分けて計算するとよいことが分りました。
  • 帯分数がある計算は、帯分数を仮分数に直してから計算すると、答えの大きさを確かめられることが分かりました。
  • 計算の仕方が正しいことや答えの大きさが正しいことだけでなく、どうしてそうしたほうが正しいのかを説明することが大切なんだと考えました。
  • 最初は、帯分数の分数の部分だけに掛ける数を掛けていたけれど、友達の図を使った説明を聞いて、帯分数の整数の部分にも掛ける数を掛けないと正確に計算できていないことに気付きました。図を使って考えると、頭がすっきりする感じがします。
  • 今度は掛ける数が帯分数の場合や、帯分数に分数を掛ける場合も考えてみたいです。
  • 帯分数の整数の部分と分数の部分は小数のようにたし算の関係にあるので、分数の部分だけでなく整数の部分にも掛ける必要があるのだと納得しました。

ワークシートPDFと板書例

イラスト/横井智美

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