ウェルビーイングを学校でつくる! ~SDGsの授業プラン #35 「Goal 17 パートナーシップで目標を達成しよう」・その2|高橋朋彦 先生

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ウェルビーイングを学校でつくる! ~カリキュラム・マネジメントで進めるSDGsの授業プラン~
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北海道公立小学校教諭

藤原友和
ウェルビーイングを学校でつくる! ~SDGsの授業プラン #35
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全国各地の気鋭の実践者たちが、SDGsの目標に沿った授業実践例を公開し、子どもたちの未来のウェルビーイングをつくるための提案を行うリレー連載。今回は、Goal 17「パートナーシップで目標を達成しよう」について学ぶ授業実践提案の第2回です。ご執筆は、トモ先生こと千葉県の高橋朋彦先生。小学4年、学級活動での実践例です。

執筆/千葉県公立小学校教諭・高橋朋彦
編集委員/北海道公立小学校教諭・藤原友和

1 はじめに

こんにちは。トモ先生と言います。
みなさんは、「SDGsの授業プラン」と聞いてどのようなことを考えたでしょうか?
私は、「正直、難しい…」と考えてしまいました。
SDGsは使われている用語が難しいですし、規模が大きすぎます。課題が身近なものでなく、イメージしづらいものです。直接SDGsを教えてしまうと、どんなに工夫をしても、教師からの一方的な教え込みの授業になってしまうと感じました。

そこで、SDGsについて直接教えるのではなく、児童の身の回りにある課題が、じつはSDGsと同じ考え方であると関連付けた上で、次のポイントで授業を組み立てることにしました。

持続可能でよりよい学級の実現を目指す
それを世界規模で取り組んでいるものが、SDGs

児童にとって身近な学級をよくすることと同じように、世界規模で持続可能でよりよい社会の実現を目指す取組をしていることに気付かせ、その共通の目標がSDGsであることを伝えていきたいと考えています。

2 SDGsのGoal 17についての解説

Goal 17 「パートナーシップで目標を達成しよう」
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。

SDGs Goal 17 Logo

私は、Goal 17は他の1〜16までのゴールと少し色の違うゴールだと考えています。
1〜16のゴールは、それぞれのゴールを達成するために、誰かがリーダーシップを発揮し、具体的な取組をしていくことだと捉えています。
一方17は、「1~16でリーダーシップを発揮している誰かと、パートナーシップを築いて協力し、目標の達成をサポートするためのゴール」として捉えました。

例えば、ある団体がリーダーシップを発揮し、Goal 1の「貧困をなくそう」を目指そうとしていても、その団体だけでは達成することが難しい場合があります。
その際、Goal 17「パートナーシップで目標を達成しよう」の考え方に基づき、その団体とパートナーシップを結び、協力していくものだと考えます。

このリーダーシップとパートナーシップの関係を、授業を通して子どもたちに気付かせていきたいと考えました。

3 授業の実際

● 学年:4年

◯教科および領域:学級活動

◯ねらい
リーダーシップを発揮する友達に協力するために、どのようなパートナーシップを発揮すればよいか話し合う。

◯教材:「リーダーシップとパートナーシップ」

◯評価
身近なパートナーシップとSDGsのパートナーシップを関連付けて考えることができる。(思考・判断・表現)
SDGsとのつながりを感じながら、学級をよくするための行動をしようとすることができる。(主体的に学習に取り組む態度)

1 導入

①学級をよくするために必要なもの
「学級をよくするために必要なことはなんだと思う?」
と、発問すると、子どもたちは次のように答えました。

助け合い
協力

子どもからの「協力」という意見を拾い、
「どんな協力をしていけばいいんだろう?」
と声をかけ、「協力」について深掘りをしていきます。

②リーダーシップとパートナーシップ
「学級をよくするためにリーダーが必要だよね。リーダーシップってなんだろう?」

リーダーシップ … 学級を引っ張る役割の人
 決まっている → 学級会長、日直、班長など

「リーダーだけが頑張ってもうまくいかないね。リーダーに協力する人が必要なんだ。リーダーと周りの人たちとの協力関係のことを、パートナーシップと呼ぶんだよ」

パートナーシップ … リーダーとの協力関係
 決まっていない → リーダーと一緒に学級をよくするために動く

2 話合い活動

「学級をよくするためにどのようにリーダーシップを発揮すればよいだろう?」

まず、全員でアイディアを出し合います(一人一発言)。

授業開始前に、学級会長と一緒に呼びかけをする。
給食の配膳の時に給食係と一緒に呼びかけをする。
給食の配膳台を給食係と一緒に準備する。
日直の号令の時に静かにならなかったら一緒に声をかける。

など、さまざまな意見が出てきました。
「自分が協力できそうなところに手を挙げよう!」
と子どもたちに促すと、何人かの子が手を挙げました。

「自分で協力できそうなところ」についての子どもたちの意見を集約した板書

ここで学級会長に、
「呼びかけをするときにこれだけ協力関係のある人がいると、どんな気持ちになりますか?」
と聞くと、
「心強いです!」
と、答えてくれました。

そして、
「リーダーとのパートナーシップを発揮して、この学級をよくしていこうね!」
と声をかけると、
「はい!」
と大きな返事が響きました。

3 世界ではどのようなパートナーシップが築かれているのか

学級でのリーダーシップとパートナーシップの役割が明確になったところで、
 「SDGsって知ってる?」
 と、声をかけました。ほとんどの子が
「知ってる!」
と、答えたものの、どのようなものかを答えられる子はいませんでした。
そこで、NHKforSchoolの1分ほどの動画を使い、SDGsについて共有しました。

子どもたちはこの動画を見ることで、世界をよくしようと目標を持ち、取り組んでいる人がいるということを理解していました。ここで、SDGsの各ゴールの画像(下)を見せました。

SDGsの各ゴールを示したロゴマーク一覧

【参考文献】
JAPAN SDGs Action Platfor

ここから、パートナーシップの必要性を共有していきます。
「SDGsにはGoal 1「貧困をなくそう」という目標があるけれど、誰かがこの目標を達成したい! と思っても達成することは難しいんだ。なぜかわかる?」

「お金がないとできないから?」と、ある子が答えました。

「そうなんだよ。他にも、お金があっても届ける人や機関がなかったり、物を届けたくても、物が手に入らなかったりしたら、届けることはできないんだ。どんなにいいことでも活動しようと思った人だけでは、目標を達成することはできないんだよ。───みんなはそんなとき、どうすればいいと思う?」

「お金をもらったり、物を手に入れたりするために協力する人がいればいいと思う」
と、ある子が答え、子どもたちは大きく納得しました。
すると、ある子がこんなことを答えました。
「SDGsで世界をよくするために協力するのと、このクラスをよくするために協力するのって、なんだか似ているね」

「そうなんだよ。何かをよくするためにリーダーシップを発揮する人は必要。それと同じくらい、リーダーに協力するサポーターシップもとても大切なんだ。だからね、SDGsのGoal 17は、「パートナーシップで目標を達成しよう」なんだ」
と、話すと、子どもたちは「おー!」と言ってくれました。

パートナーシップ イメージ

4 授業の成果と課題、他教科・他領域とのつながり

⑴ 授業後の子どもたちの振り返り

自分たちの身の回りのことでも、SDGsでも、リーダーシップを発揮するだけではできないことがあるとわかった。パートナーシップを発揮して協力すれば、不可能だったことが可能になることがわかった。これから、パートナーシップをいろいろな場面で発揮していきたい。
学級をよくするためにしていることが、世界をよくすることと繋がっていて、世界をよくするためにSDGsに193カ国が参加していることがわかった。
世界をよくしようとする人がいても、パートナーシップを発揮する人がいないと世界をよくしていくことが難しいと思いました。
学級でも世界でも何かをよくするために一人だけではできないけれど、たくさんの人と協力すればできるということがわかった。まずは、教室をよくするために、友達に協力していきたい。

⑵ 授業の成果と課題(〇成果 ▲課題)

学級をよくするためには、リーダーシップを発揮する人だけが頑張ればいいのではない、ということを理解できるようになった。
リーダーシップを発揮する子に協力するパートナーシップの具体的な行動を決め、実行できるようになった。
学級をよくするためにも、世界をよくするためにもパートナーシップを発揮することが大切だと考えられるようになった。
普段の学級の様子では、会長や日直に協力して呼びかけたり、給食の配膳を手伝ったりする子が増え、学級をよくしようという雰囲気が全体に広がった。
SDGs自体についての理解が浅いので、学びを深めていかなければならない

⑶ 他教科・他領域とのつながり

リーダーシップとパートナーシップの関係性を理解した上で、他教科の学習にもそのような関係性について学ぶ内容がないかと考えてみました。

例えば、3年生の「火事から暮らしを守る」では、火事が起きた時に消防署がリーダシップを取り、水道会社やガス会社、消防団などがパートナーシップを発揮して連携しながら、人々の命を守ること。
4年生の社会科の学習では、自動車を作るために、リーダーである自動車工場に対し、様々な関連工場がパートナーシップを発揮して協力していること。
国語の話合い活動では、リーダーである司会者に対し、参加者がパートナーシップを発揮して協力していること。

…などが考えられました。
リーダーシップに対するパートナーシップをこれからの学校生活でも大いに発揮し、大人になってからも発揮し続けて、生活や世の中を良くしていく子に成長してくれたら、と願っています。

この連載は、毎週木曜日のAM6:00に公開します。どうぞお楽しみに!

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