実践! 小学校のストレスマネジメント教育~高学年の授業展開をもとに~
前回は、総論としてストレスマネジメント教育の全体像について書きました。今回は、その実践編として、小学校高学年を対象とした、第1段階「ストレスの概念を知る」第2段階「自分のストレス反応に気づく」の授業展開について考えていきます。
【連載】ストレスフリーの教室をめざして #02
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
前回をまだご覧になっていない方は、ぜひこちらもご覧ください。
<第1回目:小学校の教室で「子どものストレス」をゼロにするために。やってみよう、ストレスマネジメント教育>
1 授業展開
2 補助資料と解説
これは、事前アンケートの例です。「ストレス」という題材をより自分事として捉えられるように、ストレス経験の有無から尋ねていきます。さらに、ストレスを感じたときの「場面」「どんな感じ」「どうしたか」を順に尋ねることで、本時の展開により具体性をもたせることができます。1人1台端末を用いたアンケートを実施すると集計や提示がスムーズになります。
子どもに過去のストレスを想起させることになりますので、
①アンケート実施前に趣旨を説明すること
②回答したくない場合には、回答しなくてもよいこと
を伝えることに留意します。
導入では、事前アンケートの結果を提示しながら、みんなのストレス経験について共有します。そもそも子どもはストレスを自覚していない場合もありますので、この段階で初めて「あれはストレスだったんだ…」と気づく子もいます。
これは、展開の「3 ストレスとは何かを知る」で使用するスライド資料の一部です。ストレスとは「ストレッサー」と「ストレス反応」から考えることができ、様々な種類があることに気づかせます。スライド資料ではなく、風船やゴムボールのような柔らかい球状のものを使用し、球をへこませる外力をストレッサー、球が元に戻ろうとする反応をストレス反応と、実物を用いて説明するのもよいでしょう。
展開の「4 担任や養護教諭の話を例に、ストレスの対処法を探る」では、大人が実践しているストレス対処法を伝えます。ここでは、ゲストティーチャーとして養護教諭の先生にも参加してもらっています。「おいしいものを食べる」「スポーツをする」「好きな音楽を聴く」など、子どもにも実践できそうなものを話してもらうとよいでしょう。また養護教諭の他にも、スクールカウンセラーや管理職の先生に参加してもらったり、他学年の先生に事前インタビューした様子を録画したりしておくことなども工夫として考えられます。
展開の5・6では、ここまでの展開を参考にしながら、個人やグループ、学級全体でストレス対処法を考えていきます。ここでは多様なストレス対処法に触れさせることが大切ですので、どんどんアイデアを出してもらえるような雰囲気づくりを心がけましょう。まれに、破壊的・攻撃的(ものをこわす・やつあたりする、など)のアイデアが出ることがあります。そのときには、教師は頭ごなしに否定するのではなく、その子の心理的背景に目を向けながら話を聴いてあげましょう。
終末では、本時の学びが実生活で生かせるようにします。「コーピングカード」などの記録できるワークシートを用いるとよいでしょう。期間を決めて、「ストレッサー」と「コーピング」を記録しておきます。期間終了後は短時間で振り返りを行い、子ども同士がそれぞれの実践について交流を図るとより効果的です。
【参考引用資料】
・令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査/文部科学省
・動作とイメージによるストレスマネジメント教育<基礎編><展開編>/冨永良喜・山中寛 編著/北大路書房
<プロフィール>
春日智稀(かすが・ともき)
2015年より埼玉県公立小学校教諭。体育主任・生徒指導主任・研究主任・教務主任などを担当。
日本生徒指導学会 日本学校教育相談学会 会員。