小4特別活動 「見直そう自分たちの読書」指導アイデア

連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子
小4特別活動 「見直そう自分たちの読書」指導アイデア

文部科学省視学官監修による、小4特別活動の指導アイデアです。7月は、<学級活動(3)ウ「見直そう自分たちの読書」>の実践例を紹介します。

本学級の子供たちは、読書が大好きです。一方で、読んだ本について聞いてみると、同じような種類の本が多く、読書傾向に偏りを感じることもあります。「4年生だから、もっと学年に合った本を手にとってほしい」「様々な種類の本を読んでほしい」という、学級担任の願いのもと、読書傾向に関わる自己の課題に気付かせ、今の自分に合った、よりよい生き方につながる学びになってほしいと思っています。
そこで、今回は長期休業中の豊かな読書活動に向けて、これまでの自分たちの読書の仕方や読書習慣を見直し、これからの生活や生き方に生かすことができるような本との出合いを目指した実践を紹介します。また、本時の展開場面で司書教諭のメッセージ動画を活用することで、子供たちがより読書の意義を知り、専門性を生かした指導となるようにします。

執筆/青森県公立小学校教諭・小笠原梨夏
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
 青森県公立小学校校長・河村雅庸

年間執筆計画

年間執筆計画はこちらをクリック

4月 学級活動(3) ア 4年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ 歯ぴかぴか大作戦
7月 学級活動(3) ウ 見直そう自分たちの読書
9月 学級活動(1) 学級オリンピックをしよう
10月 学級活動(1) 学年の仲を深める集会を開こう
11月 学級活動(2) エ よりよい給食のマナー
12月 学級活動(1) 大そうじ大作戦
1月 学級活動(1) ア 2年生と笑顔いっぱい集会をしよう
2月 学級活動(3) 10歳の節目
3月 学級活動(2) 4年生がんばったね集会をしよう

読書指導の充実に向けて

子供たちはこれまでの学校生活で定期的に本を借り、進んで読書をしようとする実態が見られます。しかし、同じ種類の本ばかりを読んでいたり、下学年向けの本を選んでいたりする傾向があります。そこで、本題材ではいろいろな種類の本を読むよさについて考えます。そして、これまで読んでこなかった種類の本にも挑戦し、読書の幅を広げることで、現在や将来の学習と自己実現のつながりを考えたり、自主的な学習のために学校図書館等を活用したりすることを促すことにつなげることができます。

他教科との関連

同じような種類の本ばかりだけではなく、様々な種類の本に視野を広げることで、国語科をはじめ、社会科や理科、総合的な学習の時間等の学習にも生かせることを知り、日々の実践につなげることができます。

学級活動(3)ウ 『見直そう自分たちの読書』の実践

本時のねらい

様々な種類の本に触れることのよさに気付くとともに、自分の読書傾向の課題に気付き、読書の種類を増やすための取組について話し合い、これからの読書について自分に合った具体的な目標を決める。

事前指導

① 事前アンケートの実施

普段、どのような本を読んでいるのか読書に関するアンケート調査を行います。このアンケートの集計結果は本時の導入時に活用し、子供たちが課題意識をもって授業に臨むことができるようにします。

アンケートを取る前には、「たくさんの本に出合い、自分の知識や学習の世界を広げてほしい」と学級担任からの願いを話し、読書活動への意欲を高めます。

【アンケートの例】

アンケートの例

② 司書教諭の動画や写真の準備

子供たちのアンケート結果から、司書教諭に、これまで子供たちがあまり読んでいない種類の本を何冊か紹介していただき、自分たちの読書を見直すことができるようにします。また、たくさんの種類の本を読むことのよさや、司書教諭からの子供たちへの願いも含め、話していただく内容は事前に打合せをし、子供たちの「読んでみたい」という意欲を高めたり、読書の幅が広がる意思決定につなげたりすることができるようにしましょう。

【アンケートの集計結果】

アンケートの集計結果のグラフ

本時

授業の4段階の流れ
 導入「つかむ」………学級の読書傾向を把握する。
 展開「さぐる」………事前アンケートをもとに、学級でこれまであまり読まれていない種類の本を司書教諭に紹介してもらい、気付いたことを整理する。
 展開「見つける」……「読書の種類をふやす」ために、どんなことに取り組めばよいのか話し合う。(ペアやグループでの話合いを活用するのもよい)
 終末「決める」………具体的な個人目標を意思決定する。

導入【つかむ】

授業の導入では、事前アンケートの集計結果や、これまでの各自の読書の取り組み方について、気が付いたことを話し合います。子供たちが自分事として題材を捉え、よりよくしたいと思えるようにしていきます。

みなさんは、どのような本を普段読むことが多いかな? この前のアンケート結果を見てみましょう。

シリーズものを読んでいる人が結構多いね。

科学を読んでいる人はいないね。あんまり本を見たことがないなあ。

クラスで見ると、本の種類によって読んでいる人数がずいぶん違うね。

私は同じような種類の本しか読んでいないなあ。

展開【さぐる】

どうして同じような種類の本しか読まない人が多いのかな。

ぼくはいつも同じシリーズの本を読んでいたから、ほかの本をあまり知らないんだよね。

他の種類の本のよさがあまり分からないから?

図書室で本を探すときに、同じところにしか行かないからかな。

では、どんな本の種類があるのか、どのような読書がよいのか、司書教諭の先生に聞いてみましょう。

司書教諭におすすめの本の種類を紹介してもらい、「これまでの自分たちの読書を見直し、読書の種類をふやしていこう」という気持ちを高めます。

おすすめの本の表紙の写真を活用し、読んでみたいという期待を高めるようにします。
司書教諭のメッセージ動画では、本の種類や簡単なあらすじを紹介してもらいます。

また、いろいろな種類の本を読むことの楽しさや意義を分かりやすく紹介してもらいます。

司書教諭のアドバイスのイラスト

※今回は動画を活用しましたが、司書教諭や学校図書館司書とのTTで行うとより効果的です。その場合は、事前の打合せを十分に行うようにします。

おすすめの本を聞いたら、興味がわいてきたなあ。

伝記って人の生き方について書かれた本なんだね。今度読んでみよう。

これまでは絵本ばかりを選んでいたけれど、違う種類の本にも挑戦するぞ。

事前アンケートでは、新しく挑戦してみたい本に意欲的でない子供も見られますので、たくさんの本を読むよさに触れ、期待がもてるようにします。

展開【見つける】

本時のめあてを掲示し、達成するためにどんなことに取り組んだらよいか話し合います。

みんないろいろな読んでみたい本が見つかりましたね。では、自分や学級のみんなが「読書の種類をふやす」ために、どんな取組ができそうか考えてみましょう。

図書室で借りたことのないコーナーに行って探してみたらどうかな。

司書の◯◯先生や友達に教えてもらった「おすすめの本」を読んでみたい。

「読書カード」を使って、読んだ本の感想やおすすめポイントをクラスのみんなに紹介するのはどうかな。

図書委員会がやっているように、本を紹介する帯を作ったり、本の紹介ポスターを作ったりしたらいいんじゃない。

はじめに、グループの友達と意見を交流し、その後、学級全体で共有し、分類・整理したり、さらに話し合ったりします。
グループや学級全体と話合いの工夫をすることで、読書が苦手な子供も「自分にとって無理なく簡単にできそうだ」という思いにつなげていきます。

終末【決める】

「見つける」の段階で、話し合ったことを生かして、一人一人の子供が自分に合った具体的な内容や方法を意思決定できるようにします。

今日、話し合ったことをもとに、これからの本の選び方について自分が取り組むことを決めましょう。

ぼくは、生き物が好きだから、もっと生き物のことを知るために図鑑を選びます。

私は、歴史の人物に興味をもちました。だから、今度からは伝記を借りたいと思います。

戦争のお話は、今まで読まなかったけど、司書教諭の◯◯先生のお話を聞いて、読んでみようと思いました。

一人一人のめあてが決まって、これからの読書が楽しくなりそうですね。

本を選ぶ子供

具体的に自分の取組を決めたことで、読書に対する実践意欲を高めることができます。

板書計画

板書例「見直そう自分たちの読書」

事後指導

①決めたことの実践
学習時や休み時間の図書室の利用時に取組を実践します。また、本時で紹介した選定図書を学級に配置することも意欲を高めることにつながります。
私の学級では、これまでおすすめの本を「読書カード」に書いて掲示していました。そこで、提示するだけでなく、朝や帰りの会で紹介し合い、子供たちの実践意欲が継続するようにしました。

②振り返り
朝や帰りの会などの時間を活用して振り返り、取組状況を確認したり、互いのがんばりを認め合ったりします。

継続的に取り組むことで、偏りなく多様な本に触れ、成果につながっていきます。また、他教科への学習に生かせるように、教師がこまめに声かけ・指導を行っていくことが望ましいです。

【振り返り】

振り返り例

【「読書カード」の掲示例】
教室に、「この本、読んでみてね」のコーナーをつくり、月に1回おすすめの本の紹介をしています。子供たちが友達の読んでいる本を知ることができ、読書に対する意欲の持続につながります。

教室に掲示された「この本、読んでみてね」のコーナー

構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈


安部恭子

監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと カバー

楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと

特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!

楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア

学級経営の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました