小4国語「一つの花」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は、有名な物語文「一つの花」です。この単元の目標は、「場面を比べて読み、心に残ったことを伝え合おう」です。そのため、比べて読むこと、心に残ったことが子供たちに捉えられやすくするための板書の工夫を紹介します。

監修/元京都女子大学教授
 同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子  

 

単元名 場面をくらべて読み、心にのこったことを伝え合おう
教材名 「一つの花」(光村図書出版)

単元の計画(全7時間)

  1. 教材文を読み、学習の見通しをもつ。
  2. 物語の設定を確かめ、お話の大体を捉える。
  3. 「一つだけ」という言葉に着目して読む。
  4. (※と同様)
  5. 場面と場面を比べながら読み、心に残ったことをまとめる。
  6. 心に残ったことについて友達と伝え合い、互いの考え方や感じ方の違いについて、話し合う。
  7. 学習を振り返る。

板書の基本

〇一人一人に合わせた教育を意味する「個別最適な学び」は、子供たちが自らの学習を調整しながら学ぶことができるように、「個に応じた指導」を充実させることが大事です。教材「一つの花」は「場面をくらべて読み、心に残ったことを伝え合おう」が単元目標です。目標である「心に残ったこと」は、一人一人違います。この違いを大事にすることを「個に応じた指導」と関わらせて板書を工夫しました。工夫のポイントは、一斉学習という形態において最適な学びにつながる板書にしたいと考えたことです。

〇板書の手がかりとしたのは、教材末尾にある「見通しをもとう」です。一般的に「学習の手引き」と言われているものです。教科書では自らの力で文章を読み解くことができるように、「とらえよう・ふかめよう・まとめよう・ひろげよう」というそれぞれの過程において丁寧な導きがあります。それぞれの過程の中でも個別最適な学びを意図しているであろう「問いをもとう」が分かりやすく示されています。個別最適な学びは、子供一人一人が勝手に学習活動をするということではありません。子供それぞれが、「とらえよう・ふかめよう」で習得したことを確認する必要があります。その確認する時間が「まとめよう」です。今回板書の工夫、つまり、ポイントにしたのは、「見通しをもとう」の「まとめよう」の段階です。一斉学習形態の方法で「まとめる」という学習方法を丁寧に指導することを目的にした板書です。

板書のコツ(5/7時間目前半)

「一つの花」5/7時間目前半の板書
5/7時間目前半の板書

板書のコツ①

最初に、日付、題名、作者名を板書します。次に、教科書の学習の手引きである「まとめよう」が本時の学習内容であり、学習活動であることを補説したあと、「めあて 場面と場面をくらべて、心にのこったことをまとめよう。」と板書しました。

すでに、個別に学習を進めてきましたので、そのまとめの段階であることを理解させました。まとめのポイントを、「場面と場面をくらべる」と「心にのこったこと」にしました。

一斉学習における板書のポイントは、「場面と場面をくらべる」ことです。教科書では、「どの場面」の「どんな登場人物の行動」という条件が加わっています。一人一人の読みは「場面をくらべて」に向いていることを大事にしたからです。

板書のコツ②

「まとめよう」における学習活動は「ノートにまとめよう」と指示しています。この段階でノートにまとめることの意図は、次の「ひろげよう」につなげることです。「書いたことを友達と伝え合い、考え方や感じ方がちがっていたところについて、話し合いましょう。」ですから、共通に話し合える条件を整える必要があります。

分かりやすいのは、「戦争中」と「十年後」であるということを共通の場面にして、「心にのこったこと」をまとめる学習活動を指示しました。板書の効果を生かして、まとめ方の例を次のように板書を通して指導しました。

板書のコツ③

授業前半では、上段下段の2段に分けて、「食べ物」について比べた子供たちの考えを板書にまとめています。十年後の「お肉とお魚とどっちがいいの」というゆみ子の言葉が心に残った子供が多くいたので、下段に板書しました。それに対して、戦争中は「おいもや豆、かぼちゃしか」なかったという発表を受けて、上段に板書しました。「配給」と「買い物」の言葉を引き出し、矢印で対比を示しました。

板書のコツ④

戦争中は「一つだけ」という言葉がたくさん表現されているのに対し、十年後の場面では1回も出てこないという発表から、十年後の場面について考えました。「えらべるよろこび」があり、「もう一つだけの世界ではない」という発表を受けて、板書にまとめました。

板書のコツ⑤

模造紙に心に残ったことを理由とともにまとめた子供の発表を書き、学習の進め方を示しました。

板書のコツ(5/7時間目後半)

5/7時間目前半の板書5/7時間目後半の板書
5/7時間目後半の板書

板書のコツ①

前半の指導を通して、「まとめる」という活動について、学習傾向に3つの形が表れました。1つ目は、「登場人物の行動」を含めて、自分で学習を進める子供たちです。この子供たちは、板書の前半においても大事なことを適切に発言していました。2つ目は、コスモスの花について、考えようとした子供たちです。そして、3つ目は、まとめるということの意味が理解できない子供たちでした。

本時は、「学習の手引き」のまとめ方の例を理解させたいという気持ちもあり、授業の後半はコスモスの花について、話合いを行いました。方法は、対話形式で、要点を板書し、板書の意図が理解できるかどうかを確認しながら行いました。授業対象者は、まとめ方が分からないという子供たちです。すでに、理解をしている子供たちには、自分でノートにまとめるように指導しました。

板書のコツ②

「コスモスの花」について、十年後の場面の「コスモスの花でいっぱいに包まれている家」や「コスモスのトンネル」の言葉に着目して、戦争中の「一輪のコスモス」と比較した子供の発表を上段と下段に板書しました。

板書のコツ③

上段と下段を比べて、気付いたことを発表しました。「戦争中は、いつ爆弾が落ちてくるか分からない、生きていくことも大変な時代で花を味わう余裕がない」という発表がありました。黄色チョークで線を引き、上段に「花を味わうよゆうがない」と板書しました。十年後のコスモスについても話題が広がり、「父がくれたコスモスの花がたくさん咲いている」「ゆみ子は幸せに育っている」「平和な世界になった」という意見を受けて、赤チョークで「父のくれたコスモス」「たくさんのコスモス」「しあわせ」「平和」を板書しました。

 

構成/浅原孝子

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