平泳ぎで長く泳ぐためにはどうしたらいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #57】
動きが複雑な平泳ぎの指導については、カエル足の指導と手のかきの指導を、一斉指導とペア相互のお手伝いを上手に取り入れながら、段階的に確実に技能を身につける指導を紹介しました。
さて、今回はそれらを踏まえて、高学年の内容として「平泳ぎで長く泳ぐ」ことを目指した指導について紹介します。
執筆/筑波大学附属小学校教諭・齋藤直人
監修/筑波大学附属小学校教諭
体育授業研鑽会代表
筑波学校体育研究会理事・平川譲
目次
1 授業中の泳ぐ時間の確保
そもそも、「長く泳ぐ」ことを目指すときに、上の図のようなプールの使い方で、いきなり25mや50mの長い距離を目指そうとしても、なかなか全体的な成果が上がりません。
十分に泳力がついていない状態で、25m泳ぐことを目指しても、途中で何度も立ってしまうだけでなく、教師や周りの子どもたちからのフィードバックやお手伝いが十分に得られません。また、待ち時間が長くなり、1人あたりの泳ぐ時間が短くなってしまいます。そうなれば、当然技能の獲得が難しくなります。
そこで、下の図のようにプールを使うことで、泳ぐ頻度が増え、結果的に一人一人の泳ぐ時間をしっかりと確保するとともに、教師や周りの子どもたちからもフィードバックを得やすい状況をつくることにつながります。
2 長く泳ぐためのポイント
長く泳ぐには、十分な呼吸を確保しながら、効率よく推進力を得ることが大切です。
具体的に平泳ぎでは次の2つのことを意識させます。
①手と足をタイミングよく動かして、しっかりと息継ぎをすること
②カエル足でけった後に、全身をしっかり伸ばして進む時間を長くすること
カエル足と手のかきのコンビネーションは#29を参考にしてください。特に手と足を動かすタイミングが分からず前に進まない場合には、泳いでいる子の横で教師や周りの子どもたちが一緒に歩いて進みながら、「けって~~、パッ!けって~~、パッ!」と声をかけましょう。
3 のびのび平泳ぎ
下の図のようにプールを使います。
片道を泳ぎ切るまでの、カエル足でけった回数や手でかいた回数を同じグループの子どもが数えます。少ない回数で泳ぎ切ることを目標にします。この教材を通して、大きな動きでしっかり伸びの時間のあるゆったりとした泳ぎを身につけさせます。ける回数を得点化することで意欲を持続させ、繰り返し取り組むことができます。
4 平泳ぎリレー(5分・10分)
下の図のようにプールを使います。
プールの横幅を1人1往復するリレーにして、一定時間内に延べ何人が泳いだかを競います。なるべく、泳ぎが苦手な子を第1泳者にして、泳ぐ回数が少しでも多くなるようにします。
実態に応じて、時間は調整して取り組みますが、全員に泳ぐ機会を確保したいので、あまり短くなりすぎないようにしましょう。
また、泳いだ人数を増やそうとして焦って動きが雑になったり、伸びている時間が短くなったりするので、教師は積極的に声をかけていきましょう。
5 25m・50mチャレンジ
全体的な泳力の向上が確認できたら、25mや50mに挑戦させます。ここでは下の図のようにプールを使います。壁側を泳ぎが苦手な子のためのコース(25mチャレンジコース)、中央を50mチャレンジのコースとします。
昨年紹介した#28、#29と合わせて、段階的に指導しながら、すべての子どもたちに平泳ぎで泳ぐことの楽しさを味わわせましょう。
また、プールの使い方についても、参考にしていただければ幸いです。これは、クロールで長く泳ぐ時にも同じ使い方ができます。泳力別での授業は個に応じていると思われがちですが、もともとある技能差がさらに広がるだけでなく、子ども同士の学び合いの機会が減り、学習意欲の低下につながります。一斉指導で、仲間とかかわり合いながら、「みんなができる、みんなでできる」水泳授業に取り組んでみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
平川譲、清水由、眞榮里耕太、齋藤直人(2016)『水泳指導のコツと授業アイデア』ナツメ社
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執筆
齋藤直人
筑波大学附属小学校 教諭
筑波学校体育研究会 理事
1985年 山形県庄内町生まれ。「体の基本的な動きを身に付け、高めること」を目指した対話(声かけ、お手伝い)でつなぐ体育授業を研究。全国の子どもたちや先生方が、今よりほんの少しでも体育授業を好きになってもらえる方法を模索中。著書に『対話でつなぐ体育授業51』(東洋館出版社)等。
監修
平川譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。