宿泊行事の事前指導は「視覚化」してバッチリ!【ダウンロード資料付き】
修学旅行などの宿泊行事では、入浴時の注意点、部屋での過ごし方など、たくさんの事前指導が必要になります。でも、一度に一気に指導をしても、子どもたちは覚えていられないかもしれませんよね。そこで効果的なのは、指導事項を「視覚化」するということ。今回は、宿泊行事の事前指導が子どもに入りやすくなるアイデアを紹介します。
【連載】松下隼司の笑って!!エヴリディ
目次
【しくじり】“長く・重い”1回こっきりのこってり事前指導
林間学校や修学旅行などの宿泊を伴う学校行事の事前指導は、日帰りの遠足や社会見学と違い、事前指導するべきことがたくさんあります。
例えば、入浴関係です。脱衣所や浴室の使い方、マナーを事前指導しておきます。プライベートでの家族旅行と違い、学校として、学習の一環としてお風呂に入ることを指導しておきます。友達の体をからかったりしないなどの事前指導も必要です。
入浴の他にも、寝床となる部屋の使い方、部屋での過ごし方に関する事前指導もあります。
食事に関する事前指導も必要です。遠足や社会見学でのお弁当とは違って、宿泊先では、夕食や朝食が出るからです。
私の場合は、宿泊行事の引率の経験をすればするほど、事前指導が多くなっていきました。子ども同士がトラブルを起こしたり、子どもに失敗経験をさせてしまったりすることが増え、それは事前指導が足りないからだと考えたのです。
次に、小学6年生を担任したときの修学旅行の具体的な事前指導(入浴指導)の一部を紹介します。
入浴の事前指導
- 脱いだ服は、かごに入れる。
- お風呂に入る前には、かけ湯をする。(それか、体を洗う)
- 浴室では、絶対に走らない。(すべって危ないから)
- 浴室では、大声で叫ばない。
- 浴槽では、泳がない。
- 浴槽にタオルを巻いたまま入らない。
- 浴室から出る前に、体をタオルで拭く。
- 浴室で使った桶や椅子などは元の場所に戻す。
- お風呂では、自分の体を見せつけない。
- 友達の体をじろじろ見ない。
- 友達の体をからかわない。
- 脱衣所から出るときは、下着を忘れない。
入浴だけで10個以上の事前指導があります。バスや食事、部屋の過ごし方などを含めると、50個以上になります。
私の失敗は、修学旅行の事前指導を、こってり1回しただけだったことです。1回の事前指導で、当日、子どもたちは事前指導通りに行動してくれると思い込んでしまっていたのです。
教師は、現地へ下見に行き、何度も何度もシミュレーションしています。教師の経験年数が長くなれば、林間や修学旅行の引率経験も多くなります。でも、子どもたちは初めての経験です。つまり、引率経験を積み重ねるほど、子どもの経験の浅さとの差が大きくなるのです。その差を見落とすと、修学旅行や林間学習の当日、子どもたちは不適切な言動をして、教師の叱責が多くなってしまいます。結果、子どもたちにとって楽しくない思い出となってしまいます。教師も叱ってばかりでへとへとになってしまうでしょう。
【しくじり回避法】視覚化して“短く・何度も”指導しよう
視覚化する
下の画像は、事前指導の内容をパワーポイントでつくったものの一部です。
実際のスライドは、71枚あります。
記事末に実際のスライド資料を添付するので、学校や子どもの実情に応じてお使いいただけましたら幸いです。
事前指導が多くなればなるほど、口で言っただけでは、大人でも頭に入りません。1日どころか、1時間後に半分覚えていたらいい方だと思います。だから、事前指導の項目が多い場合は、視覚化することをおすすめします。
視覚化する際、気をつけているのは次の5つです。
- スライド1枚あたりの情報量(文字数)をできるだけ減らす。
- 印象づけたいキーワードに色をつける。
- 印象づけたいキーワードのフォントを大きくする。
- 丸文字風の柔らかいフォントを使って、事前指導の押し付けられ感を小さくする。
- 行間をできるだけ空けて、読みやすくする。
子ども目線で考えて、とにかく見やすいようにしています。
スライドを自動再生
また、一度や二度、事前指導をしただけでは抜け落ちてしまいます。そこで、朝学や給食などの時間に、自動再生で映しています(たくさんのスライドを1枚1枚クリックするのは煩わしいので、クリックしないで次々と自動でスライドが再生するように設定しておきます)。
下の映像は、実際の自動再生をしている様子です。
スライドを自動再生する方法は、下記のサイトなどを参考にしてください。
◆パワーポイント
https://studio.virtual-planner.com/slideshow-auto-play/
◆PDF
https://helpx.adobe.com/jp/acrobat/kb/3426.html
「告白」の絶好の機会?!
事前指導で抜け落ちがちになるのが、「告白」です。宿泊を伴う学校行事は、告白の絶好の機会と捉える子どもがいるのです(1日目の夜に告白をするわけです)。
事前指導が必要なのが、野次馬(冷やかし)の存在です。異様に興奮して、就寝時刻を過ぎてもなかなか寝付けない子どもが出てしまいます。野次馬が多くいる中での告白は成功率が下がることを伝えるのもよいかと思います。
告白して振られたら、振られた本人も、そして振った子どもも翌日からの活動を楽しめないことでしょう。人を好きになる気持ちは素晴らしいけれど、告白はプライベートの時間にすることを子どもたちにはおすすめしておきましょう。
さらに、本気の告白でなく、ジャンケンなどで負けた人に罰ゲームとして、告白させるケースもあります(いわゆる「悪ノリ」ですね……)。面白半分でターゲットにされた相手にとっては、たまったものではありません。
宿泊学習では、子どもたちは普段よりも気持ちが開放的になるものですが、どんなときでも、人を傷つけたり不快にさせたりする言動をとってはいけないということを改めて、毅然と指導しておきましょう。
(参考)
『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』(著:松下隼司/フォーラムA企画)
https://amzn.to/4aYGzQg
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ