小1国語科「はるがきた」全時間の板書&指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小1国語科「はるがきた」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:はるがきた(光村図書・こくご 一上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/相模女子大学学芸学部 子ども教育学科専任講師・成家雅史
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校・橋浦龍彦

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、小学校の国語の学びの始まりとして、互いの話に関心をもつことを目指しています。
集団としての学びの土台をつくるために、友達や教師と話したり聞いたりして学ぶことを楽しいと感じさせられるとよいでしょう。
まだ、学級づくりのはじめの段階です。入学から間もない児童が安心して話すことができるように、教師の肯定的な言葉が大切になります。教師が率先して児童の言葉を価値付け、互いに認め合う学級の雰囲気をつくっていきましょう。

「はるがきた」では、絵から想像を広げることを楽しむことができます。絵の中で何をしているのか、何と言っているのかなどについて、互いの考えを聞き合います。
最後の詩は、みんなで声を合わせて読むことで一体感を味わったり、友達と互いの音読を聞いて楽しんだりします。
これから始まる小学校での国語科の学びに期待が高まるよう、単元をデザインしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

就学前に、児童は園での活動を通して言葉や絵にふれており、集団で話したり聞いたりする経験はしてきているでしょう。しかし、小学校に入学し、学級づくりが始まったばかりの段階では、多くの児童が緊張して、学級の友達とのコミュニケーションが乏しい状態です。
また、多様な児童のいる現代の教室では、聞く必然性がなければ、互いの話に興味をもって話を聞くことが難しい場合も多いでしょう。

そこで、授業においては、絵を見て何があるのか、どのような人がいるのか、何をしているのか、何と言っているのかなど、幅広く想像して「話すこと・聞くこと」を楽しんでいきます。
絵の中のどの人物に目を付けるかは、児童それぞれです。同じ人物に注目していても、異なる言葉で行動を言い表すことがあります。また、同じ人物でも異なる台詞を考えていたり、意外な人物に注目している子がいることに気付いたりしていきます。そうして、友達の考えを聞くことが面白いと感じられるようにしていきたいものです。

本教材は、「はるがきた」の題と4行の詩を除き、全て絵で構成されています。見開きで4ページに渡る絵は、①紙に絵を描く、②紙飛行機に乗って出発する、③空から町を見下ろす、④学校に帰ってくる、というように、時系列になっています。
ICTを活用し、モニターにデジタル教科書で見開き4枚の絵を順に映していくとよいでしょう。
年度始めで校内のICT環境が整っていなければ、書画カメラで代用します。発言した児童が目を付けたところを教師が拡大して映すと、聞き手の児童にも伝わりやすくなります。
聞いている児童にも、発言した児童がどの人物のことを話したのかを指さすよう伝えると、より関心をもって互いの話を聞くことができるでしょう。教師は児童が目を付けたところをペンで囲むなどするとよいでしょう。
ただし、モニターに次々絵を映していくと、それ以前の絵は消えてしまいます。児童の気付きを残しておきたいときは、教科書の拡大コピーを黒板に貼っておきます。学校に設備がある場合は、複数のモニターを使うとよいでしょう。

児童同士で話し合う際は、絵の中のどこに注目したのかを指さしながら話したり、あえて指をささず、聞き手の児童がどの人物について話しているのかを当てたりします。
授業における児童の姿を見て、段階的に学んでいくとよいでしょう。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 自分で絵の中から人や物を見つける

学級集団で学んでいることをいかし、児童それぞれの着眼点を大切にしたいと考えます。絵の中の子供や大人(先生)、カエルや鳥などの生き物、タンポポなどの植物というように、児童が注目するものは様々です。注目したものを褒められる、認められることで、入門期の児童はより主体的に学んでいくでしょう。教師は、「絵の中のこの子は、先生に『一緒に紙飛行機に乗ろうよ』と呼んでいるのか。よく気が付いたね。」「そうか、カエルは跳ぼうとしているのか。まだ跳ぶ前だね。絵をよく見ているね。」と価値付けていきます。

絵への着眼点に悩んでいる児童がいれば、具体的な箇所を教師が鉛筆で囲んだり指さしたりして、「これは何かな」「この人は何をしているかな」と問うてもよいでしょう。

〈対話的な学び〉 友達との話を楽しむ

まずは、友達と話し合うリズムをつかませましょう。最初の見開きにある紙飛行機の絵を描いている絵や、2・3ページの紙飛行機に乗って飛び始めた絵を使い、「○○がある」「○○がいる」などの形で数名が発表します。こうして、人物が何をしているのかを全体で話し合います。

次の、紙飛行機に乗って町を見下ろしているページでは、全体で話し合ったことをいかしながら、ペアでの対話を充実させていきます。様々なペアで話し合い、友達と話すことに慣れていくとよいでしょう。このとき、「何をしているでしょう」と問うと、行動を視点に考えさせることができます。
「絵を描いている」「紙飛行機に乗っている」「空を飛ぼうとしている」などが挙がるでしょう。
このように行動に焦点化したとしても、絵への着眼点は様々です。同様に、「何と言っているでしょう」と問えば、会話に焦点化することができます。

見つけたものを全体の前で話すことには緊張感をもっている児童もいるでしょう。まずは隣の席の子と話します。緊張している子も、ペアで一度話していると、全体でも安心して話すことができるでしょう。教師は机間指導しながら、児童が隣同士で話していることを聞き、目を付けたところを価値付けていきます。
ペアでも発話が難しければ、見つけたものを鉛筆で囲んだり、指さしたりするとよいでしょう。

〈深い学び〉 言葉の違いに気付く

まだ1年生の始めの段階ですから、深い学びを実現するというよりも、深い学びに向かおうとする素地を育てることを目指します。「友達の話を聞くって面白い」「友達はこんなところに目を付けたのか」という感心や驚きの積み重ねが、主体的・対話的で深い学びにつながっていくと考えます。

例えば、同じカエルの絵に注目していても、「カエルが跳ぼうとしている」「カエルが跳ねている」というように、異なる言葉で話す子がいるでしょう。そうした言葉を全体で共有し、友達の話を聞くことで言葉が広がっていくことを感じさせていきます。

私の学級では、「何をしているでしょう」と問うても、「クレヨンがある」「車椅子がある」というように、「ある」の形で答える子もいました。問われていることに正対していなかったとしても、絵の中から見つけたことを価値付けていくとよいでしょう。
板書では、「ある」と「いる」に異なる色で印を付けます。このように、「○○がある」と「○○がいる」「○○している」の違いに気付くことも、知識・技能の目標「言葉には、事物の内容を表す働きがあることに気づくことができる」の一つです。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

入学直後では、1年生は端末を持っていたとしても活用は難しいでしょう。
まずは、教師による活用を進めていきます。デジタル教科書や書画カメラを活用し、発言した児童が絵の中で注目した箇所を拡大すると、話を聞いている児童にも絵のどこについて話をしているのかが分かりやすくなります。

また、教科書の絵だけでなく、学校やその周辺の写真、児童が描いた絵などを活用してもよいでしょう。教師の端末に保存しておき、モニターに映します。絵から想像することが苦手でも、身近な学校やその周辺の写真、自分たちや同じ学校の仲間が描いた絵であれば、関心をもちやすくなるでしょう。

想像が膨らまない児童や、自信をもって発言することが難しい児童には、よく聞けていることを褒めて、少しずつ自信をつけさせます。自分の思いが先行してなかなか友達の話に関心をもつことができない児童には、よく考えを話せていることを褒めます。「○○さん、自分が指名されなかったときも、最後まで友達のお話を聞いているね。」と価値付け、話し方や聞き方を育てる土台をつくっていきます。

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: みんなで はなそう きこう

【主な学習活動】
第一次(1時
① 絵から見つけたことを話す。

第一次(2時
② 絵の中の人物や動植物になりきり、想像を広げながら話したり聞いたりする。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/横井智美

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