小6国語「さなぎたちの教室」板書の技術
今回の教材は、「さなぎたちの教室」です。この単元では、「登場人物の人物像が分かる言葉・文章を探しながら、人物同士の関係性を考え、心情の変化を朗読で表現できること」を目指します。
そのため、人物像が分かる言葉・文章を探し、朗読で表現することを助ける板書の工夫を紹介します。また、ノートづくりが楽しく、自分にもできるという自信になる声かけもお届けします。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂
教材名 「さなぎたちの教室」(東京書籍)
目次
単元の計画(全5時間)
- これまでの学習を振り返り、単元の学習の見通しをもつ。
- 登場人物の確認後、中心人物の人物像を捉える。
- 人物同士の関わりと、中心人物の心情の変化について考える。
- 登場人物の様子を朗読で表現する。
- どの表現に着目し、どのように工夫して朗読したかを振り返る。
板書の基本
単元を通してつけたい力は「朗読で表現する力」です。中心人物の心情の変化を確かめながら読み、捉えたことが聞き手に伝わるように朗読できることを目指します。
この教材は、4月のクラス替え直後の不安定な子供たちの心情に寄り添えるような物語となっています。登場人物は、わたし(谷さん)、松田君、高月さんの3人です。思春期の繊細で不安になっている女の子2人と、対照的に真っ直ぐに思いを伝える独特な雰囲気をもっている男の子1人。どこか自分のクラスにもいそうだなと感じられるような登場人物の様子が丁寧に描かれています。
子供たちと同じ6年生が設定の物語は、共感する部分もたくさんあると考え、登場人物の人物像が分かる言葉・文章を探しながら、人物同士の関係性を考え、心情の変化を朗読で表現できることを目指しました。
1~4年生までの音読では、「スラスラ・ハキハキ・ただしく」のような目の前の子供たちに合った合い言葉を作成しながら「楽しく」音読が好きになることを目指しました。この音読で育てた力を生かし、自分が想像したことを声で伝える朗読へ気持ちを向けたいと考えました。教材「さなぎたちの教室」は、「セリフ」が多い作品です。教材の特性を生かして、一人一人の声の調子・響きに注目することを大切にしています。
板書も、子供の考え、ポイントを言語化するようにしました。この時期だからこそ、「聞き合い」を大事にしています。友達が発言したその内容が聞いている友達の知識になっているのだと感じられるような声かけをしていきたいと考え、板書もそのように意識しています。「みんなに伝えてよかった!」と思える経験を国語の授業でも増やしていく時期だと考えています。
板書のコツ(4/5時間目前半)
板書のコツ①
最初に本時のめあて「登場人物の様子を朗読で表現しよう。」を板書しました。めあてからこれからの学習の方向を考えさせるために、めあてを「写しましょう」と言うのではなく、ゆっくり書くことをねらっています。
どの学年を担任しても、4月の最初の国語ではノートにきっちり書く、ということを徹底するようにしています。それが、教室の中で格差を生み出さないポイントです。板書を写させることだけが目的になるのではありません。ノートを通して子供に自信を付けていくことになるのです。
板書のコツ②
書くことは、忍耐がいる作業で、子供にとっては大変な作業になります。しかし、出来上がったノートには説得力があります。大変という字は、大きく変わると書きますが、子供を根底から変える力をノートはもっているのだと、これまでの子供の姿から学ぶことができました。そこで、ノートには毎回ページ数を書くこと、「先生の話を聞いていたら、お隣さんと同じノートになるはずです。先生の話をよく聞いて、書こう」と伝えています。
実際の教師の声かけは、
「ノートの1行目、一番上からめあてと書きます。その後、四角で囲みます」
「次は1行空けて、書き始めます」
「次は、年の横から書き始めましょう」
「書き終わった人は、鉛筆を置いて、板書を読む練習をしましょう」
「さぁ、お隣さんと同じノートになりましたか?」
子供たちからは
「はーい」
「うわっ、ぴったりや」
「あっ、聞き間違えたー」
と言った声が聞こえてくるはずです。
ノート指導の最初の1ページでは、
「ノートって楽しい!」
「私にもできる!」 という2つのことを感じさせてあげましょう。
板書のコツ(4/5時間目後半)
板書のコツ①
めあてを書いた後は、実際に子供たちに、登場人物らしい「セリフ」を選んでもらいました。そして、なぜそれがその人物らしいと感じるのか、理由もノートに書くように伝えています。つまり、それぞれの人物像を考えていく学習になっているということです。
板書のコツ②
その後、学級でアンケートを行い、一番多かったセリフを板書しました。学級が2クラスあると、同じ人物であっても選ぶ「セリフ」は違いました。ここで大事なのは「なぜそう思ったのか」という根拠です。子供たちに文章をもとにその根拠を聞いていき、黄色のチョークで板書します。
その後、それぞれのセリフを1人ずつ朗読していきました。
朗読の学習であっても板書をしっかり行うことで、それをヒントにしながら、自分なりの表現をしている姿が印象的でした。
構成/浅原孝子