小4国語「アップとルーズで伝える」京女式板書の技術
今回の教材は、説明文の「アップとルーズで伝える」です。この単元の学習内容は、「文章の組み立てに気を付けて読み、筆者の考えを捉えて、自分の考えを発表しよう」です。そのため、「文章の組み立て」の理解につながるような板書、筆者の考えが表れている段落を見付けられるような板書などの工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子
単元名 筆者の考えをとらえて、自分の考えを発表しよう
教材名 「アップとルーズで伝える」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全8時間)
- 学習課題を設定し、学習計画を立てる。
- 「思いやりのデザイン」を読み、文章構成を把握し、筆者の考えを捉えて自分の考えをもつ。
- 「アップとルーズで伝える」を読み、学習のめあてを確認する。
- 文章構成を捉え、文章の大体をつかむ。
- 「アップ」と「ルーズ」の対比を捉え、対比することのよさについて話し合う。
- 筆者の考えに対する自分の考えをもつ。
- 「アップとルーズで伝える」ということについて、考えたことを発表する。
- 学習の振り返りをする。
板書の基本
〇教材「アップとルーズ」の目標を教科書の「学習・見通しをもとう」では次のように示しています。
文章の組み立てに気をつけて読み、筆者の考えをとらえて、それに対する自分の考えをまとめよう。
めあてのキーワードは、①「文章の組み立て」②「筆者の考え」③「自分の考えをまとめる」です。言葉による見方、考え方を働かせることに直接つながるのは、③「自分の考えをまとめる」です。しかし、そこにたどり着くためには、②「筆者の考え」を理解する必要があります。そして、すべての始まりは、「何を、どのように書いているか」ということの理解です。教科書の「目標」を引用すれば「文章の組み立て」を理解することです。
〇文章の組み立てを理解する学習は、すでに3年生において経験しています。「初め」「中」「終わり」の構成や具体的な事例は既習の学習です。それでも、「アップとルーズで伝える」の指導においては、練習教材として「思いやりのデザイン」や情報教材として「考えや例」があります。これらのことから、自分の力で文章を読める力、理解する力を育てるという方向に授業を進めることが大事になります。板書は「文章の組み立て」の理解につながるように考えました。
〇板書で留意したことは次の3つです。
①「文章全体をとらえる」ことをめあてに、前教材の「思いやりのデザイン」で習得した力を生かす。
②アップとルーズを対比の視点で考えることができる板書にする。
③段落関係をもとに説明の内容を理解し、筆者の考えが表れている段落を見付けられるようにする。
板書のコツ(4/8時間目前半)
板書のコツ①
初めに、日付・題名を板書します。次に、「思いやりのデザイン」で習得した学習方法を話題にし、本時の学習は文章全体を捉えることであることを説明します。続いて、めあて〈「思いやりのデザイン」の学習をいかして、文章全体をとらえよう。〉を板書します。
板書のコツ②
全文を段落ごとに音読させます。黒板の右上段からは①②③④⑤⑥⑦⑧の段落番号を書き、全体が8段落で構成されていることを共通理解するよう指導します。続いて①段落のまとめ方を説明し、①段落は、テレビでサッカーの試合が放送されている場面であること、また、会場全体が映し出されていることなど、全体の場面であることを補足し、「テレビでサッカーの試合」「ハーフタイム→会場全体」と板書しました。
板書のコツ③
②段落は、画面中央の選手の場面であり、③段落で、「アップ」「ルーズ」という題名の言葉が出てくることが理解できるように板書します(カードを活用し、アップとルーズを意識できるように配慮します)。
③段落は、前半が「ルーズ」の説明であり、後半が「アップ」の説明で、問題の文として、「アップとルーズでは、どんなちがいがあるのでしょう。」が問いの文であることを指導します。
板書のコツ(4/8時間目中盤)
板書のコツ①
①段落から③段落の指導は、教師が中心に行います。それは、言葉の選び方や要点の記述の仕方を習得させることを目的にしたからです。
④段落から⑧段落は、ペア学習の形態で行います。ペア学習では板書を参考にしてまとめるように助言します。
板書のコツ②
④段落は、「アップ」のカード1枚であり、⑤段落は、「ルーズ」のカードが1枚です。③⑥⑦⑧段落は、「アップ」と「ルーズ」のカードです。この違いをもとに、対比の指導もします。また、④段落から⑥段落の板書は、ペア学習の発表を生かしたものです。
板書のコツ③
各段落、子供の発表の中から大事な語句を選び、板書にまとめています。つなぎ言葉に着目させるために、緑色のチョークで示しています。
板書のコツ(4/8時間目後半)
板書のコツ①
①段落から⑧段落の板書を読ませた後、「めあて」が到達できたかどうかを確認する時間を設けます。めあて〈「思いやりのデザイン」の学習をいかして、文章全体をとらえよう。〉の「いかして」ということが子供の意識から希薄になっているようなので、「文章の組み立て」に着目させました。その結果、「初め」「中」「終わり」の文章構成をまとめた板書になりました。
板書のコツ②
文章構成を考えるとき、⑥段落の「このように」から「終わり」が始まるという意見が子供から出ました。そこで、意見を交流する時間を設けました。その結果、⑧段落が筆者の考えを分かりやすく書いているという子供の発表を受けて、本指導では、板書において「終わり」を⑧段落にしています。
構成/浅原孝子