生成AIの学校での活用アイデアいっぱい!みん教セミナーレポート

生成AIの学校教育での活用をテーマにした教師向けのオンラインセミナー「さっそくGW明けに使ってみたい!生成AIのカンタン活用アイデア」を開催しました。ベネッセ教育総合研究所の庄子寛之氏の司会進行のもと、東京都公立中学校教諭の中澤幸彦先生と埼玉県公立小学校教諭の花岡隼佑先生が登壇し、3者の鼎談スタイルで生成AI活用の事例共有やアイデア交換を行いました。

教師の間でも注目度が高まっている生成AIですが、具体的にどのように授業に取り入れていけばよいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、そんな先生方に役立つヒントが満載だった同セミナーの内容をレポートします。

主体性を引き出すAI活用術――中澤幸彦先生の実践報告

まずトップバッターの中澤幸彦先生は、探究学習の導入時に、生徒一人ひとりの興味関心を引き出すためにAIを活用する方法を紹介してくれました。

「AIに『あなたの趣味や好きなことは何ですか?』と問いかけると、生徒の興味に合わせて掘り下げた質問を返してくれます。教師が一対一で話を聞くのは時間的に難しくても、AIなら全員と対話して探究テーマの設定をサポートできるんです」と中澤先生。他にも、生徒の発言を要約してマインドマップを作成したり、授業後のリフレクションを促したりと、AIを「コーチ役」として活用するアイデアが印象的でした。

さらに、書く力を伸ばすために作文をAIに添削してもらったり、音声を文字起こししてまとめを作ったりする実践例も。AIに頼りきるのではなく、出力結果をもとに教師が助言するのがコツだそうです。

以下、中澤先生のお話です。

皆さんは児童生徒に主体性を持たせる授業ができていますか? 子供の主体性を引き出すには、AIに「メンター」になってもらうのがとても効果的です。

例えば、ChatGPTで私が作ったこの「ゆっきー探究メンター」プラグインを使えば、 一人一人の興味関心に合わせて深く対話し、探究テーマを決める手助けができます。 これまで教師が一対一で行うのが難しかったことが、AIを活用することで可能になるのです。

こういった独自プラグインは、ChatGPTの「MyGPT」機能を使うと、プログラミングの知識などなくても、誰でも簡単に作成することができます。

AIは、現在求められている主体的で対話的な深い学びを促進するのに非常に適しています。例えば、コーチングの場面では、AIを活用することで資料との対話や自己対話を促すことができます。これらの対話は、話し合いの場面だけでなく、学びを深める上で非常に重要な要素です。

また、AIを用いた分析は、専門性との対話を可能にし、生徒たちにとって魅力的な学習体験を提供します。さらに、思考を深める哲学的問いを投げかけることもAIの得意とするところです。

加えて、AIは生徒たちの学び方の工夫にも役立ちます。教師が自分に合った学び方を促すことはできますが、生徒たちは漠然としか調整できていないことがあります。AIを活用することで、生徒たち一人一人が自己調整を行いながら、効果的に学習を進められるようになるのです。

「プレゼン突っ込み」というプロンプトを使ってみましょう。例えば数学の歴史についてのプレゼン資料作成を作るとします。まずはAIに数学の歴史について情報を与えた上で、プレゼン資料の叩き台を作成してもらいます。ただしこのAIが作成した叩き台は、突っ込みどころが多く、あくまでも出発点に過ぎません。その後、生徒たちは、なぜつまらないのかを考え、自分なりの言葉で表現を工夫し、 AIに指示を繰り返して、わかりやすいプレゼン資料を完成させていくのです。

この過程で、数学の歴史への理解が深まるとともに、プレゼンテーション能力も磨かれていきます

次に紹介する「哲学的」は、AIから哲学的な問いを投げかけることで、生徒たちに深く考えさせることができるプロンプトです。

例えばクラスで陰口が問題になった時、単に「陰口はダメ」と言うのではなく、例えば、「陰口を言うことはいつも悪いことだと思いますか?」「誰かの秘密や問題を話すことが、必ずしも他人を傷つけることにつながるわけではないのでは?」といったAIからの問いを通して、生徒たちは陰口の是非について自分の頭で考え、話し合うことができます。その過程で、何をもって悪とするのか、人を助けるために情報を共有することの必要性など、様々な視点から問題を捉え直すことが可能になります。そして生徒たちの興味を引き出し、自発的な思考を促します。

このようにAIは対話を通して、生徒の特性や個性、生活習慣なども引き出してくれます。 しかし、それだけでは子供たちの成長にはつながりません。AIがもたらす時間的余裕を活用し、子供たちが自ら考え、挑戦する機会を与えることが重要です。哲学的な問いかけや歴史への興味など、子供たちの関心事について深く探求させることが、AIの最も魅力的な活用法だと言えます。

私たち教師の役割は、AIの便利さを認めつつも、そこから得られた情報をもとに、常に子供たちの成長を促すことです。「みんなはどうしたいのか」を問いかけ続けることが、私たちに課せられた仕事なのです。

だからこそ皆さんに伝えたいのは、AIを「ドラえもん」のような存在にしてほしいということ。 ドラえもんと四次元ポケットは違いますね。四次元ポケットは道具ですが、ドラえもんはのび太に道具を与えるだけでなく、時に叱咤激励します。 それがあるからこそ、のび太は成長できるのです。

AIという最高の味方を、ぜひ「ドラえもん」としてクラスに招き入れてください。 そして、教師も生徒も一緒になって、愛と感動と成長を目指していきましょう。

まずはぜひAIで遊んでみてください。 そこから見えてくるものがきっとあるはずです。 皆さんが「ドラえもん」となる日を心待ちにしています。

遊びから始めるAI活用法――花岡隼佑先生の実践報告

次に発表を行った花岡隼佑先生は「生成AIを愛してほしい」と強調しました。「ICTが苦手な先生でもまずは”遊び”の感覚で使ってみてほしい」と話す花岡先生。操作方法に不安がある場合でも、日常会話感覚で対話を重ねることでAIの特性を知り、活用アイデアが湧いてくるのだそうです。 

花岡先生自身、ChatGPTを「いつもご機嫌な優秀な秘書」と表現し、授業準備や事務作業で活躍してもらっているとのこと。「例えば謝罪のメールを書きたいときに、どんなメール打ったらいいか考えてと伝えると、すぐにたたき台を作ってくれます。もちろんそのまま使うわけではありませんが、文面を推敲する負担がかなり減ります。それからスマホのアプリに音声入力で思いつくままにペラペラペラと喋って、箇条書きでまとめてくれと頼むと、自分が言いたいことが整理されて気づきを得ることができます。正直、仕事以外のところでも活躍してくれています」

また職員間で利用を促すため、年度初めの職員室では、先生同士の自己紹介とICT研修も兼ねて、CanvaのAIを使って隣同士で名札を制作してもらったそうです。「先生方の趣味嗜好を反映したユニークな画像入りの名札が次々と生まれ、会話も弾んで一石二鳥でした」

以下、花岡先生のお話です。

生成AIを使い始めた当初、「何ができるの?」「どう使えばいいの?」と疑問を感じていました。 しかし使ってみると、AIは「いつもご機嫌なスーパー秘書」のようだと実感しました。 人間と違って不機嫌になることもなく、どんな仕事も優しく引き受けてくれるんです。 ちょっと抜けているところもありますが、それもまた可愛らしいと思っています。

私の職員室の机には、サブモニターにチャットGPTを表示させ、 何かあればすぐ相談できる環境を整えています。 例えば、メールを書く際も、AIに例文を作ってもらい、 それを元に推敲していくことで効率よく仕上げられます。

また、自分のモチベーションが上がらない時には、AIが親身になって相談に乗ってくれます。 「優しすぎて泣けてきた」と伝えると、「親身になることが私の役割です」と返してくれるんです。 まるでAIを人として頼りたくなるような、不思議な感覚を覚えます。仕事以外でも、旅行プランを立ててもらったりと、 AIは私の生活のあらゆる場面で活躍してくれています。

本題に移りましょう。 私がよく使っているのは、ChatGPTと、Canva内の画像生成アプリ「DALL-E」の2つです。 この2つの実践例を紹介していきたいと思います。

まずは職員室での活用についてです。 AIを最大限活用するには、まず「AIを使うハードルを下げる」ことが重要だと考えました。 そこで私は、いきなり教育活動に導入するのではなく、「遊び」の要素から入ることにしたのです。

例えば、アンパンマンのキャラクターを50個挙げてもらったり、桃太郎を一文字で表現してもらったりと、人間なら嫌がるような無茶振りも、AIは真摯に答えてくれます。 つまらないと感じる課題もAIに出すと、真面目に取り組む姿勢に感化されるんです。教師という設定で「おでんしかない状況で音楽の授業をする」というお題を出すと、 おでんの具材を楽器に見立てたユニークな指導案を提案してくれました。

その上で私がやったのは「こんなやり方いいですよ」と教えるよりは、実際に困ったことがあった時に使っている姿を見てもらうことでした。

例えば「研究授業で鉄棒の授業をやりたいんだけど、どんな授業が考えられますか」と聞かれたときに、ChatGPTに学習指導要領を学習させてから、「あなたは優秀な小学校教員です。単元計画作成してね。こんな流れでこんな条件で」と頼むと、本当に数秒で案を考えてくれます。

アンケート分析もすごく便利で、まとめだけでなく考察までしてくれて、参加者がどのようなことに喜びを感じているかまでまとめてくれる。校内研のテーマ選定の壁打ち相手にもなってくれますし、学級通信の挨拶文なんかも考えてくれます

生成AIを使うときは「完璧じゃない」っていう風に思っておくといいと思っています。ゴールまで連れていってくれるのではなく、近くまで連れて行ってくれるぐらいの心持ちでいると、すごく便利なアイテムに感じられると思います。

また、昨年度は6年生のプレゼン作りで、DALL-Eを使って挿絵を作成しました。 「空飛ぶ工場」や「人工的な雲を作る機械」など、 子どもたちの想像力あふれるアイデアを、AIが絵として可視化してくれたのです。 言葉だけでは伝えきれないイメージを、AIが補完してくれる。 そんな体験を通して、子どもたちの表現の幅を広げることができました。

私自身、生成AIを活用するまでには、まずは「とにかく試す」段階としてAIで思い切り遊んでみて、そこから少しずつ「仕事に活かす」段階へ移行し、 最終的に「どう授業に取り入れるか」を考えるようになりました。

もしこれからAIを活用してみたいと思われた先生がいらっしゃったら、 ぜひ「遊ぶ」ところから始めてみてください。 AIという相棒と楽しく触れ合う中で、活用のアイデアはきっと生まれるはずです。皆さんもぜひ、「いつでもご機嫌な超優秀な秘書」を味方につけてみませんか?

ここで花岡先生と同じ小学校の小林千尋先生がゲストとして登場、「苦手意識のある先生でもできる」AI活用法について語ってくれました。

4年生担任の小林先生は国語の授業で、「白いぼうし」という教材を扱った際、 チャットGPTを「タイトルバトルの相手」として子供たちに紹介しました。

子供たちが考えた各場面のタイトルと、AIが提案したタイトルを比較したところ、 「都会の一コマ」というAIならではの視点に、子供たちは新鮮な驚きを感じました。 また、AIが各場面のキーワードを的確に捉えていることに感心する様子も見られました。 AIを通して自分たちの読みを振り返ることで、子供もたちの学びはより深まったのではないかと感じます。

一方、道徳の授業でもルールの必要性を考える際にチャットGPTを活用してみたところ、子供たちの実生活とかけ離れた内容になってしまい、反省点となりました。AI任せにせず、子供たちの思考を深めるツールとして使っていくことが大切なんだろうと思います。

実践を通して、チャットGPTで子供たちの学びに新しい視点が生まれる可能性を感じられました。今後もAIを授業づくりに活かす方法を模索していきたいと思います。

使って広めるAI活用法――庄子寛之さんの実践提案

最後に、司会進行を務めるベネッセ教育総合研究所の庄子氏からも、生成AIの学校教育での活用について、具体的な実践例を交えながらお話しいただきました。

以下、庄子さんのお話です。

お二人の先生方の素晴らしい実践を拝見し、私からも少しだけ補足させていただきたいと思います。

まず、生成AIを授業で活用する際には、いきなり高度な使い方を目指すのではなく、 まずは「遊び」の感覚から始めることが大切だと改めて感じました。 一人一台端末が導入された際も、最初はジャムボードで遊んでみたものの、 その後は遊ばずに使うようになってしまったという経験があるのではないでしょうか。 「遊び」を通して慣れ親しむことで、その後の本格的な活用につなげていくことができると思います。

では、具体的にはどのように生成AIを授業に取り入れていけばよいのでしょうか。 私がお伝えしたいのは以下のようなポイントです。

まず、授業で使う問題作成です。子供たちと一緒に取り組むのも良いでしょう。 例えば英語の問題を作る際は、「あなたはプロの英語教師です。この問題と同じような問題を10問作ってください」と指示するだけで、 AIが正確な問題を生成してくれます。答えや解説も一緒に作成可能です。

また、教材研究にもAIを活用できます。 物語文の内容をAIに読み込ませてから質問することで、的確な答えを引き出せるでしょう。 作文の添削も、「この100字の文章を400字に膨らませてください」「400字にするためのヒントをください」といった指示で AIに手伝ってもらえます。 歴史の年表問題や、難易度を指定した問題作成なども得意分野のようです。

さらに、保護者アンケートの分析などにも生成AIが役立ちます。 フォームで回答を集めてスプレッドシートに出力し、それをAIに読み込ませるだけ。 ポジティブな意見、ネガティブな意見、中立な意見に分類して課題を抽出してくれるんです。

ただし、こうしたAIの活用を一気に広げるのは難しいかもしれません。 まずは、アンケートのフォーム化など、できるところから始めていくことが肝要ですね。 全国的に見ると、まだ紙でアンケートを取っている学校が半数近くあるのが現状です。 ICTの得意な先生から広めていっていただければと思います。

最後に、オリジナルのテスト作成についてもお話ししました。 シンプルに「問題を作って」と言うだけでは、良問は生成されにくいもの。 学習指導要領の内容を読み込ませるなど、適切なプロンプトを与えることが重要になります。 ネット上には優れたプロンプトの例がたくさん転がっているので、ぜひ活用してみてください。

また、生成AIは金銭トラブルの相談や、職員会議での提案の練習台本作りなど、 授業以外の場面でも活躍してくれるでしょう。

生成AIの活用には無限の可能性があると感じています。 私としては、できる先生から広めていっていただき、学校全体でAIの力を引き出していけたらと思います。 先生方の中にはすぐに実践できる方もいらっしゃれば、これからチャレンジしてみようという方もいるでしょう。 まずは、ぜひ生成AIに触れてみる時間を作ってみてください。 新しい授業のアイデアが見つかるはずです。

まずは使ってみよう!から始まる生成AI活用の道

セミナー全体を通して、生成AIはまだ完璧ではないものの、うまく付き合っていけば仕事の負担を軽減させつつ、授業の幅を大きく広げてくれる心強いパートナーになり得るという期待感が感じられました。また、AIの登場によって、教師は「教える人」から「共に学び探究する人」へと役割がシフトしているという指摘も印象に残りました。

登壇者の先生方からは、「まずは”遊び”の感覚で始めてみること」「日常的に使って慣れること」「できることから少しずつ授業に取り入れていくこと」といった具体的なアドバイスも。未体験の先生は、とにかくぜひチャットGPTなどのAIサービスに触れてみる時間を作ってみてはいかがでしょうか。きっと、生成AIを活用した新しい授業のアイデアが見つかるはずです。


【登壇者プロフィール】

中澤幸彦(なかざわ・ゆきひこ)

八王子市立上柚木中学校教諭。保健体育科として14年勤務し、生活指導主任や研究主任を経て2023年から特別支援巡回指導教員。初任時からICTを駆使、コロナ禍からはGoogleサービス等をフル活用した、中学校では珍しい年間を通した自由進度型で保健体育の学びを構築。2023年にはAIとの教育対談本『AI問答はじめてみれば文明開化の音がする~教育のあり方をAIとともに自問自答してみました』を出版。生成AIパスポート取得者。参考記事:AIを活用した「なりたい自分になる」個別支援プログラム – 特別支援巡回指導教員・中澤幸彦先生の実践|みんなの教育技術

花岡隼佑(はなおか・しゅんすけ)

埼玉県公立小学校教諭。1989年、長野県生まれ。埼玉大学大学院教育学研究科を卒業。現在は蕨市立北小学校に勤務。校内では、研究担当として新たな校内研究の形を推進するとともに、学力向上推進担当としてICTや生成AIの普及に努める。教育コミュニティ「EDUBASE」のクルー。

モデレーター:庄子寛之(しょうじ・ひろゆき)

元・東京都公立小学校指導教諭、現ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター研究員。著書に『子どもを伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)『「子どもに任せる」がうまくいかないあなたへ』(明治図書出版)『学級担任のための残業ゼロの仕事のルール』(明治図書出版)『教師のためのライフハック大全』(明治図書出版)『子どもがつながる!オンライン学級遊び』(学陽書房)など。

(文・構成/編集部 ※一部で生成AIを利用しました)

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