小4理科「電流のはたらき」指導アイデア
執筆/福岡県北九州市立木屋瀬小学校教諭・松隈大輔
福岡県北九州市立木屋瀬小学校教諭・江口活
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県北九州市立高見小学校校長・南里幸一
福岡県北九州市立中島小学校教頭・尾上大悟
目次
単元目標
電流の大きさや向きと、乾電池につないだ物の様子に着目して、それらを関係付けて電流のはたらきを調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身につけるとともに、主に既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想する力や、主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①乾電池の向きを変えると、電流の向きが変わり、モーターの回り方が変わることを理解している。
②乾電池の数や、つなぎ方を変えると、電流の大きさや向きが変わり、豆電球の明るさやモーターの回 り方が変わることを理解している。
③電流のはたらきについて、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。
思考・判断・表現
①電流のはたらきについて、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。
②電流のはたらきについて、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。
③電流のはたらきについて、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①電流のはたらきについての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②電流のはたらきについて、学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 8時間
第1次 電流の向きとモーターの回り方について調べる。
1 乾電池の向きによって、モーターの回る向きがちがうという気付きから、学習問題をつくる。
思考・判断・表現①
電流のはたらきについて、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能①
乾電池の向きを変えると、電流の向きが変わり、モーターの回り方が変わることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
電流のはたらきについて、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
第2次 電流の大きさとモーターの回り方や豆電球の明るさについて調べる。
3 モーターを速く回したり、豆電球を明るくしたりする方法について考える。
知識・技能③
電流のはたらきについて、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動観察・記録分析〉
4 乾電池の数や、つなぎ方を変えて、モーターの回り方や豆電球の明るさについて調べる。
5~7 検流計を使って、直列つなぎと並列つなぎの電流の大きさについて調べる。
思考・判断・表現③
電流のはたらきについて、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
主体的に学習に取り組む態度①
電流のはたらきについての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈発言分析・行動観察〉
8 学習のまとめと振り返りを行う。
知識・技能②
乾電池の数や、つなぎ方を変えると、電流の大きさや向きが変わり、豆電球の明るさやモーターの回り方が変わることを理解している。〈発言分析・記録分析〉
主体的に学習に取り組む態度②
電流のはたらきについて、学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈発言分析・記録分析〉
授業の詳細
第1次 電流の向きとモーターの回り方について調べる。
1 乾電池の向きによってモーターの回る向きが違うという気付きから、問題をつくる。
乾電池のつなぎ方とモーターの回り方について、共通点や差異点を基に、問題を見いだし、表現する。
①自然事象と出合う
3年生のときの経験を生かして、モーターに乾電池をつないでプロペラを回してみよう。
②気付きを共有する
乾電池をつなげると、モーターが回って私の方に向かって風が起こるね。
同じように乾電池をつないでいるのに、私の方に風がこないよ。
乾電池の向きを変えても、モーターは回ったよ。(共通点)
乾電池の向きを変えると、モーターが回る向きも変わったよ。(差異点)
自然事象に対する気付きを共有する際、解決する問題をつくるために、気付きを整理し、焦点化していくことが大切です。ここでは、「乾電池の向きを変えること」と「モーターの回る方向が変わること」が「電流の向き」と関係していることについて着目して、問題づくりに生かせるようにしましょう。3年生で学習したことを想起できるようにすることも大切です。
③問題を見いだす
話合い活動で出てきた子どもの気付きや意見をまとめる形で学級の問題を設定します。そのとき、今後の学習で根拠のある予想や仮説を発想する力を育成する足がかりにするため、根拠を明確にして、板書に整理するとよいでしょう。
●根拠→乾電池の向きを変えると、モーターの回る向きが変わった。(事実)
●解決したいこと→電流の向きは変わるのだろうか。(考え)
(乾電池を使って)モーターを回す活動から、どんなことを調べてみたいですか? ノートに書きましょう。
乾電池の向きが変わることとモーターの回る向きが変わることには、どんな関係があるか調べたいな。電気の流れが関係しているのかな?
乾電池の向きが変わると、電流の流れる向きが変わるのか調べてみたいです。本当は、回路の中の電気が見えたらいいなと思います。
なるほど。回路の中の電流の向きと大きさを調べる道具として、検流計があります。
検流計については、子どもが「回路の中の電気の流れ(電流)を見ることができないか?」という思いをもつことができるようにしてから、紹介するとよいでしょう。ポイントは、子どもの疑問や思いに沿うということです。また、話合い活動のなかで、電気の向き→電気の流れの向き→電流の向きと、教師が「電気の流れ」を「電流」という科学的な言葉に置き換えて整理することもポイントです。
では、本時のまとめとして、学級での問題をつくりましょう。みんなが調べたいことは、電池の向きを変えると電流の向きが変わるのを調べたい、ということでいいですね。どのような問題になりますか?
乾電池の向きを変えると、モーターの回る向きが変わることから、電流の向きも変わるのだろうか。
2 乾電池の向きとモーターの回る向きを調べる。
電流のはたらきについて、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現する。
④予想する
根拠のある予想や仮説を発想する力を育成するために、前時の学習を想起できるよう、学習の足跡を掲示しておくことは効果的です。また、日ごろの生活で乾電池をおもちゃや機械に入れたことがある経験がないかを問うことで、生活経験を基にした予想や仮説を立てることにもつながります。
前の時間、乾電池の向きを変えると、モーターが回る向きは変わったから、電流の向きも変わっていると思います。
おもちゃに入れる乾電池の向きは決まっているから、乾電池の向きを変えると電流の向きも変わると思うよ。
⑤解決方法を考える
(1)乾電池、スイッチ、検流計、モーターをつないだときの電流の向きを調べる。
(2)(1)のときとは乾電池の向きを反対にして回路をつくり、電流の向きを調べる。
⑥観察・実験をする
乾電池の向きを変えたときに、電流の向きが変わるのかを調べる。
⑦結果の処理
①乾電池の向きを変えたときのそれぞれの検流計の針の向き、②乾電池の向きを変えたときのそれぞれの電流の大きさを整理する。
実験結果を共有する際、タブレット端末を使ってMicrosoft Excelや、Googleスプレッドシートなどで作成した共有データに打ち込む方法があります。手元の端末とテレビ画面とで瞬時に結果が共有でき、全部の実験結果から全体の傾向を捉えることができます。
⑧結果を基に考察する
乾電池の向きさえ共有できていれば、この実験で結果がずれることはありません。結果がずれた際は、実験の内容について見直す機会ととらえましょう。実験の内容をみんなで再検証し、原因を話し合うことは、普段から実験の内容を振り返る習慣をつける上で大切なことです。
予想どおり、乾電池の向きを変えると電流の向きが変わったよ。
電流の向きが変わるから、モーターの回る向きも変わるんだね。
電流の大きさを測定する実験をはじめとして、回路を使う実験では、結果にばらつきが生じがちです。つくった回路をタブレット端末で撮影して記録として残しておくと、結果のちがいを検証する際に役に立つことがあります。
⑨結論を出す
乾電池の向きを変えると、電流の向きが変わる。
⑩振り返る
電池の向きを変えると、電流の向きが変わるから、モーターの回る向きが変わるということに納得しました。
予想したときに理由があれば納得できました。予想をするときには、その理由が大事だということがわかったよ。
電池の数を増やすとどうなるのか知りたいです。きっとモーターは速く回るんだろうなぁ。
安全指導
ショート回路は熱をもち、やけどをする危険があるので、ショート回路がどのようなものか、ショート回路にならないように安全指導を徹底する。
イラスト/難波孝