「全員活躍型のお楽しみ会で絆を深めよう」対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり #3
コロナ禍以降、コミュニケーションに苦労する子供や人間関係の希薄な学級が増えていると言います。子供たちが深い絆で結ばれた学級をつくるには、子供同士の関わりをふんだんに取り入れた対話型授業と、子供たちが主体的に取り組む自治的な活動が不可欠です。第3回は、年間を通してお楽しみ会を計画することを提案します。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
年間を通してお楽しみ会を計画しよう
新型コロナウイルス感染症の流行が拡大していた頃、私は市の教育委員会に異動になりました。職員のみなさんはとても優秀で、非常に仕事がしやすい職場でした。しかし、何かもの足りない、少し壁があるなあと感じました。
その大きな原因は、仕事以外でのふれ合いが全くないということでした。やはり、仕事以外での楽しいふれ合いがあると、人間関係がグッとよくなるものです。
このことは学級にも当てはまります。何かを一緒にやると、距離が近づきますよね。特に、そこに「楽しい」という感情が付随すると、その人との関係まで楽しく感じることもあるものです。
そこで、いわゆる「お楽しみ会」を、年間通して計画していくようにしましょう。お楽しみ会というのは、完璧にできる必要はありません。正直なところ、ぐたぐたであっても、誰にも迷惑がかかりません。こういう会こそ、大いに子供に任せ、自治的に活動できるようにしましょう。スムーズにできずトラブルもあるでしょうが、そこをうまく乗り越えることで、絆が深まるでしょう。
回数の目安としては3~4回、1学期に1回程度というイメージです。それにイレギュラーでやるものをプラスします。
この記事では、子供たち自身で企画、運営した経験が少ない学級という前提で話を進めていきます。
まずは教師主導でお楽しみ会をしよう
子供に任せるといっても、経験がなければ何をどうしていいか分からないでしょう。そこでまずは、お楽しみ会をやる上で心がけてほしいことを伝えます。
・みんなが楽しめる会にする
・できるだけ自分たちだけの力でやりとげる
・全員が関わる
この3つを守ることが、お楽しみ会を通して絆を深めることにつながります。
例えば、ドッジボール大会をやろうとなったとします。
では、ドッジボールは、本当にみんなが楽しめるのか。
得意な人だけが楽しいのではないか。
それなら、別の遊びにする。もしくは、ルールを工夫する。
そんなふうに話合いができるようにします。この話合いをすること自体が、様々な人のことを考えていくという土台づくりになります。
全員が関わるというのは、一部の係の子たちに任せてしまわないということです。
例えば、どんなお楽しみ会をやりたいのかを班で話し合い、それぞれの班から出た意見から1つを選んで実施していくというやり方があります。これならば、企画の段階から全員が参加することになります。
また、1班が企画、2班が準備、3班が運営など、役割を割り振っていくというやり方もあります。
いずれにせよ、全員が関わるからこそ、そのイベントに前向きに取り組むようになりますし、ものごとの進め方の勉強にもなるのです。
このような前提を伝えたら、みんなで実施計画を考えます。
計画に必要なのは、「目的」「日時」「場所」「プログラム」「遊びのルール・必要なもの」です。教師が司会をしながら、どんどん決めていきましょう。
以下、計画例です。
目的……いろいろな人と仲よくなる
日時……5月15日(水)2校時
場所……教室
プログラム
〇はじめの言葉
〇実行委員の話
・今日の目的など
〇レクその1(連想ゲーム)
〇レクその2(なんでもバスケット)
〇先生の話
〇おわりの言葉
遊びのルール・必要なもの
〇連想ゲーム
[遊びのルール]
・「○○と言えば」というお題から連想することを紙に書く。
・班対抗で点数を競う。同じ考えがいる人の数が得点になる。
[必要なもの]
・連想したことを書く紙
※なんでもバスケットは省略。
一通りできたら、だれがどの役目をやるのか決めます。例えば、司会、道具の準備、ゲームの審判などです。
こうして、教師主導でお楽しみ会を1回やっておけば、次からは話合いの段階から子供たちに任せてよいでしょう。もちろん、スムーズにはいかないでしょうが、スムーズにいくのが大切なのではなく、みんなで協力したり、時にはもめたりするような経験が大切なのです。
イレギュラーの「ミニお楽しみ会」もしよう
ちょっとしたチャレンジをして、それが達成できたときにミニお楽しみ会をする。そういう取組も、子供たち同士の絆を深めることにつながります。
ある程度、時間のかかるお楽しみ会は、そんなに多くはできません。しかし、昼休みなどに短時間でできるミニお楽しみ会ならば、気楽に取り組めます。
例えば、みんなで給食を完食しようと決めます。そして、完食が2週間続いたら、短時間のミニお楽しみ会を行うことを決めます。
ここで大切なのは、そのためにみんなで協力すること、だれかを責めないこと、無理しないことです。例えば、給食をあまり食べられない子は量を減らす。食の細い子を責めない。また、無理に食べないといったことを徹底します。このルールが守られない時にはその時点で、今回のチャレンジはなしにします。
全員が名札を2週間付けてくるというチャレンジをする場合、忘れた子が責められないでしょうか。「いいよ、またやり直そうよ!」と明るく言えるクラスならばよいでしょうが、そうではない場合は、チャレンジする内容をよく吟味する必要があります。
また、運動会やなわとび大会など、学校行事と関連させることも有効です。運動会で優勝した場合は、「祝勝会」。運動会で残念な結果だった場合は、「健闘をたたえる会」など、どんな結果であれ、お楽しみ会にしてしまいましょう。
多様なお楽しみ会をして、全員が活躍できる場を設けよう
お楽しみ会で取り組むものは、そんなに奇抜なレクではなく、定番のものでよいでしょう。「みんなの教育技術」で「レク」を検索すると、たくさんの記事が出てきます。その中で自分の学級に合いそうなものを子供たちに紹介してもよいですし、子供たちにネットで検索させてもよいでしょう。
私がやってきたのは次のようなものです。
・チャレラン大会(靴とばし・何人新聞紙に乗れるか挑戦 など)
・室内ゲーム大会(なんでもバスケット・椅子取り など)
・カラオケ大会
・クリスマス会
・肝試し大会
・ケーキ作りコンテスト
・リレーフルマラソン大会
可能な範囲で多様な会をやるようにしましょう。スポーツ系では目立たない子が、カラオケがとてもうまく、マイクを離さないなど、意外な一面を発見することも多いものです。絆づくりには、個々のパーソナリティーを理解し、認め合うことがかかせませんので、そういう面からもお楽しみ会を活用していきましょう。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/高橋正輝、イラストAC
【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
保護者を味方にする学級経営術(全13回)
【瀧澤真先生ご著書】
『まわりの先生から「むむっ!授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。』(学陽書房)
『まわりの先生から「おっ!クラスまとまったね」と言われる本。』(学陽書房)