小1特別活動「元気にあいさつ」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小1特別活動の指導アイデアです。5月は、学級活動(2)「元気にあいさつ」の実践例を紹介します。
執筆/鳥取県公立小学校教諭・奥田裕美
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
鳥取県公立小学校校長・太田敦弘
目次
年間執筆計画
04月 学級活動(1) 学級会を始めよう!(学級会オリエンテーション)
05月 学級活動(2)ア 元気にあいさつ
06月 学級活動(2)ウ 上手な歯の磨き方~6歳臼歯は歯の王子様
07月 学級活動(3)ウ 楽しさ発見 学校図書館
09月 学級活動(1) わくわくハッピー係活動をしよう
10月 学級活動(2)イ みんな仲よく(ふわふわ言葉とちくちく言葉)
11月 学級活動(1) 1年〇組ジャンボかるたを作ろう
12月 学級活動(3)イ きれいな教室
01月 学級活動(2)エ 楽しい給⾷
02月 学級活動(3)ア もうすぐ2年生
03月 学級活動(1) 友達集会をしよう
本時の内容
本題材である「元気にあいさつ」は、子供の基本的な生活習慣の形成に関わる内容です。子供一人一人が自分のあいさつを振り返り、よりよいあいさつをするための行動目標を決め、実践していくといった学級活動(2)の指導内容となります。
「元気にあいさつ」は、その中のア「基本的な生活習慣の形成」に関わる題材であり、日常生活での基本的な生活習慣における自己の課題に気付き、改善に向けて自ら目標を立てて努力し、主体的に取り組むといった活動です。
ここでは、その指導法について紹介していきます。この記事では、国立教育政策研究所が作成した小学校「特別活動指導資料」を参考に、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の流れで行っていきます。
〇[つかむ]…実態や現状の把握
日頃から様々な場面であいさつをしていくことに気付き、先生へのインタビューや高学年のあいさつ運動の様子から、自分たちはできていると思っていてもできていないところがあることに気付き、課題をつかみます。
〇[さぐる]…原因の追求・改善への意欲付け
あいさつをする意義は何なのか、どうしてあいさつできないかをさぐります。そして、あいさつのよさを実感し、改善への意欲につながるようにします。
〇[見つける]…解決方法などの話合い
よいあいさつのイメージを共有し、どのようなことに気を付け、あいさつをすると元気なあいさつになるのかみんなで話し合い、解決策を見つけます。導き出された解決方法をロールプレイングすることで、あいさつをされた側の気持ちにも気付くようにします。
〇[決める]…個人目標の意思決定
[見つける]で導き出された解決策の中から、元気なあいさつをするために、何に気を付けてあいさつに取り組むか、個人目標を決めます。がんばりカードを用意し、1週間の自分のあいさつを振り返るようにします。
事前の指導
〇1年生のあいさつの状況について、先生や地域の人などにインタビューする
先生や交通指導などでお世話になっている地域の人たちに、1年生のあいさつの状況についてインタビューをして、動画に撮ります。よいところともう少しのところを分けて話してもらうようにすると、授業で使いやすいでしょう。
〇委員会活動であいさつ運動をしている6年生に、あいさつをする時に心がけていることをインタビューする
6年生にあいさつをすることのよさや、あいさつをするために心がけていることなどをインタビューして、動画に撮ります。
本時のねらい
入学して間もない頃は、周りの友達とうまく話ができずに友達の輪の中に入れなかったり、社会性が身に付いておらず、自分勝手な行動をしたりする子供が多く見られます。そこで、友達や教師との良好な人間関係を築くためには、元気にあいさつをすることも大切であることに気付けるようにします。
本時では、まず、朝のあいさつに注目させて、「元気なあいさつ」をする意欲を高めていくことをねらいとします。
本時の指導
〇[つかむ]…自分たちのあいさつの課題をつかむ
日頃から様々な場面であいさつをしていくことに気付き、先生のインタビューや高学年のあいさつ運動の様子から、自分たちはできていると思っていてもできていないところがあることに気付き、課題をつかみます。
みんなは、朝から寝るまでにたくさんのあいさつをしていますね。学校に来てからする「おはようございます」の6年生のあいさつを見てみましょう。
6年生は大きな声で、自分からしている。
6年生にあいさつしてもらうと、元気になるあいさつだと思った。
自分たちのあいさつと6年生のあいさつを比べて、パワーアップしたいところはどんなところかな。
恥ずかしがらずに、もっと元気よくあいさつをしたらいい。
たくさんの人とあいさつができるようにレベルアップしたいな。
〇[さぐる]…あいさつをする意義は何か、元気にあいさつできない理由をさぐる
ここでは、日常的に行っているあいさつにどんな意義があるのか、あいさつをすることで良好な人間関係を築くことにもつながることに気付けるようにします。
元気なあいさつができていると思っていても、できていない時もあるのはなぜか原因をさぐります。一人一人理由は違うことに気付き、自分を振り返ることが大事です。
〇[見つける]…元気なあいさつの仕方を話し合う
よいあいさつのイメージを共有し、どうしたら元気にあいさつできるのかや、どのようなことに気を付け、あいさつをすると元気なあいさつになるのかみんなで話し合い、解決策を見つけます。
ここで、導き出された解決方法でロールプレイングを行うことで、あいさつをされた側の気持ちについても考え、どのようなあいさつをするといいのかを考えます。
「あいさつをした時、小さい声で返す」「あいさつをした時、黙って通り過ぎる」「あいさつをした時、元気に返す」などのように、いくつかのシナリオを準備しておきます。まず教師がやって見せ、その後、二人組になって、ロールプレイングをします。
あいさつをした人、あいさつをされた人はどんな気持ちになるのかな? みんながあいさつしてくれた後、先生があいさつを返します。先生のあいさつを聞いてどんな気持ちになったかな。
(①小さい声で返す、②目を見て、あいさつをしない、③元気な声であいさつを返す)
①や②は、何だか寂しい気持ちになる。
③のあいさつは、とてもうれしい。友達になった気分。
③みたいなあいさつをしてもらうと、安心する。
今度は、みんなもやってみましょう。ペアで、あいさつをする人、あいさつを返す人に分かれてやってみましょう。
「元気な声であいさつする⇔小さな声で返す」だけでなく、「目を見てあいさつする⇔そっぽを向いて返す」や「笑顔であいさつする⇔無表情であいさつする」などのロールプレイングも行うようにすると、あいさつは声だけでなく、「目と心でする」ということが子供たちに伝わりやすくなるでしょう。活動時間と子供たちの実態によって、ロールプレイングの内容や回数などは調整しましょう。
最初に、必ずあいさつを返す役を教師がやって見せること、また、子供たちがどちらの役割も体験できるようにすることがポイントです。
ロールプレイングをした後の感想から、気持ちのよいあいさつをすることの必要性を引き出します。
ペアでやってみてどうでしたか?
目を見てあいさつしてくれてうれしかったよ。うれしくて笑顔になったよ。
○○くんが大きな声であいさつしてくれて、元気な気持ちになったよ。○○くんは、あいさつチャンピオンだよ。
あいさつすると仲よくなれるよ。ほかの人ともあいさつをしたいな。
あいさつチャンピオンにふさわしいあいさつが見つかりましたね。
〇[決める]…元気なあいさつをするためにがんばることを決める
「見つける」で導き出された解決策の中から、元気なあいさつをするために、何に気を付けてあいさつに取り組むか、個人目標を決めます。がんばりカードを用意し、1週間の自分のあいさつを振り返るようにします。
あいさつチャンピオンとして、どんなことに気を付けてあいさつをしますか。自分のがんばりたいことを決めましょう。
がんばれたら、このカードに◎、ちょっとだけがんばれたら○、もう少しだったら△を書きます。1週間続けて、あいさつチャンピオンになれたかどうかを振り返りましょう。
◆板書例
事後の指導
子供たちが目標の達成に向けて自ら努力する過程を大切にし、できたことやできなかったことを振り返り、次の取組へ意欲を継続させることが重要です。朝の会や帰りの会などであいさつについて振り返りを行いましょう。「がんばってよかった」と思えるような振り返りの時間にすることが大切です。
子供たちががんばっている様子を撮影しておいて紹介したり、あいさつでよくなったところなどを他の先生がコメントとして返したり、保護者からコメントをもらったりすることで、実践意欲の継続を図ります。
【資料1】「あいさつチャンピオンへのみち ふりかえりシート」※下記ボタンをクリックするとダウンロードできます。
イラスト/高橋正輝