マンネリ化させない!「幸せのサイクル」を意識した係活動

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係活動に活発に取り組むことで、子どもたちは自ら考えて活動に取り組む力を身につけていきます。また、学級内の関係もよりよくなっていくことも期待できます。特別活動の取組として期待が大きい係活動ですが、任せっきりにしておいては、意欲が低下したり、活動が尻すぼみになったりすることもよく見られます。いくつかの配慮や工夫をすることで、係活動を意欲的に持続させることができます。そのキーワードは「幸せのサイクル」です。

執筆/埼玉県公立小学校教諭・瀧口直樹

係活動イラスト

「幸せのサイクル」とは?

クラスで取り組む係活動。はじめは楽しく活動していても、日が経つに連れ、マンネリ化してしまうとよく耳にします。

マンネリ化する原因として考えられるのが、他者貢献の欠如です。係活動では、自分の得意なことを自分の中だけで行うのではなく、他者貢献という意識をもたせて取り組むことがとても大切です。これを私は「幸せのサイクル」と呼んでいます。

図 幸せのサイクル

幸せのサイクルでは、まず初めに自分の好きなことや得意なことを見付けることから始めます。そのためには、様々な係活動にチャレンジしていく必要があります。

係活動の試用期間を設け、子供たちに様々な係活動にチャレンジしてもらいます。そして、その中で自分が楽しいと感じることや得意なことを見付けて、自分の所属する係を正式に決めます。

はじめの係活動は自分の中でとことん楽しむことが重要です。自分の中で楽しめるものが、いずれ自分の強みに変化していきます。

このフェーズが終わったら、次は友達とのつながりです。同じ<好き>をもつ者同士が集まり、<好き>を共有していきます。<好き>を共有し、コミュニケーションを図っていくことで、友達とのつながりを強めることができます。さらに、一緒に活動していく中で、お互いにインスピレーションを受けたり、新しいアイデアを得たりすることができ、<好き>をもっと高めることにもつながります。自分の興味や価値観を明確にし、自己理解を深めることもできます。

最終フェーズでは、自分の<好き>や<得意>をクラス全体に還元し、活動を全体に広げていきます。例えば、お絵描きが好きな子であれば、自分が描いた絵を誕生日の人にプレゼントしたり、お絵描き教室を開き、自分の技術を伝えたりする活動に取り組みます。そうした活動を通して、自分の<好き>を広げ、友達の喜ぶ姿やクラスの仲の深まりを感じることで、自己有用感や自己肯定感を育んでいきます。

この「他者貢献」を経験した係活動は、自分の<好き>が増幅した状態になり、係内での活動も活発になり、積極的にコミュニケーションを図るようになります。さらに、今までにないような新しいアイデアを互いに出し合いながら活発に活動し、クラスにとって必要なマンネリ化しない係活動に変化していきます。この他者貢献の経験が、クラス環境や人間関係に良い影響を与え、結果として再び自分自身の幸福感を高めることにもつながります。このようなサイクルを維持することで、クラス全体の幸福度が向上し、係活動が学級経営の軸となっていくのです。

幸せのサイクルを回すための手立て

係活動時間の確保
道具を揃える
活動スペースの確保
頑張りを見える化・価値付け

係活動時間について

幸せのサイクルを回すには、活動時間の確保が必須です。そのために、最初のうちは教師から意図的に活動できる時間を設定していく必要があります。私の今までの時間の確保のしかたは以下の通りです。

①朝の時間
②休み時間 
③学活の時間 
④給食の時間 
⑤帰りの会の時間

①朝の時間は、学校によって活用方法が異なりますが、学級の時間として使える場合には、はじめは積極的に活用していきましょう。特に係活動の試用期間は、この朝の時間を有効に使い、様々な係活動にチャレンジできるようにします。

②休み時間は、主に活動する時間です。休み時間に自分の<好き>を追求し、楽しめる友達とコミュニケーションをとりながら係活動を進めていきます。

④給食の時間は、係メンバー同士で集まって、企画の話をする時間にします。<好き>を共有し、クラスにワクワクを与えられないか、面白くなりそうなイベントはあるかなど、メンバーとの仲を深めながら2週間に1回程度開くようにするとよいと思います。

⑤帰りの会では、係の発表を行います。自分たちが企画したものをやるのもよし。企画を発表するのもよし。係活動を行っている子が表現できる場を設けます。ただし、最終下校時刻は決まっているので、係発表は5分とするなど時間を決めて行うか、曜日ごとに分けるか、いずれかの方法をとるとよいでしょう。教師が上手く時間を確保してあげることが、幸せのサイクルを回す第一歩です。このちょっとした時間を与えるだけで子供たちのやる気につながります。

必要な道具(物)を揃える

いつでも気軽に係活動に取り組むためには、物を揃えることが大事です。

私のクラスでは、係専用のカゴを用意し、そこに必要な道具を全て入れて貸し出しています。カゴの中には、ホワイトボード、Sサイズ木目調ホワイトボード(吹き出し用)、ホワイトボードマーカーペン、切った画用紙(係による)を入れてあります。このように自分たち専用の物が揃っていると、やる気にもつながり、いつでも自由に自分のやりたいタイミングで係活動に取り組むことができます。

活動スペースの確保

係活動をする上で欠かせないのが、活動スペースの確保です。私のクラスでは、お知らせをホワイトボードに書いて掲示します。そのため、お知らせなどを掲示する場所が必要になってきます。
また、イラスト係からは、描いたイラストを掲示したいなどの要望が出てくるので、掲示できるスペースなども必要になっていきます。ICTを活用してデータで残しておくこともできますが、子供たちの作品などは、できる限りクラスの子が見える場所に掲示し、自分たちだけのすてきな教室や空間にするといいと思います。こうすることによって、友達の得意なことを知ることにもつながり、結果的に<好き>を共有する幅も広がります。

頑張りを伝える・見える化させる

最終フェーズである他者貢献までいくためには、頑張りを伝える・見える化することが必須になってきます。
その手段として挙げることの一つ目は、学級通信に載せることです。「係活動を通して、このようにクラスが変化しています」「クラスの絆が深まっています」など、一つ一つの係活動に対して価値付けすることで、子供たちに係活動の意義を浸透させていきます。学級通信に載せることで、保護者にも頑張りが伝わります。また、子供たちは、学級通信に載ったことで、やる気の継続につながります。

二つ目はThank youカード作戦です。これは、係が活動する中ですてきだなと思った自分以外の係に対して、感謝の気持ちを伝えるカードです。これを係の人たちにプレゼントします。この活動を行えば、自分たちの活動でどんなことが周りの人たちの役に立っているかも分かり、自己有用感も育まれます。この活動は主に低学年から中学年くらいには絶大な効果を発揮します。もちろん高学年でも取り組めます。

Thank youカードを掲示板に貼った様子
Thank youカードを掲示板に貼った様子

このように見える化していくと、子供たちのモチベーションは確実に上がっていきます。

この活動を継続していくコツは、まずは先生が積極的にThank youカード活動に参加することです。先生自らが感謝の気持ちを伝えることで、子供たちは嬉しくなりますし、子供たちも先生に続いてどんどんカードを書いていくようになります。

三つ目は「ベストワード」を決めることです。「ベストワード」とは、Thank youカードの中から、もらって一番嬉しかった言葉を決めるものです。これを月に一度開催します。

ベストワード賞
ベストワードの記入カード

「どれもすてきな言葉だよ」という前置きをしつつ、それでもこの言葉をもらって一番嬉しかったというものを決めます。そうすることで、Thank youカードをたくさんもらうことだけを重視していた子にも、友達からもらったカードの内容を真剣に見る機会を与えることができます。さらに、Thank youカードを書く側も、どんな言葉を書けば、係の人たちに自分の思いが届くかを意識して書くようになります。そして、これからも継続して感謝の気持ちを伝えようという気持ちが生まれます。このようなサイクルを発生させることにより、係活動がマンネリ化せずに活性化されていきます。

<好き>を通して自分を知ってもらい、クラスの輪を広げ、自分の心を育てていく。他者貢献の意識は今の社会にとって必要なものです。係活動を通して、今のうちから自然と身に付けていけるのが、この「幸せのサイクル」です。ぜひクラスでチャレンジしてみてください。

瀧口直樹先生

瀧口直樹(たきぐちなおき)
埼玉県公立小学校教諭。藤井の会(主宰・藤井隆光)所属。学級経営研究会事務局長。共著に『学級経営テンプレート集』(小学館)。

イラスト/菅原清貴

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